サクラの花も見頃を過ぎ、花びらが舞い散る中現場に向かう。
道往く人たちの服装も、だんだん明るい春らしい色に変わってきた気がする。
今、山が樹が凄く綺麗だ。 新緑の葉が固まる前までの何とも言えない色。
俺が初めて安諸庭園へ訪ねていったのも、たしかこれくらいの時期だった。
そうか、もう九年も経つんだ。
きったねーオンボロな軽トラで現れた親方。
今にも止まりそうな音をたてながら、
軽トラの荷台は何がのっているのか、というより草が生えてた。。。今思えば、荷台の上に移動式の庭が出来ていたんだ。しかも無作為の(笑)
一体何がはじまるのか、頭の中は???という感じかな。
いまでもはっきりと覚えている。
自分の中の何かが音をたてて崩れていった事。
たしかその晩は興奮しすぎて眠れなかったな。出た答えが「打倒、安諸定男氏!」カレンダーの裏に書いて部屋に飾った気がする(笑)
あのときから変わったんだ。あの人に会ってから。
先日、庭仲間とともに安諸庭園へ勉強させてもらいに行きました。
親方は何にも変わらない。誰に対しても偉ぶる事も無い。自分の息子より年下の小僧達が来ても、庭を一軒一軒まわり、案内する。
「これ知ってる?』『これ、やった事ある?』「これ、いいでしょう?」
濡れ縁に座りながら話す親方。
多分、これだけゆっくり安諸庭園のお庭を拝見したのは入る前の、九年前のあの時以来だろう。。
変わらない感覚と感動。いや、あの時より感じる事は多いかな。。
お庭も当然良かったけど、なにより庭に対しての姿勢。
『本能で仕事しなさい。』
弟子入りした直後に言われた言葉。先日もみんなに言って頂きました。
本能です。ご飯を食べる事や寝る事と同じに。
「山口君、すぐだよ。すぐおじいさんになっちゃうんだから。だから、頑張んなさい。今、やんなさい。あっという間だよ」
「一所懸命やってれば、いつか必ずお客さんが頼んでくれるから。必ず見てるから。』
独立して4年目になりましたが、知らず知らずのうちに忘れてしまう、初心。
予算が無い。場所が無い。本当は。。。全部自分のいい訳なんですよね。
「一生懸命やってるか?」それだけなんだと思います。
技術的な事はもちろんですが、親方のところでもっともっと大事な事を学ばせて頂きました。
庭をつくるということは、生きる事なんだ。
道は、遥か遠い遠い向こうに続いていて、先はまだまだ見えません。山もあるし谷もある。
あそこなんかは落とし穴らしきものもあるし、あそこにいたっては通過するのにも大変そうな誘惑事がいっぱいある。
はは、しかし長いな。。。でもなんだか楽しそうだ。一歩ずつ、確実に歩いていこう。
確実に。
よし、頑張るぞ!!
そんな事を感じたとても充実した一日でした。仲間もすごく喜んでいたので、とてもよかったです。
いやあ、それにしても派手なシャツとずり落ちたズボンは相変わらずでした。
チャックは開いてなかったけど(笑)
延べ段の説明をする親方。
作庭中のお庭。以前アップした移築したお茶席。
見学中の風景。