障害年金社労士 吉野千賀 ブログ

障害年金など社労士の仕事を通して感じたこと、知って為になること、面白いことをよしの社労士事務所の代表吉野千賀が綴ります!

糖尿病の認定基準改正2

2017-01-24 | 社労士の障害年金
こんにちは!
社会保険労務士の吉野千賀です。

東京でもこのところ、朝晩は冷えますね〜。

今朝の北海道上川地方の最低気温はマイナス30度(!)前後でした。

東京に長く住んでいると、昨日夜の気温(3度くらい)でも寒くて寒くて・・・信号待ちが辛く感じました。

みなさまも、風邪をひかないように、暖かくしてお過ごしください。

さて、平成28年6月に改正された「代謝疾患(主に糖尿病)の障害認定基準」

その改正ポイントと弊事務所の事例を

一般の方向けに2回に分けて書いている、今日は2回目です。

前回は・・・、昨年12月26日でした。

アッという間に、1ヶ月近くも空いてしまって、すみません。

【前回の思い出し】

糖尿病は、単独でも(合併症がなくても)認定基準に該当すれば、

障害年金を受給することができます。

糖尿病単独の場合の障害等級は、「3級」です。

これは、改正前も改正後も同じです。

他の病気と同じで、単に「糖尿病」という病名がついただけでは該当しません。

糖尿病が原因の合併症(糖尿病性腎症による透析、糖尿病性網膜症など)は、

それぞれ、腎疾患の障害、眼の障害等の認定基準により

等級認定されることも、以前と同じです。

糖尿病は、検査数値で等級に該当するかどうかが決まり、

「検査項目と検査数値」が改正になりました。

今回は、糖尿病による日常生活の支障と具体的な事例について、です。

【糖尿病による日常生活の支障とは?】

健康診断などで「血糖値が高いね〜」と医師に指摘されることはあっても

血糖値が高いことによる自覚症状は、ほとんどありません。

糖尿病の合併症がでてくるのは、血糖値が高いことを指摘されてから

相当期間、経過してからです。

それでは、自覚症状がないのに、

糖尿病単独で日常生活の支障なんて、あるのでしょうか?

障害年金の受給対象になりうる

糖尿病の日常生活の支障とはどういうものでしょうか?

【1型糖尿病の日常生活の支障】

第2回専門家会合において

厚生労働省の医療専門役が発言した内容が

とてもわかりやすかったので

議事録より抜粋します。

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私の知人で1型の糖尿病の患者さんがいらっしゃいます。

46歳の男性で会社員です。

10年来の1型の糖尿病に罹患しておりまして、本当にブリットルタイプです。

今年4月に本人が言うには、リアルタイムのCGMセンサー併用型のインスリンポンプを装着して、血糖コントロールをつけるために2週間某医に入院したということです。

入院中は本当に規則正しい生活なので、毎日の血糖値の変動とかは許容範囲にコントロールされて退院しました。

しかし、実際に復職した後、仕事上の規制とか制約、ストレス、人間関係などの生活環境の変化から

上手く予定した時間に食事がとれないとか、時間通りにインスリン注射を打てないこともあり、

本人が言うには週3回ほど不定期に、朝起こるか、昼起こるか、夕方起こるかわからないんですけれども、

低血糖発作が出現するとのことでした。

この方の場合は、ちょっと体が震えるような感じがするというので

血糖値を測ったら50mg/dLだったということです。

そして、それ以外に毎日のように血糖が300以上になる時間があるとのことです。

そのため、とても就労できないということで

再度、会社を休職せざるを得ないというような状態になったそうです。

HbA1c値は8%〜8.5%ですが、血糖値はこのように50から300以上を繰り返しています。

認定基準88ページでもうまくそのことが反映できるのであれば、

実際に具体的にHbA1cが幾つだとか、空腹時血糖値、随時血糖値が幾つということは要らないと思います。

そういうことで参考として、それを裏付けるような過去3ヶ月間のHbA1cと、

それから空腹時血糖値ないしは随時血糖値の記載が診断書にあれば、

無自覚低血糖の記述も信用できるのかなと思います。

したがって、あくまでもこれは参考としてHbA1cと、それから空腹時血糖値ないしは随時血糖値というのは

診断書には引き続き記入していただきたいと思います。

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なるほど〜。

1型糖尿病の日常生活の支障とは、

いつ起こるかわからない「低血糖発作」によるもの、なのですね。

その反面、数時間後には、血糖値が300を超えることもある。

このように、血糖コントロールが不良な状態では

日常生活というよりも、就労に支障が生じるために、

3級に認定する、というわけです。

専門家会合を厚生労働省で傍聴して、

この例はすごく参考になり、何度も読み返していました。

そんな時に、相談のメールが入りました。

まさに、1型糖尿病の方で、

一日のうちに血糖値が50〜300になっているという方でした。

「自分でも障害年金を受給することができるか?」

という問い合わせでした。

もちろん、「できますとも!」とお受けしました。

【劇症1型糖尿病の認定事例】

平成28年4月に弊事務所で受けた事例です。

障害厚生年金3級を5年遡及で受給できました。

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発症したのは平成13年1月。

風邪のような症状の後、多飲・多尿・吐気の症状が出現して、

初めて受診したその日に緊急入院しました。

急激にインスリンが枯渇した状態に陥っており

血糖値は815mg/dlまで上昇

糖尿病ケトアシドーシスを生じて危険な状態になっていました。

入院時から現在までインスリン治療は続けています。

糖尿病による入院は合計3回(平成13年から15年まで)。

発症時から現在に至るまで、同じ会社でフルタイム勤務です。

フルタイム勤務ながら、

1型糖尿病の特徴である一日に何度も低血糖と高血糖を繰り返す症状

(低血糖時には20mg/dl まで下がることがあり、同じ日の高血糖時には400mg/dlにまで上昇する状態)は続いています。

障害認定日の血清Cペプチド値は不明。

HbA1cは発症後から現在までずっと10%〜11%台です。←旧基準に該当。

障害認定日の診断書の傷病名は「糖尿病」

一般状態区分表は「ア」

16欄の日常生活活動能力および労働能力は「特に問題なし」

9欄の治療の内容・経過欄には「食事療法できず、間食・夜食やめられず」と一行のみの記載。

残念ながら、診断書としては、日常生活や就労の支障が反映されていませんでした。

受診初日に緊急入院を要する危険な状態だったことや、

1型糖尿病のためインスリン治療下でも、高血糖と低血糖を繰り返している症状や経過を診断書に加筆することは断られました。

そのため、カルテ開示を行い、同じ医師が過去に作成した「入院診断書」の所見・治療内容・症状の経過、

請求者が記録し病院へ提出していた「血糖値の記録表」等を

裁定請求時に提出してフォローしました。

数値的には(旧)認定基準に合致していたものの心配ではありました。

障害認定日に3級と裁定されて安堵しました。


10年前に転院した病院で現在の主治医が作成した「請求日」の診断書は、

傷病名は「1型糖尿病」

一般状態区分表は「イ」

16欄の日常生活活動能力および労働能力は

「高血糖がありぼーっとして集中できない、低血糖により生活が中断される」と記載。

また、現在通院中の病院で受けた数回の血清Cペプチド値はすべて0.2ng/mL以下

血清Cペプチド値は変動が少ないため、

3年後の更新時においても

改正後の障害認定基準に合致する可能性はあると考えている事例です。

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単純に数値上は(新・旧)認定基準に該当していても

なかなかスムーズには進んでいかない

そんなこともある障害年金の代理業務の一例でもあります。

社労士として、どんなフォローができるかを

事例ごとに考えながら

客観的な書類を揃えていく。

そういう価値を提供することが、社労士の仕事でもあります。

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【関連記事】障害年金請求サポート専門社労士吉野千賀ブログの「社労士の障害年金」記事一覧
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【お知らせ】

よしの社労士事務所では、障害年金に関するご相談は無料です。専門家としてアドバイス致します。
直接お電話(03-6380-8611)いただくか、メール(info@cyoshino-office.com)でご連絡ください。
なお、匿名でのご相談は受けておりません。

一般の方向けに「スッキリ解決!みんなの障害年金」を出版しました。
おかげさまで、刊行2か月ちょっとで1万部に到達しました。ありがとうございました。

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Have a nice day!

Chika Yoshino

障害年金請求サポートの「よしの社労士事務所」 吉野千賀
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