会計スキル・USCPA

会計はビジネスの共通語。一緒に勉強しましょ。

おいしいもの届けます

2007-04-28 22:11:37 | 読書
 風邪をひいてしまいまして。ようやく体調も戻ってきました。今年はしつこいみたいで一週間たってもセキが止まらないんですけどね。外にもでかけられず、ここはじっくり読書でも。で、食品バイヤーのお話です。

 バイヤーという職業と聞くとどうも勝負師チックなイメージなんですね。自分の相場観とマーケットの読みでこいつは売れる,と信じて買い付ける。五感を働かせ、経験と勘でほれ込んだ商品に賭けるわけで。
 くいもの系のバイヤーだと,品揃えと配置によってデパ地下がよみがえったとかいう、雑誌の特集記事を読んだことがあります。銀座の松屋だったかな。バイヤーのお話ならば、どうしたって面白くて胸躍るストーリーになるはずですな。

てなわけで、本が好きプロジェクト第三弾は、

おいしいもの、届けます!Amazonで購入livedoor BOOKS書評/グルメ・食生活

 帯には元看護師OLが転職後バイヤーにとあって、なるほどと読み始めると、んんん?  何ページ目まできてもつっかえたり、意味が取れずに読み返したりすることがほとんどありません。人事異動や社内のエピソードのことも出てきますが、楽しい気分でさらっと読ませます。

 込み入った話になると説明されている気分になってイヤになるもんですが(横着ですみません)、このプロのライターを思わせる書きっぷり,とても素人とは思えません、ていうかプロのライターなんですな。冒頭『はじめに』の一番最初第一行目に、

わたしは,食品の通信販売のバイヤー兼ライターをしている、

とちゃんと書いてある。簡潔な文章ですな。

 この『はじめに』はたった3ページですが、実に簡潔、実に的確、冒頭を飾るにふさわしい文章になっていて、あなたの仕事を楽しく魅力的に3ページにまとめてください、と言われたらこう書こうよって感じです。

 著者は『セコム』の食品通販事業のバイヤー兼カタログライターなのですが、カタログライターと聞いて、村上春樹の『文化的雪かき仕事』を思い出しました。『ダンスダンスダンス』で主人公ボクがやっぱりライターで、確か、くいものやか何かの取材の仕事のことを『文化的雪かき仕事』と呼んでましたっけ。誰がやっても内容はおなじようなもんだが,絶対に誰かがやらねばならず、自分がやらなくても誰かが自分の抜けた穴を埋めるような仕事というわけです。

 著者はボクの諦念とは全く無縁でして、この仕事を天職だと言って日本全国を飛び回っておられます。これ,ライターだけでなくバイヤーも兼任しているところが大きいですな。自分でカタログ掲載する商品を探してきて、商品に対する紹介文も書くわけで『雪かき仕事』になりようがありません。化学調味料フリーという高いバーをクリアし自分で納得できるおいしいものを苦労して探してきて、売れなければ自分の苦労が水の泡になるわけで、必死で書くし、売上にも責任があるのです。こういうポジションに、しかも大企業で抜擢されるというのは、かなりのラッキーなわけですけどね(著者も書いてます)。

 著者のキャラもありますな。もともとはライターとしての腕を買われて(前に居た部署でHPにエッセーを書いていたんだそうです)抜擢されたのであって、バイヤーとしての期待はそれほどでも無かったんだそうで。彼女の体育会系キャラで仕事を切り開いていったんでしょう。本書では実在の登場人物を扱っているので限界があるせよ、意識して『キャラ立て』もされていて、読んでて楽しいですな。

 本書はビジネスに対する目線にはほとんど触れず、ほぼ食の職人、生産者たちへの取材エピソードといかにその食べ物がおいしいか、に焦点が絞られていて、カタログに書ききれなかった著者の思いを書き出した、って感じでしょうか。どこまでもそれで引っ張っていくところも体育会系ですよね。

 バイヤーの勝負師物語の醍醐味はありませんが、読みやすく読んでて楽しく、女性ものエッセーとして行けてます。立ち読みでも良いので、『はじめに』だけでも読むべし。

基礎からわかるナノテクノロジー

2007-04-15 19:15:26 | 読書
○○テクノロジーと聞くと、どうしても眉唾ものかと身構えてしまいますな。派手に報道されて鳴り物入り技術が不発なことは多いし、材料で買うと株は失敗するといいますよね。次は有機ELだとソニーの出井さんは判断していたが実は液晶の時代だった、とか、光の時代が直ぐに来るのでADSLは普及しないと言われていたが結局勝ったのはソフトバンク。ITバブルもバブルだったし・・・。

と言いつつもやはり気になるナノテクノロジー。富士フィルムが,ナノテクノロジーを利用してた皮膚に貼るがん治療用フィルムを開発したとかニュースになってたし、今日の日経にはスピントロニクスなる技術の紹介が載ってます。これもナノテクなんですかね。ナノテクはブームになるとか下火になるとかいうような次元の話ではなさそうな気もするんですね。

さて、『本が好き』プロジェクト2冊目です。

『基礎からわかるナノテクノロジー』西山喜代司 ソフトバンククリエイティブ


基礎からわかるナノテクノロジー
  • 著:西山喜代司
  • 出版社:ソフトバンククリエイティブ
  • 定価:945円
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 これが、これが予想以上に良い本でして、今後ナノテクで調べたいことがあったらまずこの本でどう書いてあったか参照したくなる、そんな感じです。

新書版で200ページちょっとしか無いんですが、だからでしょうね、無駄なく、図も文章も分かりやすく、論点も意識して明確に提示されてます。編集者のものかライターのものか、とにかくこだわりの一冊という感じがします。素人向けなんだから、この辺でとか、イメージだけ大げさに書いて何となく分かった気にさせるということもありません。この手の本で、素人向けということを意識しすぎた本ほど、イタくて役に立たないものはありませんね。これ素人には(当然私もですが)絶対理解不能と思える箇所もありますが、あまり気になりません。この水準の説明をしていて、ここはそう説明せざるを得ない、分からなくても仕方ない、と納得することにしました。

最初の方で、電子顕微鏡の歴史、解説に結構ページを割いていまして、読んでいると何で?、と思うのですがこれも,なるほど本の構成としてはこうするしか無いのだ、と読み進むうちにわかります。ナノテクを説明するには、観察技術、微細加工技術を説明せねばならず、観察技術、微細加工技術を説明するには、顕微鏡の歴史をたどるのが一番なのですな。本書には手抜きが無くて、本当に好感が持てます。説明の手順としては本書に限らず定番なのかも知れませんけどね。

 以前観たナノテク関係のテレビ番組のせいか、ナノテクと聞くと分子レベルのロボットのことばかりが頭に浮かんでしまっていたのですが、本書を読むと、むしろ『革新的な素材開発』の物語であり、『加工や情報技術の限界を画期的に拡げる』ということであり、これまで不可能だったことが可能になることだということが良くわかります。

昔、小学生の頃読んだ子供向けSF小説で、殺虫剤かなんかを浴びたせいで身体がどんどん小さくなって,ペットに襲われ,次に虫と闘い、もっともっと小さくなって、このペースで小さくなると明日は0になってしまう、と覚悟して植物の葉の床に就くという物語がありまして。翌朝目覚めるとまだ自分は生きていて、起き出してみると無限の緑の地平線が見渡せて・・・というオチなのですが、そうですね,ナノテクはもうここまでだと思われていた技術限界を、未開拓の地平に押し出しているんですな。

文章も良く練られていて読ませるし、熱意を感じて、退屈することもありません。

ナノテクは特定の分野がどうこういうよりも、技術一般の水準に関わる問題であって、少なくとも現代の技術動向に関心がある人ならば本書はお勧め。



デパートの人件費

2007-04-14 12:27:54 | 小売
もう4月も半ばですか。
新人が入ってきたり、人事異動やなんやで落ち着かない毎日ですね。

今年は2007年なわけで,2007年といえば団塊退職ですね。

そう思ってつらつらと東証の開示情報を眺めておりますと、高島屋の決算が出ておりました。

決算説明資料を載せときます。

増収増益のようで、好調ですね。

デパートというと、社員の高齢化とそれに伴う高い人件費が指摘されておりますが、団塊退職でいずれ人件費の削減効果も期待できる,と言われているんですな。

そこで、販管費の内訳を見てみるに

単位・百万円で国内百貨店子会社4社を含みますが

   平成19年2月期    平成20年2月期
人件費 86,327 +0.9%    84,936 △ 1.6%

となってます。19年2月期は前年比0.9%増えたものの
今期はどーんと14億も減るんですね。

そもそも営業利益が2百数十億なわけで、これだけ人件費が減ると影響も大きいですよね。この傾向が数年続けば収支は様変わりする感じですが、どうなんですかね。高島屋さんの人件費削減が団塊退職によるものか、そこまでは書いてないんでわかりませんな。

団塊退職による消費やら、ベテランの退職による技術の継承が難しいとか、よく報道されてますが、

コスト面の影響も大きそうですよね。






ロンドンエコノミスト 安倍首相非難

2007-04-10 00:36:56 | 英語情報
先月のことですが、図書館でいろんな雑誌をパラパラめくっていると、仰天記事にぶつかりまして。

首相が安倍さんに代わった前後に、ロンドンエコノミスト誌の安倍評を紹介したことがあったと思います。小泉氏は絶賛されておりまして、その後継者が小泉風に改革を続けてゆくのは難しいぞ、って感じでしたっけ。まだ信認されていない、という感じがありありだったわけですな。

もともと感情的にきらいなのか、と思えるような記事がでてたんですが、改めてネットで探してみたら、ありました。直接Economist誌のサイトでは読めるようになっていないのですが、そのまま引用されているブログから拝借。

長いので、終いの文章を先に読みますか。

Japan is not unique in its reluctance to confront a grim past. Though China lambasted Mr Abe for his statement, its Communist Party has never accepted responsibility for the 30m deaths from Mao’s self-inflicted famines of the 1950s, for example. But six decades on, deliberate amnesia is unworthy of modern, democratic Japan. Shame on you, Mr Abe.

"shame on you"

ええっ!!!

エコノミスト誌に恥を知れ、となじられております。

繰り返しになりますが、私はノンポリで阿部さんに肩入れする気持ちは全くありませんが、これにはちょっと驚きました。 そこまで言うか。これがどこぞの独裁者が相手ならわかりますが、日本の首相なんですけどね。

論調も一方的で、一流紙らしくないんじゃないですかね。こんな記事を載せるなんてちょっとがっかりですな。

エコノミスト誌は日本がイラクに自衛隊を派遣したことをえらく評価しておりまして(それが米英の普通の感覚かも知れませんが)、そうした努力を無にする所業だ、というようなこともかかれてますな。あんまりよろしくないですね。

それにしても、エコノミスト誌もエコノミスト誌ですが、ここまで書かれる安倍さんも安倍さんですよね。

以下全文を載せておきます。

EDITORIAL
No comfort for Abe
Mar 8th 2007
From The Economist print edition
Japan’s prime minister picks a shameful fight over the organised rape of thousands of women
http://www.economist.com/opinion/displaystory.cfm?story_id=E1_RRTVDVS
SIX months ago Japan, whose leaders have often been dull political ciphers, celebrated an unaccustomed transition: the handover of power from a confident, reforming prime minister, Junichiro Koizumi, to an assertive, seemingly capable successor, Shinzo Abe. Mr Koizumi had pulled the economy out of its slump, and built up respect abroad. Japan may have failed last year to win the permanent seat on the United Nations Security Council that it covets, but its diplomats, aid workers and (in modest but useful numbers) its soldiers, sailors and airmen are now ever more routinely deployed—and appreciated—in troublespots and disaster zones from Asia and Africa to the Middle East. Mr Abe has talked about his fellow citizens taking new pride in their “beautiful country”.
So they should. But sadly for those who expected better from Mr Abe, he seems to think he can build pride in the future on untruths about Japan’s past.
Mr Abe started promisingly enough. By adopting a more subtle approach towards China and South Korea he undid much of the damage Mr Koizumi had caused by his stubborn visits to the Yasukuni shrine honouring Japan’s war dead (where the souls of some convicted war criminals have also been “enshrined” at the request of their families). Then last week he squandered all the goodwill. Planting his own feet in the mire of imperial Japan’s wartime history, he questioned whether the 200,000 or so “comfort women” (from Korea, the Philippines, China, Taiwan, Indonesia, Burma and elsewhere) herded into the system of brothels run by the Japanese Imperial Army had really been coerced into their sexual servitude. Strictly speaking, Mr Abe said, there was no evidence of that.
Is he deaf? The first-hand evidence has mounted since some of the women courageously started breaking their silence, after decades of shame, in the early 1990s. More testified recently at hearings in America’s House of Representatives, where efforts are under way to pass a resolution calling on Japan to make a full apology, and where some of the victims explained, painfully, just how wartime sex slavery was for them. There would be more evidence too, if successive Japanese governments had not buried it in closed files or destroyed it.
Why pick this shameful fight? Other blunders have left Mr Abe dependent on his party’s noisy ultra-conservatives (see article). Resentful even of Japan’s past carefully parsed apologies for its wartime aggression, a group is now campaigning to overturn a 1993 statement by a cabinet official, noticeably unsupported by the parliament of the day, that for the first time accepted the army’s role in setting up the brothels.
The past is your country too
What the brothel survivors want is that full apology from Japan; they refuse to be fobbed off with offers of money instead from a private fund. By questioning their testimony—in effect, calling them liars—Mr Abe has instead added modern insult to past injury. But the damage goes wider. It revives distrust among Japan’s neighbours. And it belittles the efforts of those admirable Japanese working alongside others in the world’s dangerous places to help rebuild communities where people have sometimes suffered the same wartime traumas as the “comfort women”—victims of organised rape, in any other language than prime-ministerial Japanese.
Japan is not unique in its reluctance to confront a grim past. Though China lambasted Mr Abe for his statement, its Communist Party has never accepted responsibility for the 30m deaths from Mao’s self-inflicted famines of the 1950s, for example. But six decades on, deliberate amnesia is unworthy of modern, democratic Japan. Shame on you, Mr Abe.
ENDS

スピードハックス

2007-04-02 00:49:30 | 読書
久々の更新です。
すっかり春めいてきました。何とか期末も無事終えてホッと一息です。

さて、今日は本を一冊紹介します。

米国マクドナルドの財務を見てみようかな、とか
今読んでるレイ・クロックの著書の話、とか
日本マクドの社長の著書とか、まだ頭の中はマクドナルドへのこだわりがあるのですが、それはまた別の機会に。

ライブドアさんが、『本が好き』というプロジェクトを立ち上げておられるのを雑誌でみつけて参加しました。参加者はただで本をもらうかわりに書評をブログにのせるというルールになってます。ネットのクチコミでヒットさせようということなんだそうです。

企画の目的や、タダでもらうことを考えると悪くは書きにくいですな。読んで駄作だったらどうしましょうかね。

『スピードハックス』日本実業出版社 大橋悦夫 佐々木正悟著

一言でいうと、ティップス集ですな。ヒント、小さな工夫、たとえばやるべきことを書き出しておくとか、むずかしい仕事は小さく分けて少しづつこなしてゆく、とか、仕事の局面に合わせて細かくアドバイスしてくれます。

『こういうときはねえ、こうするともっとうまくできるわよ』っとか
『次からはこうすれば』っとか

何かと面倒見の良い、できる先輩の(女性に限らずですが)のアドバイスって感じですかね。たいていそういうアドバイスは聞き流して忘れてしまうわけですが、改めて本としてまとめて読める、ってとこでしょうか。

題名はカタカナでかっこいいのですが、最近流行りのコンセプト型の本ではありません。むしろ泥臭くボトムアップ、実務から出発してます。って言うか、コンセプトは薄いですね。仕事のスピードをいきなり3倍にする、とか、定時に退社するタイプになる、とかで冒頭始まりますが、後でこれがフォローされることはありません。ドラマで伏線を張っておいて、忘れられたり編集でカットされて全く展開しないことがありますが、そんな感じです。

仕事が早くできるための『仕組み』とそれを実行し続けるだけのモチベーション維持『やる気』の二本立てで造られた本と紹介されてますが、その辺も渾然一体といった感じで二本立てでもなさそうな。まあ、早くやるための仕組みといっても,その仕組み自身、心理的効果を狙って造られているはずなので、もともと分けることにも無理がありますかね。

揚げ足を取ってばかりですね。

確かに本の作りは荒っぽいですし、紹介されているアイディアやコンセプト自体に新味はあまりありません。この本自身がそれをねらっているわけでもありませんがね(著者の一人が反朝型宣言をしていて、これなど展開すれば面白くなりそうですけどね)。

しかし、ネタは実務で鍛えられた確かなものだ、という気がします。
仕事の工夫本は山ほどあるわけでして、もう、新しいアイディアは良いからうまく使えるようにまとめて欲しい、ということを感じている人は多いと思います。

この本はそういう人が使うといいんでしょうね。超整理法など数行で説明しただけ
の後に、こうやっても使えると紹介されています。野口さんが何冊もの本で説明した方法を,初めての人に数行で説明して応用させるのはちょっと無理ですかね。

あるツールなどは、説明なくコメントだけかかれてたりして。

まとめがほしい人にとってはもう少し構成が整理されていると良いし、初めての人にはもう少し丁寧であって欲しい、そんなところなんですが、他の人の書評は概ね好評でして、まあ,玩味熟読するための本ではないし、細かいことを言うべきではないかも知れません。

そう思って本書を改めてめくっていると、完璧主義を止めること,と書かかれておりました。

恐れ入りやした。

スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術
  • 著:大橋悦夫、佐々木正悟
  • 出版社:日本実業出版社
  • 定価:1575円
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