ぶらつくらずべりい

短歌と詩のサイト

詩、なくでなくなく

2013-10-25 09:04:36 | 
悲しみがもしも手に触れられるものだったなら

僕はたくさんの悲しみに囲まれて身動きがとれなくなってしまうだろう

あっちにもこっちにもあなたや僕の悲しみが

悲しみがもしも目に見えるものだったなら

僕は避けて通ろうとして一歩も前に進めなくなるだろう

あそこにもここにもあなたや僕の悲しみが

振り払っても目を閉じてもやっぱり悲しみが溢れてしまって

なくでなくなく

あなたを覆う悲しみが溶けてなくなるまで

舐め合おう

死が二人を別つまで


詩、ようよう

2013-10-17 06:25:42 | 
世界は血を吐くような熱さで冷たくて

冷たくて

世界を見たいようにしか見ないようにして

善人ではなく

悪人になって

でも見た目は善人に見えて

悪人にすらなりきれなくて

一人で酒やパチンコに溺れて

さ迷うようように

ようように生きていく

ようように生きて

かなしみを食べて

ゆっくりと目を閉じる

詩、自転車かごから落ちたもの

2013-10-02 05:53:26 | 
まだ太陽が遠慮気味に覗きこむ朝の時間に

大きなカバンを自転車の前かごに積んで

駅まで向かっていたら

カランと金具が落ちた音が聞こえて

後輪がそれを踏んで

それでも僕は前進を止めずに

なんとなくその音の正体について考えながら

正体にたどり着けなくて

気が付けば随分進んでいて

もう今さら引き返すのも面倒になり

とても大切なもののような気がしたけれど

でも仕方ないと思おうと思う

そういうこともある

そういうこともある

しかし、しばらくすると涙が出た