ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

独立して10年、この間を振り返る

2017-08-03 10:46:02 | 生活

私が大手電機企業を早期退職して、独立してウィトラというコンサルティングを始めて10年とちょっとが経過した。今日はこの10年間を振り返ってみたいと思う。

早期定年退職して独立しようと考えた動機は、当時の流れだと60歳定年、多少伸ばしても年収を下げた状態で62歳まで、というのが予測されていて、60歳過ぎてから次の仕事を探すより、元気のある早い段階で次の生活パタンを固めたほうが良いと考えたからである。会社に退職を伝えた時には殆どの人が「どこか別の会社に移る」と思ったようだが、会社を変わる選択肢は全く考えなかった。会社を変わっても定年の話は同じで、それならば人脈のできている現在の会社が良いからである。私の目的は自分の好きな時期まで仕事ができる体制を作ることだった。

当時はLTE方式の導入初期で、端末ではAppleのスマートフォンが大きな話題となっていた時期だった。Android端末はまだ出ていなかった。私は無線技術の分野ではそれなりに有名だったので仕事はあるだろうと思っていた。退職時には当時の年収の半額までしか仕事は見えていなかったが、同等程度までは仕事は膨らんだ。実際、LTEは世界唯一の標準方式となり大きく拡大したし、Appleはみるみるうちに売り上げを拡大し、時価総額世界最大の企業になった。いろいろな企業とに付き合いが増え、企業文化にも色々あることを知り、面白かった。

転機になったのは東工大の特任教授の話が来て5年間その仕事を受けた時である。ウィトラの仕事との兼任は可能だったのでウィトラも継続したが、仕事量は大幅に削減し、大学の仕事を入れた。大学の仕事は国際標準化の強化だったのでその分野で授業を持ったり、識者を集めてパネルディスカッションを行ったりした。しかし、修士の学生に標準化のテーマで論文を指導することは難しく、無線技術関係でやることにした。期限が5年間と限られており、実験設備も持っていなかったので、「電波の使い方」を見直すことにして、より有効利用する方式を考えることにした。調べてみると、自分の関わっていた携帯電話以外の分野での電波に利用方法は効率が悪く、大きな改善の余地があることが明らかになり、修士学生の研究テーマには困らなかった。

2015年末に東工大の任期が終わってみると、世の中の無線通信の環境は大きく変わっている。LTEもほぼいきわたり、スマートフォンも飽和感があって、買い替えのモードに入っている。無線技術者は次のステップとして第5世代移動通信に大きな期待をかけており、私も技術内容はフォローしているが、魅力的なサービスは感じられず商業的な成功は難しいと感じている。無線は技術革新で進歩する時代から、有効利用の方法を考える時代に入っていると思っている。10年で無線技術や事業が成熟期に入るとは予測していなかった。

特任教授時代は安定した収入があり経済的には楽だった。しかし、大学の仕事がなくなって、私の収入は大きく減少した。しかし、私も年金をもらえる年齢になっているので、収入を補うためにいろいろ動いて仕事量を増やすよりも、技術革新の中心となってきている、IoT、ビッグデータ、クラウド、AIという大きな流れが実態としてどうなっており、どうなりそうかということを自分の考えで咀嚼することに現在の私の興味は向っている。この分野では過去の蓄積が少ないのでなかなか事業とするには難しいが、新しい技術を勉強することにより、自分なりの技術動向・事業動向はつかみつつあると感じており、他の人とは一味違う観点を示せる感じにはなっている。その意味ではストレスは無い。

結果として「自分の好きな時期まで仕事ができる」ということは実現できており、早期退職は成功だったと前向きにとらえている。