風邪をひいてしまいまして。ようやく体調も戻ってきました。今年はしつこいみたいで一週間たってもセキが止まらないんですけどね。外にもでかけられず、ここはじっくり読書でも。で、食品バイヤーのお話です。
バイヤーという職業と聞くとどうも勝負師チックなイメージなんですね。自分の相場観とマーケットの読みでこいつは売れる,と信じて買い付ける。五感を働かせ、経験と勘でほれ込んだ商品に賭けるわけで。
くいもの系のバイヤーだと,品揃えと配置によってデパ地下がよみがえったとかいう、雑誌の特集記事を読んだことがあります。銀座の松屋だったかな。バイヤーのお話ならば、どうしたって面白くて胸躍るストーリーになるはずですな。
てなわけで、本が好きプロジェクト第三弾は、
おいしいもの、届けます!
帯には元看護師OLが転職後バイヤーにとあって、なるほどと読み始めると、んんん? 何ページ目まできてもつっかえたり、意味が取れずに読み返したりすることがほとんどありません。人事異動や社内のエピソードのことも出てきますが、楽しい気分でさらっと読ませます。
込み入った話になると説明されている気分になってイヤになるもんですが(横着ですみません)、このプロのライターを思わせる書きっぷり,とても素人とは思えません、ていうかプロのライターなんですな。冒頭『はじめに』の一番最初第一行目に、
わたしは,食品の通信販売のバイヤー兼ライターをしている、
とちゃんと書いてある。簡潔な文章ですな。
この『はじめに』はたった3ページですが、実に簡潔、実に的確、冒頭を飾るにふさわしい文章になっていて、あなたの仕事を楽しく魅力的に3ページにまとめてください、と言われたらこう書こうよって感じです。
著者は『セコム』の食品通販事業のバイヤー兼カタログライターなのですが、カタログライターと聞いて、村上春樹の『文化的雪かき仕事』を思い出しました。『ダンスダンスダンス』で主人公ボクがやっぱりライターで、確か、くいものやか何かの取材の仕事のことを『文化的雪かき仕事』と呼んでましたっけ。誰がやっても内容はおなじようなもんだが,絶対に誰かがやらねばならず、自分がやらなくても誰かが自分の抜けた穴を埋めるような仕事というわけです。
著者はボクの諦念とは全く無縁でして、この仕事を天職だと言って日本全国を飛び回っておられます。これ,ライターだけでなくバイヤーも兼任しているところが大きいですな。自分でカタログ掲載する商品を探してきて、商品に対する紹介文も書くわけで『雪かき仕事』になりようがありません。化学調味料フリーという高いバーをクリアし自分で納得できるおいしいものを苦労して探してきて、売れなければ自分の苦労が水の泡になるわけで、必死で書くし、売上にも責任があるのです。こういうポジションに、しかも大企業で抜擢されるというのは、かなりのラッキーなわけですけどね(著者も書いてます)。
著者のキャラもありますな。もともとはライターとしての腕を買われて(前に居た部署でHPにエッセーを書いていたんだそうです)抜擢されたのであって、バイヤーとしての期待はそれほどでも無かったんだそうで。彼女の体育会系キャラで仕事を切り開いていったんでしょう。本書では実在の登場人物を扱っているので限界があるせよ、意識して『キャラ立て』もされていて、読んでて楽しいですな。
本書はビジネスに対する目線にはほとんど触れず、ほぼ食の職人、生産者たちへの取材エピソードといかにその食べ物がおいしいか、に焦点が絞られていて、カタログに書ききれなかった著者の思いを書き出した、って感じでしょうか。どこまでもそれで引っ張っていくところも体育会系ですよね。
バイヤーの勝負師物語の醍醐味はありませんが、読みやすく読んでて楽しく、女性ものエッセーとして行けてます。立ち読みでも良いので、『はじめに』だけでも読むべし。
バイヤーという職業と聞くとどうも勝負師チックなイメージなんですね。自分の相場観とマーケットの読みでこいつは売れる,と信じて買い付ける。五感を働かせ、経験と勘でほれ込んだ商品に賭けるわけで。
くいもの系のバイヤーだと,品揃えと配置によってデパ地下がよみがえったとかいう、雑誌の特集記事を読んだことがあります。銀座の松屋だったかな。バイヤーのお話ならば、どうしたって面白くて胸躍るストーリーになるはずですな。
てなわけで、本が好きプロジェクト第三弾は、
おいしいもの、届けます!
- 猪口 ゆみ
- 新潮社
- 1260円
帯には元看護師OLが転職後バイヤーにとあって、なるほどと読み始めると、んんん? 何ページ目まできてもつっかえたり、意味が取れずに読み返したりすることがほとんどありません。人事異動や社内のエピソードのことも出てきますが、楽しい気分でさらっと読ませます。
込み入った話になると説明されている気分になってイヤになるもんですが(横着ですみません)、このプロのライターを思わせる書きっぷり,とても素人とは思えません、ていうかプロのライターなんですな。冒頭『はじめに』の一番最初第一行目に、
わたしは,食品の通信販売のバイヤー兼ライターをしている、
とちゃんと書いてある。簡潔な文章ですな。
この『はじめに』はたった3ページですが、実に簡潔、実に的確、冒頭を飾るにふさわしい文章になっていて、あなたの仕事を楽しく魅力的に3ページにまとめてください、と言われたらこう書こうよって感じです。
著者は『セコム』の食品通販事業のバイヤー兼カタログライターなのですが、カタログライターと聞いて、村上春樹の『文化的雪かき仕事』を思い出しました。『ダンスダンスダンス』で主人公ボクがやっぱりライターで、確か、くいものやか何かの取材の仕事のことを『文化的雪かき仕事』と呼んでましたっけ。誰がやっても内容はおなじようなもんだが,絶対に誰かがやらねばならず、自分がやらなくても誰かが自分の抜けた穴を埋めるような仕事というわけです。
著者はボクの諦念とは全く無縁でして、この仕事を天職だと言って日本全国を飛び回っておられます。これ,ライターだけでなくバイヤーも兼任しているところが大きいですな。自分でカタログ掲載する商品を探してきて、商品に対する紹介文も書くわけで『雪かき仕事』になりようがありません。化学調味料フリーという高いバーをクリアし自分で納得できるおいしいものを苦労して探してきて、売れなければ自分の苦労が水の泡になるわけで、必死で書くし、売上にも責任があるのです。こういうポジションに、しかも大企業で抜擢されるというのは、かなりのラッキーなわけですけどね(著者も書いてます)。
著者のキャラもありますな。もともとはライターとしての腕を買われて(前に居た部署でHPにエッセーを書いていたんだそうです)抜擢されたのであって、バイヤーとしての期待はそれほどでも無かったんだそうで。彼女の体育会系キャラで仕事を切り開いていったんでしょう。本書では実在の登場人物を扱っているので限界があるせよ、意識して『キャラ立て』もされていて、読んでて楽しいですな。
本書はビジネスに対する目線にはほとんど触れず、ほぼ食の職人、生産者たちへの取材エピソードといかにその食べ物がおいしいか、に焦点が絞られていて、カタログに書ききれなかった著者の思いを書き出した、って感じでしょうか。どこまでもそれで引っ張っていくところも体育会系ですよね。
バイヤーの勝負師物語の醍醐味はありませんが、読みやすく読んでて楽しく、女性ものエッセーとして行けてます。立ち読みでも良いので、『はじめに』だけでも読むべし。