花椿夕月の『雪*星*さざれ石』

日本映画ネタ、雑ネタなど

☆9月18日 映画「魚河岸帝国(1952)」を見た

2022年09月18日 | この映画見ました

花椿です。

新東宝作品の「魚河岸帝国(1952)」を見た。 少し前、ある女流マニアからこの

作品の提供を受けた当初はさほど関心がなくて視聴の優先順位も低かったんだが、

俺の好きな野上千鶴子が出演していると知って急速に気分が盛り上がった。 さっ

そく視聴した。 


そして良い意味で予想に反し、めちゃめちゃ面白い作品だと知った。 とにかくスト

ーリー展開に無駄がなくてスピーディ、しかもドタバタ・コメディでありながら愛も

あれば悲恋もあった。 「帝国」と呼ばれる愛すべき凄いキャラとも遭遇。 視聴後

しばらくは「いい映画を見た」という感動に包まれて何も出来ないほどだった。


まず題名の読み方は「うおがし帝国」であります。 「帝国」ってのは東京築地の生

鮮市場で運送業を経営する会社の社長(山村聡 )のあだ名でパワハラの権化のよう

な社員の扱い、しかも下品でハゲ頭で単細胞という愛すべきキャラとしても描かれて

いる。 


個人的には山村聡の悪役は何回か見たけど、こんなハチャメチャなキャラで登場した

のは初めてだ。 物語はこの山村聡と主人公の田崎潤、そして野上千鶴子、花柳小菊

の2人の美女をめぐって展開する。


ストーリーを簡単に書けば、主人公の田崎潤が山村聡(帝国)の経営する運送会社の

運転手に就職する。 たまたま市場で客の花柳小菊と知り合って自身が運転するオー

ト三輪に同乗させるまでは良かったが事故を起こし車が横転、花柳は重傷を負った。


田崎は毎日病院に行き花柳を見舞うわけであるが、しだいに両思いへと変化した。

一方、山村は仕事の出来る田崎を高く評価して娘の野上千鶴子の婿にと考える。 

野上もひそかに田崎を愛しているのだが、花柳の存在を知って大ショックを受けた。 


結局、野上は身を引き田崎は花柳と結婚して民主化された会社を盛り上げようとす

る。 山村は社員との交渉の場で田崎から柔道で何回も床に投げられて目が覚めたの

か社長の座を降りて会社は民主化された。 一介の運転手に戻った山村は野上のいい

相手を見つけるのが次の仕事になった。 以上。


この映画のキモは野上千鶴子が田崎潤を愛していながら、その願いが成就しなかった

所だろう。 これがいとも簡単に野上と田崎が結ばれていたら単なる予定調和であっ

て面白くとも何ともないはず。 


つまり田崎の前に花柳小菊が登場したため野上の愛が実らなかったのが、この映画を

面白くした。 これによりメロドラマ一筋で「映画は愛がなければダメ」の俺をめち

ゃめちゃに感動させたわけだよ。 今までに見た悲恋物の中でも特筆級だったな、こ

の映画。 


★気が付いた点

1.花柳小菊は時代劇の脇役に出ていた程度の印象しかなかったが、山田五十鈴を

アップグレードしたような顔立ちで結構いい感じ。

2.田崎潤ら運転手仲間の寮はまるでタコ部屋。 ここで千秋実や伊藤雄之助らと何

度もケンカが勃発。 大乱闘になる。 魚河岸はみんな喧嘩っ早いのか乱闘シーンが

多数。

3.勝鬨橋が開きかかった所をオート三輪で飛び越えるシーンがある。 トリックで

はなくて実写にしか見えなかった。

4.風景としては昭和27年頃の築地市場とその周辺。 運河があったけどあれは

昭和通りの横の運河を埋め立てて首都高速を建設したと言われているが、埋め立て前

の運河じゃなかろうか。

5.山村聡の怪演は凄かったけど伊藤雄之助と千秋実もオーラを全開。 田崎潤の

柔道技はモノホン級だった。


1952年3月14日公開の新東宝映画だね。 モノクロで監督は並木鏡太郎 。 

この監督は新東宝の面白い作品が多い印象ですね。 俺の評価は野上千鶴子の評価込

みでランクA(かなり面白い)としておきます。


□写真右列は全て野上千鶴子。 後姿は田崎潤。

□写真左列1番目

「帝国」の山村聡(左)と田崎潤。

□写真左列2番目

田崎潤(左)と花柳小菊。 左端は2人を見てショックを受ける野上千鶴子。

□写真左列3番目

左から伊藤雄之助、田崎潤、千秋実。 寮の汚い部屋で。

□写真左列4番目

花柳小菊(左)と田崎潤


じゃ、またね。

2022年9月18日、21時40分記。
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3 コメント

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魚河岸帝国 (映画狂M)
2022-09-19 12:18:41
 久々の投稿、お待ちしておりました。
ブログを読ませていただき再度鑑賞。再発見の多い作品でした!
出演者の特に ”帝国” を演じた山村聡はじめ、伊藤雄之助、千秋実が印象的で他にも
三島雅夫など達者な俳優が顔を見せてくれました。
 女優陣では静の野上千鶴子と動の花柳小菊の取り合わせ。
花柳小菊は前後して藤田進と共演した「北海の虎」(1953年 東宝)と共に記憶に残る
作品になりました。
野上千鶴子は記述の通り失恋したからこその儲け役でしたね。
 築地市場の内外部、築地、勝どきエリアの、今となっては貴重なロケシーンが満載。
運河に掛かる橋の数々は様相が変わっていて場所の特定が全く出来ませんでした。
1952年の撮影当時と現在の街並みとがスッカリ変貌していて、勝鬨橋と最後の格闘
シーンで遠景に見える聖路加病院旧館が現存するのみでしょうか。
次回のブログ楽しみにしております。
映画狂Mさんへ (花椿)
2022-09-20 03:01:05
映画狂さん、わざわざこちらへもありがとうございます。
私の方は野上千鶴子を見ておこうという、ただそれだけの理由でチョイスしたわけですが、予想外の大物が釣れたって感じです。

勝鬨橋のシーンはやはり実写ではなくてトリック撮影ですね。最初にざっと見た感じでは実写に見えましたが。

>次回のブログ楽しみにしております

提供者の許可があれば新東宝の「女豹の地図」を書きたいですね。今までに見た全作品中の最高の1本ですからね。(笑)
魚河岸帝国ブログ 拝見 (北アカリ)
2022-09-24 16:52:36
映画鑑賞の前ですが、あらすじは簡潔に書かれているので参考になります。
山村聰の怪演ぶりは、写真からも想像できます。
野上千鶴子さんは知りませんでした。久慈あさみさんや淡島千景さんと似たような顔立ちに見えてしまいそうです。
映画を見れば、もっと印象が強くなると思いますので観てみます。
東京に住んでいましたが、築地市場の印象がはあまりありません。映画の野外シーンが楽しみです。

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