木に想う

家も建てちゃうドア・家具も創っちゃう材木屋 加藤木材の社長の想う木の話

ヒノキのバウムクーヘン

2009-10-30 11:33:41 | 木(杉)の話
 「昨日の説明じゃわかりづらい!」というご批判もあろうかと思って、昨日のヒノキの板がとれるような大きな丸太じゃないけど、杉の小径木の「こぐち面」にマジックで書いてみました。



 昨日のヒノキの板はバウムクーヘンに例えてお話しましたが、だいたいこんなトコからとったもんだと推測してください。真ん中の板は「中」ってかいてるあたりで製材したと思われるってことです。外側ギリギリでしょ。

 外側のデンプン層である白太(しらた)と赤身(赤身)の境界は見やすくするために赤いマジックで破線で書いてあります。「右材」と「左材」の違いはとった材の方向的位置の違いではなく樹芯部にちょっとだけ近い部位だと認識してください。

 右より左の材のほうがちょっとだけ中心よりでしょ。「右材」のすぐ下に書くと見づらくなるからその脇に書きました。

 さぁヒノキの表の顔は昨日お見せしましたが、その裏の顔とはどんな顔なんでしょう・・・・「裏の顔」・・悪いやつなんでしょうか、それとも正義の味方なんでしょうか?

 その答えはまた明日・・・。

ヒノキの裏の顔おもての顔

2009-10-29 08:55:49 | 木(杉)の話
 これは以前たとえで話した4メートルの幅120ミリ×厚み36ミリのヒノキの造作材をとるための板です。3丁並んでいます。3丁とも節のない板でしょ。節がないから板が優れているというわけじゃないけど、「希少価値」があるから、なかなかそろわないから・・節がある材より高価になります。

 ただしそれはあくまでも希少価値からの価格であって、節のない板の方が優れているってわけじゃありませんからね。



 3丁ともよく見といてね。木は人の顔と同じように同じ木目の板はないけど、その特徴をよく見といてください。明日はこれをひっくり返して裏側を見てみましょうね。

 真ん中の板はほぼ白太(しらた)ですね。真っ白。
 右の板はちょっとだけ赤身が入っています。
 左の板は板の真ん中にずーっと赤身が入っていますね。

これはこの板をとった丸太の場所が・・

 バウムクーヘンにたとえるなら
 その外側ギリギリで製材したのが真ん中の板。
 その板の奥、もう1枚分くらい内側で製材したのが右の板
 そのもうちょい内側。そうだなぁ右の板よりか1センチくらい内側で製材したのが左側の板。

っていうトコが想像できますよね。以前の弊社のヒノキの柱でその木の立ち姿を想像できた皆さんには簡単な想像でしょ(笑顔)。

 明日はこの板をひっくり返しますから、そのひっくり返したトコ。その状態も想像しといてください。3つの板でその裏に大きな違いがあるからこんなことやってるんだろうけど、はたしてどうなってるんでしょうね。お楽しみに。  



奇跡の杉

2009-10-28 08:55:09 | 木(杉)の話
 「奇跡の杉」 船瀬俊介著 三五館 ¥1,400+税
 
 という本が出版されました。222ページの本ですが、なんとぼくが40ページ近くでてきます。

 インタビューをうけたのはもう2年くらい前でしたし、それからぼくが愛工房という木材乾燥装置に関して各種実験をさせていただいて、ある一定の考察をレポートとしてまとめたのも、もう1年以上まえですから情報としては少し古い部分もありますが、「杉を使うために我々は杉を殺すかのような方法をここ15年ほどずーっととってきていて、杉を生かす乾燥装置である「愛工房」に出会えて、こんなに杉は素晴らしかったんだ!!という出会いがある。」というようなお話です。

 愛工房の発明者の伊藤さんの素晴らしさ、人間的な魅力にも触れています。今読み返すと、ぼくもあの頃の興奮がよみがえります。

 なぜ今!杉を使う事が重要なのか?
 なのになぜ?杉は使われてこなかったのか?
 それは技術的には乾燥しづらい木だったから!
 乾かないから杉を殺していたかのような乾燥方法をとっていたところにあらわれた救世主「愛工房」!植物の命を絶やさない温度での乾燥装置。
 ところがたんなる乾燥装置じゃなく、出てきた品質がぶったまげるくらいの高品質!豊かな精油分!!それらを使った様々な体質改善事例・・

 前にも書きましたが、木材の性能は乾燥方法でほぼ決まるといっても過言じゃありません。どんなに素晴らしい木も乾燥方法をあやまると死んでしまう。

そんな本です。

しゃぁないなぁ、つきあったるわ

2009-10-27 16:47:03 | 木(杉)の話
何日か前に「注文してもいないものも購入するのか?」という頼んでもいないヒノキの耳付き板の話がありましたが、結局丸くて緩やかな円すい状の木を四角くして製品を作るにあたって、あんまし細かいことばっか言ってても、製材所さんは大変なんですよね。

 「長さ4メートルの幅が12センチの厚みが3.6センチで節のないとこばっか持ってこい!!」って言ったとします。そりゃぁとれるだろうけど、その寸法で節が出ちゃった板はどうすんだい?捨てんのかい??ってことになっちゃいます。

 だから材木屋さんは「しゃぁないなぁ・・つきあって買ったるかぁ・・。」と、もったいつけて安く買って、製材所さんも換金と手離れがよくて、丸太を製品にした際の製品をほぼそっくり買ってくれるお客さんを喜んでいたんですね。

 「また頼んでもいない材料を持ってきやがって!」「そういわないで、つきあってくださいよ。」「まだこの前のが残ってるよ!」「その分安くしますから・・」「しゃぁないなぁ、つきあったるわ。」ってな感じです。

 実際の建築現場まで頼んでもいない材料が納入されるのはいけないことだし、ありえないことですが、以前は材木屋さんが乾燥期間としてのストックヤードとしての側面がありましたから、そんなノリがあったんですね。


ヒノキ神話

2009-10-26 09:22:28 | 森の話
 釣りに行ってきました。小さいですが40センチくらいのヒラメとイナダが釣れました。ウルメイワシを釣って、それを泳がせてエサにして釣りました。

 養殖はエサに10キロのイワシを使って1キロの魚を育てる(正確な数字は記憶をたどって書いてるから自信ないけど)なんて話を聞いたことがあります。確かにタイやヒラメは高級魚ですよね。高級魚ばかりをみんなが求めると、このようにおかしなことになっちゃいます。



 私は日本の森林の中で杉の活用が再生への第一歩だといつも言っています。木材業界はその具体的な効能を調べることなく「そりゃヒノキがいいに決まってますよ。」とヒノキを褒めて収益をあげてきました。ヒノキは杉の倍くらい成長に時間かかるし、生息可能地域も杉の半分くらいだから価格は杉の倍くらいするんです。

 木材業者はいままで杉がヒノキになるだけで、同じ寸法の材料を売っても売り上げが倍になるから、「何がいいのか?どんなメリットがあるのか?」などその効能に関して具体的に研究もしないで、ただただヒノキを誉めて売上をのばしてきた気がします。これを「ヒノキ神話」という人もいます。しかし、もはやヒノキ神話は終わり、ヒノキというブランドも、国産材のかつてのエースも、安価な外国産材と比較されるくらいの価格で取引されるケースもあるようになってしまいました。それくらい使われない木になってしまったんですね。

 私達「適材適所の会」はおそらく日本で初めて「杉の効能」を独自に研究してきた木材関係者です。学者さんじゃなく、現場の人間としては初だと思います。11月1日にはこれまで研究してきた「杉の効能」をweb上で公開致します。楽しみにしてください。杉の活用が再生へのスタートだから、その魅力を研究してきたんですが、どうやら杉という木は私達を救ってくれる?!かのような素晴らしさを持つ木だという事がわかってきました。

 ぼくらのやってきた事は例えるならタイやヒラメにあらずイワシの栄養価だとかの研究をしてきたみたいなモンかなぁ・・なんてぼんやりと思いながら釣り上げたのがこのヒラメでした(笑)。杉の価値が認められれば桧の価値も改めて認められると思うんです。

木材流通

2009-10-24 10:13:30 | 想う話
ピローズの新曲の「YOUR ORDER」はキモカッコイイですね。気持ち悪いけどかっこいいです。そんなテイストのバンドですが、磨きがかかっています。

 昨日までの話の中で、人間が求める木(の寸法)をとるためには・・

 その求めているものが真四角なものですから、この世に真四角な木はありませんので、必ず不要になってしまう部位がでてくるんです。そこを「もったいない」と割りばしなどにしてきた木の文化が我が国だった。と昨日はお話しました。

 木は柔らかく、その欲しい寸法の木を欲しても、傷がついたりしやすいですし、加工して仕上げれば仕上げるほど割れやすく、反りやすくなります。

 ですから、現在の、必要なモノだけを必要な期日に届けろ!的な発想はちょっときついんですね。捨てるとこの材が増えることにつながっちゃうんです。ブローカーが発注して、それを現場に納入しちゃえばいい。というのは可能な部分もあるけど、全部をそうして林産地の製材所から消費地の家まで・・・というのは無理だと思います。柱や梁はよくても造作材までそうなるとキツイ。キツイから木を使わなくなってきたんです。木を使わない造作材が主流になってるんです。

 だから消費地のほど近くにストックヤードとして木材をストックしておいて、その現場で使う分の造作材を加工して仕上げて現場に納入するという役割は必要だと思うんです。昨日の三角形の端材だってなるべく有用に使いこなすビジネスです。

 そこまでを製材所に求めることはやはり厳しい。製材所さんは丸いものを四角くして出荷する効率をある程度考えなきゃならないビジネスだから、端材をとっといて・・じゃもうきりがなくて、その端材をチップに・・ということになるのはしょうがないんです。ですからその多くを林産地で製作して・・というのは結構なことなんですが、そのすべてとなるとそれは結果捨てるとこが多い仕組みだったり、そうは言ってもそれは無理な話だから、結局すべてでなかったり、品質に劣るというしわ寄せがきたり・・という事になりかねないと思うんです。

 材木屋さんはこれからは工務店化しての元請け化か?、家具・建具製造などのメーカー化をすすめるか?以外での生き残りとしてはこのような木の目利きを活かした造作材加工販売をプロアマを問わずに販売していくことのように思います。

 いずれにせよ材木屋さんや材木問屋さんの中にはブローカーのように在庫もせずに注文があったらそれを注文して配送する。言わば運送屋さんに近い業務形態のところも多いので、よほどの特殊なコーディネイト業務が必要な場合を除き、そういったブローカーを極力排除していくことにこれからはなっていくと思われます。

 木を扱う以上その木の目利きの経験は必要ですが、本当に汗をかいている方々にこそそのコストをお支払するべきというのは、木に限らず一緒だと思うんです。

桧の耳から木の文化を考える

2009-10-23 11:21:04 | 木(杉)の話
 これは昨日話した「耳」付近の落とし材=端材(はざい)です。木は極めて緩やかな円錐状になってますから、「耳付近」の落としも三角形みたいな形になります。木の根元の方より先の方が細くなっていますから・・・

 例えば昨日のヒノキの耳付き板から長さ4メートルで幅はとれるだけ最大幅の「耳なしの板」=「耳すり板」をとりますと、長さ4メートルの三角形の「耳付近」の端材が右と左にできます。そのあまり材は長さは4メートルあっても三角形ですから・・

 例えばそのあまり材から幅3センチの棒みたいな四角い材をとろうとしても、「長さ2.5メートルしかとれない。(なんてったって先っぽにいくほど細い三角形ですからね)」なんてことがあるんですね。

 このように「ぶどまり」といいますが、木を木材とする過程で多くの端材が生まれるわけです。100の自然の恵みのうち80しか使用できないとすれば、それは「ぶどまり8割」ということになります。

 私達は四角い世界にいますが、この世にま四角なモノは存在しないんですね。その分どうしても木材として利用できないとこがでてくる。それを「割りばし」なりなんなりに使ってきた木の文化が我が国の木の文化だったんですね。

柱の次は桧の板から考えます

2009-10-22 11:00:27 | 木(杉)の話
この板を「耳付き板」と言います。桧の耳付き板なんですが、見る人が見れば「おっ!!こりゃイイ木だねぇ。」という板だと思います。

 耳とは樹皮のことを言うんでしょうか。この板は樹皮はついてませんが木の丸みのラインが両側にのこってるでしょ。だから「両耳(つき)板」と言ったりします。片側のやつは「方耳(つき)板」とか言ったりします。ですから樹皮というより木の丸みを残した板という言い方が適当でしょうか。



 両方のミミを落とした(製材した)四角い板をかつては「耳すり(板)」なんて言ってました。南洋材のラワンの板なんかがそうでしたね。だけどいまやラワンも我が国がほぼ食い尽しちゃいまして、少ない樹種ですね。かつてはフィリピンのラワンを日本に持ってきて、製材していました。その際の四角い板にしたのが耳すり板というわけです。だけど今は「耳付き板」とは言っても「耳すり板」とは言わなくなりましたね。それだけ耳すりの状態が当たり前になったということですね。

 「じゃぁなんでそんな珍しい耳付き板がお前んとこにあるんだ?」って頼んでもいないのに注文した材と一緒に入ってきたんです(笑)。
 「おまえ!今の時代に頼んでもいない材料が一緒に届いても、それをお金払って買うのかよ??」そうなんですよね。そのへんの事情といいますか、ノリも追ってお話していきますね。

 

桧の柱からの創造力とは・・目利きへの入り口

2009-10-21 08:50:50 | 木(杉)の話
 木材は生育のままに使います。

 ですからその木材が大地あった方向のままに、その上下方向に使用します。だからこの柱も上方向が上で下方向が下にして施工されています。

 木は丸くて、だけど先に行くほど細くなっている「円すい形」をしてて、だけど僕らがイメージする「円すい」よりとってもゆるやかなラインです。

 そして、その木=丸太を木材とする際の製材時のノコギリはまっすぐに進みます。だから幹の太い方の下部は卵の黄身のような赤身と呼ばれる内部付近をノコが進んで、上に行くと丸太が細くなってますから、白太とよばれる外側の白いところをノコが進むとう事が多く見られます。

 ですから一般的に、下にチョロっと4面とも赤身が見えて、それが上に行くと消えて、上は白い白太が4面に見える柱は山にあって木である状態の際にもある程度まっすぐで、ということは曲がりづらい性質を持っていることが期待できて、「おお、こりゃいいね。」という柱だという事になります。

 さらに4面ともに同じくらいの長さで赤身が入っているということは製材した柱のど真ん中付近に樹芯がきていることが推察されます。これは木の持つ性質は別に製材方法として曲がりづらい方法です。「おお、こりゃまたいいね。」ということになります。

 上記がその柱が近い将来どうなるか?の推論であり、いわゆる「目利き」と呼ばれる世界の話のほんの入り口付近の解説です。

 材木屋さんと呼ばれる人たちは木材市場で立っている木材を見て、その良し悪しを早く判断して購入できる目があります。(残念ながら「ありました。」ケースもあるけど・・)このブログの話をしてお近くに材木店があるのなら、そこの親父さん達にちょっと木の見分け方のレクチャーを乞うて、そのお付き合いの中から木材を購入されるのなんていかがでしょう。

 魚を買うなら魚屋。材木は材木屋が一番。その知識と経験が違う。その板でテーブルを作るなり床に使うなり、加工や製作、施工の相談だってのってくれますよ。

 木材を見てその木材が大地にありし日を想像する。という行為はすなわち木の「目利き」への入り口ということなんですね。弊社のこのヒノキの柱は赤身が出入りしている(まがってた木と思われる)プロが見ると「こりゃいかんわい!」という柱なんですが、だからこそぼくはこんな話をお客様としたいばっかりに使用したというわけです。

 

桧の柱から想像してみよう

2009-10-19 14:15:13 | 木(杉)の話
 この柱を下から見ていきましょうね。下の写真を見てください。柱下部の左側の面に赤身がさしていますのがわかりますか?右の面は白いけど左面は真ん中に赤い色がついてるでしょ。赤いとこは丸太の中心部よりのところだからね。



 3枚目の写真は柱の真ん中あたりです。今度は右面に赤身が入っています。赤身が真ん中やや下あたりから現れて小さな節がある少し上で赤身は切れています。



 上部は右面の赤身が切れたあたりから、今度は左面に赤身が登場。上まで続いています。上部は右面には赤身はありません。



 赤身=卵の黄身みたいなとこで、だけど黄身みたいに動かないで中心部にある部位であることを考えてみれば、この柱がちょっと珍しいくらいの曲り方をしていた木では・・・という想像が成り立ちます。

 こういう木は一般的には上等な柱とは評価されません。曲がっていた木は、やはり材になっても曲がりやすい。と言われているからです。でもまるでスラロームのように見え隠れする赤身が面白くて、わざわざこんな柱を探して引っぱり出して、施工しました。ここにこの柱があるから上記のような話をできるんです。おとなしい上等な柱じゃそうはいかない。「いい木だね。」で話がおわっちゃう。

 このようにそこに木があればこんな話を親子で伝承していけます。木に似せられたものじゃこうはいきません。鉄やアルミなどじゃやっぱりこうはいかないですし、そしてせっかく木にしたのにペンキで塗りつぶしたりしたんじゃ、やっぱりこうはいかないんですね。

 いかがでしょう。このヒノキの柱の大地にあった際の雄姿を想像できましたでしょうか?