真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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陸軍中野学校 真珠湾奇襲の暗号解読事実の隠蔽

2008年10月27日 | 国際・政治
 「秘録陸軍中野学校」畠山清行[著]保阪正康[編](新潮文庫)の中で、畠山清行氏は「政治の最も安易な景気回復策は、軍備拡張と、それにつながる戦争だ。これは世界の歴史をたずねてみればわかることで、無能な政治家が、万策つきた時に必ず用いる手がそれなのである」と書いている。そして、ルーズベルトが日本に戦争を仕掛けさせるよう追い込み、真珠湾攻撃計画をしっかり把握していながら、
「奇襲攻撃」を装って反撃に出たというのである。日本を刺激するルーズベルトの対応は、1939年の日米通商条約の廃棄通告を皮切りに、1940年の航空燃料、屑鉄、工作機械の輸出禁止、1941年5月のフィリピンからの戦時物資輸出禁止、同年7月には日本資産凍結、対日貿易の停止と強化されていった。さらに、近衛首相の会見申込を受諾するかにみせておいて、土壇場に会談延期の通告をし、日本を追い込んだというのである。近衛首相は両国首脳会談で局面の打開をしようとしていたが、ルーズベルトは外務省暗号の盗読で日本の対応の裏の裏まで知り尽くして「奇襲攻撃」を装ったというわけである。「真珠湾に吹いた神風」と題された文章の一部を抜粋する。
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真珠湾に吹いた神風

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 解読された日本の外務省暗号が、どの程度に読まれていたかは、すでに幾多の新聞や雑誌にも発表されたから、多少蛇足のきらいはあるが、日本の九七式三型機(外務省の暗号機)をフリードマンが模造した暗号機械は、米海軍通信局通信保安課通信諜報班が操作していたのだ。ローレンス・サフォード中佐が課長で、アルビン・クレイマー少佐が班長である。解読には、陸軍側の通信諜報班も協力し、重複をさけるために奇数日の傍受電報は海軍、偶数日は陸軍が解読翻訳、14部のコピーがとられることになっていた。そしてその配布先は、
 ルーズベルト大統領
 ハル国務長官
 ノックス海軍長官
 スターク海軍作戦部長
 海軍通信局長ノイズ少将
 海軍作戦部作戦部長ターナー少将
 海軍諜報局T・S・ウイルキンソン大佐
 海軍諜報局極東課長アーサー・マコラム少佐
 スチムソン陸軍長官
 マーシャル参謀総長
 参謀本部作戦部長ジロー代将
 陸軍諜報局長マイルズ代将
 諜報局極東課長ブラットン陸軍大佐
 の13人で、配布責任者は海軍がクレイマー少佐。陸軍はブラットン大佐であった。そして、書類は鍵のかかった革製小型かばんに入れて持ちはこばれ、合い鍵は受領者、またはその指名する正式代理人だけが持っている。配布責任者は、相手が読み終るのを待っていて、鞄に入れてもち帰り、保存用の一通だけを残し、ほかの13通は即座に焼却するという、あくまでも日本の暗号を盗読していることを、関係者以外には知られないための、厳重な処置がとられていたのであった。


 この九七式三型模造機による、日本の暗号盗読諜報は別として、日本に真珠湾奇襲攻撃計画のあることが最初に米側へもれたのは1941年(昭和16年)の1月である。山本五十六大将が、真珠湾攻撃構想をたてたとき、彼はごく少数の限られた人物にしか腹案をもらしていないのに、どこから流れたものか在日ペルー公使リカルド・リベラ・シュリーベル博士の耳にはいったのだ。1月27日、シュリーベル博士は、友人の在日アメリカ大使館一等書記官エドワード・S・クロッカーに、このことを耳うちしたのである。クロッカー書記官の報告で、グルー駐日アメリカ大使は、ただちに米本国の国務省へ『ペルー国公使は、わが大使館員に対して、日米間に紛争が発生した場合、日本はその全装備をあげて真珠湾攻撃の意向である旨、日本人をふくむ多数の情報源から接受した由を告げてきた。ペルー公使は、このような噂は根拠がないと考えたが、しかし、わが大使館員に一応伝えるだけの重要性があるものと認めたものである』
 という電報をうった。そしてそのことを、自分個人の日記にも書きとめておいたのである。


・・・

 ……この吉川(山口多聞大佐の命令で諜者として真珠湾に潜入した吉川猛夫、当時29歳、秘匿名森村正)のさぐり出した諜報、わけても、真珠湾攻撃の5日前、12月3日に喜多総領事が東京宛に送った電報には、真珠湾のアメリカ艦隊の動静がはっきり報告されている。これは、6日朝にワシントンで解読されていて、もはや日本の攻撃目標が真珠湾であることも、米首脳部は知っていたが、真珠湾のキンメルにもショート中将にもなんの注意も送らなかったのである。ホノルルの日本総領事館に、外務書記生の仮面をかぶった諜者のいることも知っていたが、FBIにも通告しなかったのだ。それの検挙されることによって、米首脳部の待ち望んでいる日本の攻撃が『不法なる奇襲攻撃』になりそこなうのを恐れたからであった
 そして、たとえなんの警告をあたえなくとも、真珠湾は軍港だから、哨戒機もあれば重爆機もいる。砲台もあれば軍艦もいる。まあ、被害をうけても、たかだか軍艦の一隻か二隻が沈められることによって、80パーセントにおよぶ米国民の戦争反対を、いっきょに参戦へ切り替えることができたならば、これほど安い代償はない、と、ルーズベルトもハル長官も考えていたのである。

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