森の中のティータイム

離婚を経験し子供達も独立 
暮らしの小さな発見をノートに。

友人との別れ

2010-11-07 | 家族友人
三日前、友人が亡くなったことを、共通の友人からの連絡で知らされた。
親子ほど年齢の離れた、80代の一人暮らしの友。

亡くなったのは2週間ほども前だったということ すい臓がんだったということも、
9月に電話で話したのが最後だったという友人も知らなかったし、
比較的近くに住む、共通の知り合いの女性(彼女とは友人)でさえ、
9月に珍しく彼女から頼まれごとをして会ったけれど、全く知らなかったという。

知らせてくれた友人は私よりももっと遠い場所に住んでいて、彼女と連絡がとれないことで心配になり、
今月に入ってその知り合い女性に電話を入れ、その人が慌てて家まで行って事態を把握した。
家は既に親戚によって片付けられ、葬儀を何処で終えたかも、お墓もわからずじまい。
知り合い女性は、忙しさに紛れて訪ねなかった自分を、悔やんだと言う。

悔やむのは、私たちも同じだ。
彼女とは20年来の付き合いだけど、彼女から言われぬ限り、身内のことを根掘り葉掘り聞くのは
失礼だと思っていた。なぜもっと深く聞かなかったのだろう。
最後に会ったのはもう3年も前になる
その時も、会う約束の数日前に怪我をした私のところまではるばる来てくれたのに。

毎年お正月には、恒例になった彼女からの電話が入り、1時間以上おしゃべりをした。
去年、あの6月のことで悲嘆にくれていた時、7月に電話をくれ、「大丈夫?」と言葉を掛けてくれた。
最後に話したのは、今年のお正月。「今年こそ会おうね。」と、切ったまま、会えずにいた。
いつも元気でいてくれたからって、彼女の年齢を考えればもっと気遣えたはずなのに・・。

その夜は別の友人たちにも知らせ、信じられないまま彼女とのことを思い出していた。
彼女はご主人を早くに亡くしお子さんを持たなかったが、代わりに沢山の猫を助け
長い一人暮らしを「猫のお陰で寂しいなどと思ったことも無い」と笑っていた。
猫のお陰で元気でいると。

本と音楽が好きで、いつも何かに夢中だった。
彼女がマイケルに夢中だったころ、ファンクラブの会報を介して私たちと知り合った。
その後、元D・パープルのリッチー・ブラックモアが好きだった時期、私にも彼のバンド
「レインボウ」のテープをくれて、コンサートに行ったという話も聴かされた(笑)

その後も興味の対象が次々に移り、何と、あのメタリカも若い人に混じって一人観にいったという。
近くに住むその知り合い女性とは、一緒にスラヴァ、米良ヨシカズさんも聴きに行ったらしい。
その後、その女性共々、韓流にハマり、最後までヨン様繋がりで楽しんでいたという。
年齢を感じさせないパワーある人だったが、
他人に迷惑を掛けることを嫌い、数年前の心臓の手術も、全てを終えてから
退院後に話してくれた。

眠りに付くまでの時間、読書するのが日課だった彼女のお気に入りは
佐藤愛子さんと、藤沢周平。
佐藤さんには本好きの別の友人と一緒に講演に出掛け、会ってきたとも聴いた。
92年のDangerousツアーを観る為に東京に同行した時も、同室で遅くまで
マイケルの部屋を見上げる私たちを尻目に、彼女は一人静かに読書していた。

かと思えばアメリカドラマ「フルハウス」が好きだったり、時代劇を好み、漫画も読んだ。
「ねえ、くるねこ知ってる?」と聴かれて、大喜びで盛り上がったのも、まだ記憶に新しい。
マイケルという共通項を離れても、ずっと友達だった。
「目差せ○○さん!」が、ずっと年下の友人である私たちの合言葉だった。


彼女の唯一の心残りは、「遺した猫たち」だったろう。
でも誰も、猫たちがどうなったか、身内の人の連絡先もわからず知る術がなかった。
一晩中そのことを考えていた私は、翌日、一人で彼女の家に行ってみようと思い立った。
彼女がいつも「狭い所だけど、遊びに来て」と言ってくれていたのに、一度も機会を得ず果たさなかった約束を
こんな形で実現するとは思ってもみなかったけれど。

家を出て、JRを乗り継ぎ数時間後、やっとたどり着いたその場所に、
いつも彼女に見せてもらっていた写真の猫ちゃんたちの姿は無く、
ご近所の方に訊くと「今朝まで元気だった○○さんの飼い猫が
この先の道で、車にはねられて死んでてねぇ」と教えてくれた。

その場所に駆けつけると、写真で見たことのないサビ柄の猫が横たわり、息絶えていた。
この子だけが、彼女が消えてから毎日うろうろと出歩き、まるで彼女を捜し歩いているようだったという。
もしかしてこの子が、お正月の電話で話してくれた「新しく拾った仔猫」だったのかもしれない。
既に硬直したその身体に触れてみた時、ふと彼女がこの子を心配して連れて行ったんだと思えて
そこで初めて私は、涙が溢れるのを抑えられなくなった。

彼女の他の猫の行方は知れず、どうなったかも、付き合いの少なかった彼女のことにご近所さんは
関心はないらしく、何もわからなかった。二日前に親戚の人が片付けに来られたというので
もしかしたら、その時にかそれ以前に連れて行かれたか処分されたか・・。
今となっては、それを確かめることもできない。

或いは家から出され、その辺にまだいるかもしれないと思ったので、小一時間ほど探して歩いたけれども
そのあたり一帯には、不思議なことに野良猫一匹たりとも見かけず・・。
ご近所の方に協力してもらい、家の前のあぜ道を挟んだ田んぼの跡地らしき場所を選んで
猫を埋葬することにしてもらった。
彼女の愛した猫。彼女を慕った猫に「○○さんと安らかにね」と言葉をかけた。
これだけのために、ここに引き寄せられるように私は来たのかもしれない。
そんな気がした。

彼女の住んだ町を離れ、田園の美しい秋の景色を眺めながら
「こんな遠くから、いつも会いに来てくれていたんだ」と、
訪ねて行って初めて実感することができた鈍感な私。

家に帰り着き、他の友人たちに簡単に報告した。
友人たちは「ありがとう。○○さん、喜んでるよ」とねぎらってくれたけれど、
私の胸の中には、最後まで彼女の役に立つことなど何も出来なかったという、
切ない気持ちが残った。

けれど「私たちが自分を責めてたら、○○さん悲しむよ」と言う友人の言葉にも頷けるし
彼女自身の人生が、寂しいものだったとは思いたくない。
彼女は精一杯生きて、猫を愛し、人生を楽しんだ。
私たちが羨むほどに。

「あっぱれだったね」と語る友人の言葉どおり、
その死に際まで彼女らしく、潔かった。

見事な生き方だったね。○○さん。
またいつか会おうね!

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6 コメント

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ご冥福をお祈りします。 (みなあん)
2010-11-08 00:25:17
そのかたの人生の、なんと瑞々しく潔かったことでしょう。
猫好きでお子様がいらっしゃらないなど、そのかたの境遇に
未来の自分を重ねてしまって、お会いしたことも無いのに涙が出ます。
「レインボウ」がお好きだったとのこと、私も高校生のときに大好きだったので
より一層親近感が沸いてきます。
すい臓がんは見つけにくく手遅れになり安いと聞きますが、
年齢的にも身辺整理が大変だったのではないでしょうか。
亡くなった猫ちゃんのこと、とても偶然とは思えませんね。
きっとwildroseさんに、託されたのですね。
年寄りに「今度」はない、と義母もよく言いますが、より切実に感じます。
色々な意味で、目標にさせていただきたい人生、そして旅立ちですね。
そのかたの魂が安らかでありますよう、そして虹の橋の袂で
ご主人や猫ちゃんたちと無事に再会できますようお祈りしています。
そしてwildroseさん、お疲れと思いますので体調を崩されませんように。
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ご冥福 お祈りします。 (森おばさん)
2010-11-08 10:41:13
数日前 yukoedenさんのご実家の中津という所に行かれたと書かれていたのでも すぐに 以前wildroseさんが話されていたマイケルファンの80代のお友達が浮かび「もしや・・」と悪い予感がしていました。私には残念ですが80代のお友達はいないので彼女の事を聞いた時 何て素敵なんだろう!と強く印象に残っていました。
心からご冥福をお祈りします。
そして心優しいwildroseさんのご心労を思い 少しずつ 悲しみが癒されるようにと思います。
私も以前に 不意に友人を亡くした経験があります。いつでも会えるから・・と多分お互い思っていたし 連絡が取れなくても
きっと元気でいるから忙しいのだとお互い思っていました。お別れがなかなか事実と思えず 同じように過去の彼女の輪郭をなぞるように記憶をたどり 顔をしっかり思い出そうと常に頭の中で考えていました。
そして・・何でもっと思いやれなかったのかと後悔もしました。お別れから何年かたちますが 彼女に恥かしくない生き方をしよう。と今も強く思っています。(結果は不安ですけど)時は経ちますが・・心の中に残された記憶は消えません。だから・・体調など崩されないように・・
猫ちゃんの事 訪ねてくれた事 木々の色づくいい季節・・きっと見ていてくれたと 喜んでくれたと思います。
返信する
有難うございます (wildrose)
2010-11-08 10:45:26
みなあんさんが仰るように、亡くなった猫ちゃんのことは
私も偶然とは思えなかったです。

彼女が亡くなったのが2週間前だと聞いて、
以前「猫が食べずに生きられるのは2週間くらい」と聞いたことがあり
もし猫たちが取り残されているなら「今すぐ行けば間に合うかも」と
あとさきのことは何も考えず、とりあえずフードと食器代わりのものを2つ持って
家を出ました。

みなあんさんも、レインボウがお好きだったんですね!
共通点が多くて、こちらにみなあんさんが来て下さるようになったのも
ますます偶然ではないように思えます・・。
最後まで頭の回転も速く、好奇心旺盛でした。
そこも同じですね!
でも、みなあんさんには素敵なご主人がおられますから☆

すい臓がんは・・・そうらしいですね。
直前まで彼女自身も知らなかったのかもしれません。
3年前に会った時の日記を読み返すと、彼女の口からも
「次は無いかも」という言葉が出たことが書いてあり、
そのとおりになってしまったことに愕然としています。

ですが、私は彼女が人生を楽しんだことが何よりの慰めでした。
彼女が「同志」と呼んだご主人と、生涯愛した全ての猫たちに
虹の橋の袂で再会できたと、私も信じています。

みなあんさん、彼女のために涙を流してくださって有難う!
嬉しかったです☆
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Unknown (wildrose)
2010-11-08 11:06:23
森おばさん様

中津にいる彼女のことを、憶えていてくださって有難うございます。

お友達、早くに亡くなられたんですね・・。
親しくしていた友人を亡くすのはとても悲しいし、後悔することばかりですが、
>彼女に恥かしくない生き方をしよう
と、私も思いました。

そして、私たちがこれから折に触れ思い出すことが
友が「生きた証」になるのかもしれませんね。

だから敢えて、後悔よりもこれからを見ていて欲しいと。
(私も多分、彼女と同じようにマイペースですが;)

家に帰り着いて真っ先に私がしたことは、
猫の福太郎をぎゅうぅって抱きしめたことでした(笑)

森おばさん様、いつもお忙しいのに温かい言葉を有難う☆
森おばさん様こそ、大事なお子さんたちのためにも
ご自分のお身体にはくれぐれも気を使われますよう☆
返信する
Unknown (Maria)
2010-11-09 22:25:57
wildroseさま
「会うが別れの始め」と言いますが
素敵な出会いと お付き合い程 お別れは悲しいものですね
哀しく、寂しい程にその方との素敵な時間を持てたということでもあるのでしょう
ネコちゃんの死に立ち会うだけでも
イエ それこそ立派に○○さんのお役にたてたのだと思います
動物と人間の絆…不思議な縁を感じます
○○さんもキットwildroseさんが遠路尋ねて下さった事
嬉しく思っていらっしゃるに違いありません

巡る季節 変化の多い天候
私も軽い風邪模様です
wildroseさんもどうぞお気をつけて下さいね
返信する
有難うございます☆ (wildrose)
2010-11-10 14:00:16
今思えば、彼女に対して敬語も使わず対等に接することができたのも
その気取りの無い人柄のお陰だったんだな・・と気付く私です。

他の友人たちとも、それぞれ共通の話題を持つ人でしたが
私とはいつも猫の話で楽しんでいたので、
私にしてみれば、猫ちゃんのことだけが彼女の心残りだと思えたのでしょうね。

全ての猫ちゃんのことに手を尽くせていないにも拘らず
あの子だけでも私の目の前で埋葬できたことは、
仰るように偶然か必然なのか、不思議な縁のようなものを感じました・・。

一日であっという間に変わってしまう気候に
付いていくだけでやっとですね!
風邪、私の周りでも流行っています・・。
Mariaさんも、軽いうちに早く治りますように。
温かくしてお過ごしくださいね☆
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