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やっぴBLOG

サンディ・スプリングスの衝撃

2008-02-19 | ■社会/政治
財政難に苦しむ地方自治体は、歳出の多くを占める人件費を抑えるために職員の数をどんどん減らしています。行政が行う事業そのものが減っていることも確かですが、実際、自治体の職員数が実際の業務量に見合ったものでなかったことも否定はできないでしょう。あの夕張市も、2004年の時点で、類似市の2倍以上の職員数(285人)を抱えており、一般財源経費に占める人件費の割合は50%を超えていたといいます。2006年度には、一挙に半分以上の職員が退職することになり、人口12,000人程度の市の行政職員数として、これでようやく「適正規模」になったと言えるのでしょうか。

ところが、米国には人口9万人なのに、市役所職員がたった3人というウソみたいな町があるそうで。

ジョージア州の州都アトランタの郊外にあるサンディ・スプリングス市。警察と消防を除くほとんどの行政事務は、あるコンサルタント会社に一括委託されていて、市の歳出は当初見積もりの約半分に抑えられ、固定資産税は人口同程度の隣市の半額で済んでいるのだとか。年間の委託額は3000万ドル(約34億5000万円)。経費節減で浮いたお金を使って警官を倍増させ、「安全」の面でも万全を期している。市民にもこの方法はおおむね歓迎されているそうです。

「民間活力」を生かせば、ここまでできるという究極の姿なのかもしれません。もっとも、米国はもともと「民間活力」で町がつくられてきた側面が強い国ですからね。こういう町が出てきてもおかしくはない。

サンディ・スプリングス市は、最初から、緊縮財政とか行政の縮小という「理想」を掲げてこういう形になったわけでもないようです。それまでアトランタ郊外の「一地区」でしかなかったのですが、2005年に行われた住民投票で急遽「市」になることが決まった。で、公務員を採用して市役所の組織をつくる時間がなかったために、民間の会社に業務を委託することにしたのだとか。

これまた冗談みたいな話ですが、もちろん、発案者にはちゃんとしたポリシーがあってのことです。煎じ詰めれば、「税金を最も効率的に使うため」にはこの形が一番ふさわしいということ。役所が様々な法律やら「前例」やらにとらわれつつ仕事をするより、民間会社に任せた方が、たいていの場合、対応が「早く」、より「安く」公的な仕事が可能となるということか。

こうなると、「行政」の役割っていったい何だろうと考えざるを得ませんが…。

もちろん、こういった方法ができるのは、自治体の規模にもよると思いますけどね。県とか大都市には、それなりの行政の役割もまたあるわけで、人口100万の都市において、じゃ30人の職員で済むかといえば、決してそうとは言えないでしょう。また、民間企業に委託をした場合、契約内容にもよるのでしょうが、情報開示とか「公平性」というのはちゃんと保証されるのか、ちょっと不安は残ります。行政の最大の原則は「平等・公平」ですから。そういうところをきちんと守るセクターが世の中に存在することも大事なことだと思います。

「サンディ・スプリングスの衝撃」は、日本にもいろいろな場で紹介されてきていますし、いずれは日本にも「サンディ・スプリングス市」が生まれるかもしれません。でも、「公共」とは「行政」のことである、という根強い「伝統」がある日本では、それはまだまだ先のことでしょうね。


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2 コメント

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んー? (ぽぽびー)
2012-04-10 21:07:05
"行政の最大の原則は「平等・公平」ですから"これは異論ありですね
行政の最大の目的は住民の幸福であり平等公平などではありません。
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Unknown (やっぴ)
2012-04-10 22:56:30
ぽぽびーさん
コメントありがとうございます。

「原則」と「目的」って違うと思いますが…。
「目的」は確かに住民の幸福ですが、そのための手段の「原則」が平等・公平でなければならないと私は考えます。
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