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谷川俊太郎の言の葉

2005-06-03 | ■本
高校時代、中原中也と立原道造と谷川俊太郎が好きでした。いつも持ち歩いていた角川文庫の詩集は3冊とも同じように色あせ、ページはボロボロになっています。今でも時折ひもとかせるのは、詩そのものを読むというよりは、あの頃の自分の感覚をなぞりたいという気持ちからなのかもしれません。

中也、道造の順に読んで、谷川俊太郎に初めて出会った時、前二人の「感傷」の世界にどっぷり浸っていた私は、どうにも落ち着かないものを感じたものでした。例えば、谷川の書く「かなしみ」は、中也の「悲しみ」とはちょっと違うような気がしたのです。「悲しみ」に「はまりこむ」のではなくて、「かなしみ」をガラスの瓶に入れてながめているような、そんなとらえ方の違いでしょうか。そして、一編、二編と読み進むうち、そんな不思議な感覚に麻薬のように冒されていったのでした。

谷川俊太郎氏は1931年生まれですから、もう70歳をゆうに越えています。しかし、彼の最近の活動はますます精力的になっていくようです。何年も前から、すでにその活動は「詩」の世界をとっくに越えて、朗読や演劇、音楽にまで広がっていますが、結局のところ、日本語という「言葉」をこよなく愛する心が彼の活動の根本にあります。時には日本語を真剣に論じ、熱く語り、そして時には遊び心を加えつつ、ともかく子どもたちに日本語の美しさや不思議さを伝えたい、残しておきたいという思いが伝わってきます。

彼の詩に、駅から自宅までの道順を書いた詩があります。大学時代、その道順を実際にたどったことがありました。確か阿佐ヶ谷の駅から、商店街を抜けた閑静な住宅街に、確かに「谷川」という表札を掲げた家がありました。ほんとに着いたぞ、と喝采したものでした(もちろん心の中で)。

私が一番気に入っていた詩は、「愛について」という詩集に収められている「初冬」という詩です。もちろん、今はあの頃とは別の読み方をしてしまいますが。

「で、外は雨」…

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