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世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか 野口 悠紀雄

2010-07-12 00:16:02 | マクロ経済

まあ、参議院選挙ですな。
何を争っているのかよくわからず、テーマは結局、管さんの消費税だったんですかね。

消費税を上げて増えた税収をビンボー人に配って、消費を伸ばして経済成長させる。
ぶっちゃけ、支持者にばらまくために、増税します、って感じだったわけですな。

その後のフォローもわけわからず、アンマシ深く考えずに、準備もなしに増税をぶちあげたってことになって、そら、支持が広がるわけがない。ただ、そんなことがあっても、ボロ負けはしてないんで、それみたことかって感じじゃないかもですね。

さて、選挙もあって、たまには日本の将来を考えるって日でもあって、ちょっと前に出た本についてです。

世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか
野口 悠紀雄
ダイヤモンド社


2000年代初旬、日本の景気が良かったのは、実は構造改革が進んだからではなくて、金融緩和と円安のポリシーミックスで、輸出が伸びてGDPが膨らんでいただけだ。もともと日本は外需依存型の経済ではないが、今世紀序盤は、輸出依存型経済になっていた。世界不況で海外の需要が消し飛んで、また不況に陥ってしまった。

米国や英国が世界同時不況の起点になっているにも関わらず、日本の落ち込みが厳しいのは、外需依存型であることと、日本の産業構造が、製造業に偏っているため、英米は、すでに産業構造が、サービスや情報通信や、知識集約型産業に移行済みで、調整がすばやく行われる。 外需の落ち込みによる影響もすくない。

一方で、日本は製造業中心で、急激な需要収縮には耐えられず、過剰設備を抱えて調整に時間がかかる。外需の影響をもろに受ける。また、中国や韓国など、人件費の安さで勝てない競争相手を近隣に抱えて、人件費切り下げ競争をたたかって行かねばならない状況。

ってなわけで、日本は取り残されていて、

だから、早く、製造業中心の産業構造から、英米型に変えていかねば、という提言なんですね(たしか。だいぶ前に読んだもんで、不確かかも)。

日本はもともと内需経済で、外需依存型経済じゃ無かった、みたいな議論は、三橋貴明氏が著書で議論してから、一般的な認識になったんじゃないですかね。日本は輸出立国イメージをどっかで皆持ってるはずですが、実は経済の輸出依存はそんなに大きくなくて内需大国だ、というのが実態だ、とかいう議論なんですが、野口氏もそれを踏まえている(んでしょう。以前の著書でそれに触れたたのを読んだことがないんで)。

実は経済白書でも08年09年の激しい落ち込みについては議論されてます。英国やEU、英国よりも日本の落ち込みが大きい理由について説明されてます。外需の落ち込みが落ち込みの要因だったという説明に続いてなんですが、

白書第2節 貿易・為替レートと日本経済

★★★

●鉱工業生産の減少幅も日本で特に大きく、輸送機械が最大の寄与
 それでは、鉱工業生産の減少の程度と中身を、アメリカ、EUと比べるとどうか(第1-2-3図)。なお、その際、アメリカ、EUの鉱工業指数には電気・ガスが含まれることに注意が必要である。
 第一に、予想されるとおり、日本の減少幅が最も大きい。これは、日本が最も外需の減少幅が大きいことを反映したものと考えられる。アメリカとEUではGDPの減少幅がほぼ同じだが、アメリカはサービスのウエイトが高い内需中心の減少のため、EUよりさらに鉱工業生産の減少幅が小さい。
 第二に、日本では輸送機械(その多くは自動車)のマイナス寄与が最も大きく、一般機械と電子部品・デバイスがこれに次いでいる。アメリカは、一次金属、化学などの寄与が相対的に大きく、2009年に入ると自動車・同部品も寄与が高まっている。また、EUにおいても、自動車の寄与が相対的に大きい。このように、自動車の生産減少は世界的に深刻であるが、生産の落ち込みに占めるウエイトは、日本において突出して大きいものとなっている。
 日本において輸送機械のマイナス寄与が特に大きい背景には、鉱工業生産に占めるウエイトの高さがある(第1-2-4図)。すなわち、日本では輸送機械が生産全体の2割程度を占め、次いで一般機械、化学となっている9。アメリカでは鉱業、EUでは食料品・たばこがそれぞれ首位を占め、日本にない電気・ガスのシェアを割り引いても、輸送機械のウエイトはそれほど大きくないことが分かる。


●輸出に占める自動車やIT製品のウエイトが高い国ほど、輸出減少率が大きい
 最後に、以上のようなマクロ的な分析を補うために、輸出品目の構成の違いによる説明を考えてみよう。日本の輸出においては、工業製品のウエイトが高く、自動車、電子部品・デバイス、一般機械などが代表的な品目である(付図1-2)。一方、資源国や農業国が強みを持つ、原料品、食料品、鉱物性燃料等のウエイトは低い。
そこで、OECD加盟国30か国について、主な輸出品目の割合と輸出増減率(2008年10-12月期)の関係を見ると、輸出に占める自動車とIT製品のウエイトが高い国ほど輸出の減少率が大きく、原料品、食料品及び鉱物性燃料などのウエイトが高い国ほど輸出の減少率が小さいことが分かる(第1-2-7図)。したがって、日本の輸出の大幅な減少はこうしたウエイトの違いからも理解することができる。

★★★

って感じで、産業構造について指摘しているんですね。外需の落ち込みが大きく低迷した原因で、外需の落ち込みは製造業、特に輸送機械(その多くは自動車)のマイナス寄与が大きくて、経済全体にしめる割合も大きいんで(=外需依存の経済)、モロ影響を喰らったってことなわけですな。

白書は、だから産業構造の改革が必要だ、という論の進め方をしていないんですが、本書はこんなんじゃだめだ、と主張しています。

とまあ、そうだとして、ですな、じゃあ、どうすりゃいいのよ。

米国ではとっくに止めたポンコツ買換え法みたいな補助金を日本じゃまだやってて、新車需要を底支え。テレビも買うとキャッシュバックがある。そういう、市場をゆがめる、経営者を政策依存にしてしまう政策をやるな、とか、成長分野の規制緩和を進めて、産業構造の転換を政策的にサポートしろというようなことが書いてあります。

ここで、米国の遺伝子組み換え作物に対する徹底した保護を思い出すんですな。こないだの記事のように、最高裁までが、圧倒多数で支持。都合の悪いデータや研究は踏みつぶし、みたいに、結構強引に育成してきた産業ともいえるかもですね。

決して良い感じじゃないんですが、確固とした意志、戦略を見れる。

大企業に政府や司法が乗っ取られている、という批判は別として、戦略とか、政策がどーゆーもんか、ということがなんとなくわかるような気がするんですが・・・。


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