今日の毎日新聞夕刊に書評が載りました。(左)
巨泉さんは 常々 ”You can't have everything” (すべてを持つことはできない)と 仰っていたそうです。
評にはこうありました。
「全てを手に入れたように見える父だが、実は同じに全てを持っていられたわけではない」
と見抜く目に、娘ならではの厳しさが漂う。
昭和が産み出した怪物の様だった 大橋巨泉 が 4才で別れた娘の目から描かれています。
娘の大橋美加さんは 6年半師事している 私のジャズヴォーカルの先生です。
本にも書かれていますが 嘘のない実直なお人柄で レッスンは非常に厳しいのですが 愛あっての事と 生徒は皆、納得しています。
レッスンの合間合間とかによく 「私はファザーコンプレックス」 と仰っているのですが。
どうしてどうして。
書評にもあるように 大変クールな目で 父親を(母親も)見ておられます。
巨泉という人は「自分がルール」的な傍若無人なキャラが際立ちますが 実は大変繊細で 娘たちには生涯、棄てたという負い目を抱いていた。
元妻のマーサ三宅にばったり出会うことがあったら 後ずさりしていた。
巨泉さんは 母親が 53才で(子宮がんで)亡くなったからか 本人も認めるマザコンで 子供には興味がなかった。
(結婚された時、まだ22才だったからかも知れませんが)
美加さんは自身の結婚・出産を機に 父親との距離を縮めようと努力されます。
それは 経験しなかった父親を自分の子供たちを通して感じたかったからのようです。
そして 気付かれるのです。
巨泉さんは進歩的な人と 世間では思われていますが、 実は超の付く封建的考えの持ち主だったと。
美加さんは何時も継母と呼んでいる 後妻としての筋を貫かれた寿々子さんを立てておられます。
寿々子さんに遠慮しながら 不器用と思える誠実さで 父親に対するわだかまりを取り払おうと努力されます。
本当に巨泉さんにとって最晩年になってしまいましたが 本の表紙にもあるように 舞台でデュエットもされました。(2013年)
闘病されている癌の話ばかりでしたが(巨泉さんの家系は癌に罹患する人が多いらしい)
2015年の阿佐ヶ谷ジャズストリートでは 親娘の対談もありました。
感情に走らない前向きな娘心が胸に迫ります。
6月25日初版 双葉社
by 風呼