カクレマショウ

やっぴBLOG

想像する力─板橋和幸さんの歌と語りから感じたこと。

2006-02-19 | └社会教育
視覚障害のシンガーソングライター、板橋和幸さんの歌と語りを見てきました。むつ市で行われた人権学習講座第2回です。

板橋さんは、むつ市出身で、3歳の時に緑内障で目がほとんど見えないことがわかったのだそうです。中学生の頃は荒れたこともあったものの、高校でバンドを組んで音楽の楽しさに目覚め、それ以来、20年近くにわたって多くの歌を作ってきました。

今日はギターとハーモニカを携えて、「Dear my Friend」、「ネバー・ギブ・アップ」、「BLIND MAN」の3曲を披露してくれました。初めて聴く板橋さんの歌声でしたが、歌詞がはっきり聞き取ることができる本当にいい歌声で、じんわり心にしみ入るようでした。18歳の時に作ったという「BLIND MAN」は、視覚障害のあることがわかった時のご両親の悲しみと、障害に負けずに強く生きていこうという自分自身の決意を歌った曲です。本当は10分くらいの長い歌らしいのですが、ショートバージョンで聴かせてくれました。

曲の合間の語りでは、視覚障害者であることの苦労を冗談交じりに話してくれましたが、特に印象に残ったのは、「視覚障害があったことで音楽に出会えて、今も歌っていられる。そのことを幸せだと思いたい」という言葉でした。

ミニコンサートのあとは、板橋さん持参のユニバーサルデザインの品々、それから視覚障害者向けの点字本や電子手帳、点字作成器などの紹介をしていただきました。

休憩をはさんで後半は、板橋さん得意の盲人野球(グランドソフトボール)とマラソンの体験コーナー。グランドソフトボールは、視覚障害者だけでやるものと思い込んでいましたが、実は、健常者もチームに入っていなければならないのだそうです。ボール(ハンドボールを使用)が地面で弾む音、転がる音だけを頼りに打ったり投げたりする。今日は、音の出るビーチボールを使ってピッチャーとバッターを体験してみましたが、バッターを体験した人は、「やっているうちに音にだんだん慣れてくる」という感想を述べていました。打てればうれしい、ボールを取れれば気持ちがいい、そのへんは野球の楽しさとまったく同じでした。

マラソンは、二人一組になって、一人が目隠しをして、もう一人が伴走者を体験しました。走る前にまず、「歩く」体験。目隠しをして、他人の腕を頼りに歩いたり階段を上り下りするのはかなりこわい。体験が終わって目隠しを取ると心の底から安心感がわいてくる。でも視覚障害の方はそんなふうに「ほっとする」ことなんてないんだなと思いました。

講座の最後に、参加者の皆さんで今の気持ちを「短冊」に書いてみました。その中に、「違いはあるけれど変わらない」という言葉がありました。板橋さんを見ていると、本当にそう思います。障害のあるなしにかかわらず、お互いに少しだけ「相手の立場に立ってみる」ことで確実に世の中が変わっていくんじゃないかと思いました。

私自身は、前回の講座では、「想像することの大切さ」に気づきましたが、今回は、想像することにも実は限界があって、当事者のお話を聞くこと、それから「疑似体験」をしてみることで、「想像力」がよりいっそうパワーアップするんだなと感じました。暖かいスタッフと参加者のみなさん、そして板橋さんのおかげでたくさんのことを学ぶことができたひとときでした。

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