ワイワイ菜園~たんじゅん農法試行中

たんじゅん農法全国世話人のSさんと自宅が近い事からたくさんの事を教えていただき、それを咀嚼しながら畑作業に取組んでいます

本を読んで。自分は野菜をどうしたいのか

2017-11-10 06:00:00 | 晴耕雨読

20171109

余り安い食品を求めていると消費者にとって不利益な事になる可能性があるという話をしている本がある。見出し画像の「激安商品の落とし穴」(山本謙治著)に書かれたメッセージだ。

安いもの求める消費行動 ⇒ 販売価格を下げようとする店舗への圧力 ⇒ スーパーのバイヤーの販売力を笠に着た買い叩き ⇒ 生産者へのコスト削減圧力 ⇒ 生産者の生活が再生産できない、儲からない、後継ぎがいない ⇒ 生産者が居なくなる 本当の野菜が栽培できなくなる

とこういった話らしい。皆さんはどう思われるでしょうか。

著者・山本謙治氏は毎週末の早朝、NHKラジオで農畜産物や水産物を全国から掘り出して季節の野菜等を紹介しているので、よく放送は聞いていたし、ファンでもあります。

私は退職後、農業を志向した。肥料・農薬使用の慣行農業では上記のサイクルに巻き込まれ、結局農家の犠牲の上に野菜を出荷するような事になるのはある程度想定できた。しかしこの現状の原因を消費者の安い食品を求める心理事情に求めるのはちょっと筋が違うのではないかと思う。

確かに消費者には全く責任がないとは云えないかもしれないが、資本主義の競争原理が働く中で、矛盾が生産者のところに集まってしまっている状況もあるだろう。しかしそこには農協の問題もあり、市場が縮小する中で右肩上がりの目標を掲げ続ける商習慣、売上が未達なら値下げしてでも客を引張り合う姿があるし、値下げ分を納入業者に納価見直し(コストダウン)として飲ませる姿もあり、それをまた飲んでしまう業者もある。単純な生産者・販売業者・消費者の関係だけではないし、後継者が出ないのは農家だけではなく、利益が無くなる販売業者も同様の事が云えるのではないだろうか。

私は自分で育て、安心して食べれる野菜を栽培するために畑を始めた。量産できるようになれば、自分の栽培方法を理解してくれる方に分けても良いと思ってきた。しかし今はまだ獲らぬ狸状態。とりあえず自分で自立して納得できる生育と味わいの野菜を栽培できる技術や土壌を実現したいところです。

私は自分自身や身近で問題や矛盾があれば、周りや消費者が理解していないためだという近視眼的な原因探しはどうも賛成できない。もっと工夫をして行くべきで、うまく行かないのは工夫が足りないからだと思うのです。著者が取り上げる農家さんは、補助金などを頼りにせず、様々な工夫をしてきたからこそ今まで継続できたとも云えるのでしょうが。

本では、消費者が求める「新鮮でおいしく、安全で、しかも安い食べ物」には矛盾があり、新鮮・美味・安全にはコストがかかり、安くはならない という。当然です。だから高い野菜になる事を訴えていく、安い野菜は何か理由があることを消費者は薄々でも判っている と思う。しかし安くて買える野菜なら、多少形や鮮度に問題があってもそちらを買う消費者の心理にも強いものがある。だからこの野菜はこういう事情で高いのですという説明が何としても必要でしょう。それ抜きで横に並べていたのでは安い野菜にだけ手が伸びるのはこれも当然でしょう。更に安い野菜を求めるニーズが強ければ、遺伝子組み換えで強い農薬にも耐えうる野菜などは手間もかからないから安く市場に出てくることになる。もう店には遺伝子組み換え野菜が並んでいるかもしれない。

だから自分で栽培し、農薬はもちろん、化学肥料も使わない安心して食べられる、野菜本来の味わいを持つ野菜に魅力があるわけです。私はそのための畑作り・土づくりを、野菜を栽培しながら進めている最中です。望むような野菜ができるようになれば、畑も少しは広げて販売もしていきたいですが、農薬や化学肥料で栽培した野菜とは価格が違うのは当然だと思います。何も表現せずに並べていたら手を伸ばしてもらえない野菜だから、販売する際には徹底した説明と差別化が必要だと考えます。理解頂けないようなら自分や家族が食べる分だけの栽培にとどめます。残ることのない、必要な分だけの栽培です。

とはいっても畑ができてからの話ですが(笑)。

海外に農業指導に行った若者の話ですが、上手に野菜栽培ができるようになった現地の人に「面積を増やせば更に多くの野菜が収穫できるのになぜ畑を広げようとしないか」と問うと、「自分が食べる部分があればいい」と云い、原野を切り開くようなことはしなかった。という話を聞いたことがあります。良い話だと思います。自分だけ美味しい野菜をというつもりはありません。他人様に喜んでもらえれば嬉しいし、一人でも多く味わってもらいたい。できてしまった野菜を買い手を求めて売りさばくようなことはしたくないという意味です。

如何でしょうか?先日読んだ本の感想から、思わぬ方向へ話が脱線してしまいました。