かつてそこは子供らのゲームセンターだった。
いや、もっと昔のその昔,そこはやはり図書館だった。
庫裡の2階,屋根裏部屋が図書室になっている。
広さは30畳くらいあるだろうか。
そこには主に住職の本が主流だが、そこに私のものが加わり、他にもここの住人のものも置かれ、蔵書は、どのくらいだろうか。
数える事すらなく、そこに上がると本の棚に囲まれる。
ここに新たに館長が配属された。
かつての、野良のにゃんにゃん、一時死にかけたのを医者にかかり、命拾いした。
その猫が、ここでの勢力争いから逃れ、ようやく落ち着き場所を見つけたのが、ここ図書館だった。
猫は本棚の奥の隠れた場所が気に入ったらしい。
昼に覗くとほとんどお昼ね、外に出た形跡がない。
そこで餌と水とトイレ一式をそこに用意した。それを毎日取り替えるのが住職の仕事になった。
猫は夜行性と聞く。昼は寝て、夜はこっそり本でも読んでいるのだろうか。
気に入って、図書館長を勤めている、らしい。
先日,住職の留守にごはんを持って行くとそこにかつての私の本を見つけた。
「へー、こんな本も持っていたんだっけ?」
本と共にかつての私の時間が戻って来た気がした。
世界文学全集,日本文学全集,分厚い国内外の美術全巻,その他にも山や気象に関するものなどなど。
手元に置かなくてもいいとしたものがどっさり残っていた。
それらを全て読んだのではない。でも、そこに係っていた事は事実。
しばらくそこから離れられなくなった。そこで懐かしい時間が流れた。