窓の向こうの海

素直で純心なきみに、憧れ手を伸ばしていた。いつのまにか、掴まれていた。もう離さないよって、きみが太陽みたいに笑った。

本当に自分の人生を生きることを考え始めた人たちへ / 銀色夏生

2016-01-07 20:49:44 | 読書



銀色夏生さんの本です。



個人的に、銀色さんは以前から気になっていて、でもきちんと購入するのも読むのも、今回が初めてだった。(もしかすると昔、少し読んだことはあるかもしれない、そんな気はする)


ちょうど一年前くらいに、旅先で買ったもの。
(本屋さんにふらりと立ち寄った時に、気まぐれでビビッときた本をどんどん買っていくので、わたしにはこういう時差がよく起こる。つまり積み本)


何冊かあり、迷ったけれど、タイトルがその時期の自分の心境にぴったり来て、選んだ記憶がある。
本を読むのは基本的にはやい方なのだけれど、この本は時間がかかった。
リアルに繰り広げられた会話がそのまま、使われているからだろうか・・
内容も、人生、生き方についてで、偶然ではあるけれど震災のことも織り交ぜられていて、いろいろと考えさせられた。
そういうわけでとても、さっと読み通せるようなものではなく、じっくりと時間をかけて・・3ヶ月くらいで、小分けにして、読み終えた。こういう読み方をしたのはとても、久しぶりで。

わたしは普段、虚構〔フィクション〕の物語を読むことが多く、現実に即した〔ノンフィクション〕の物語を読むときのほうがエネルギーを要するのだなあ、と改めて感じる。
虚構の世界の中にはすぐに没入できるけれど、現実の世界や人物に寄り添うのは時間がかかる。そういうことなのだと思った。想像の余地があるか、ないか。またその種類の違いなど。



最初はずいぶん唐突で、読みづらいなあと感じていたけれど、読んでいく過程でそれは当然のことなのだと知る。
まさに〔行き当たりばったり〕で作られた、特殊な本だったのだ。
読んでいく過程がそのまま、一冊の本ができる過程でもあった。そんな風に感じた。


感じたことはたくさんあるはずなのに、うまく言葉にまとまらない。

とりあえず印象に残った箇所を引用してみる。


「――もし、こんなはずじゃないのに、って思うところがあるとすれば、状況ではなくて、曖昧になっているヴィジョンをクリアにすることが大事なんじゃないかなって思います。」(P69)


「――全部、自己責任で、自分で勉強していくってスタイル。ニーズが具体的になればなるほど、望む現実を自分に引き寄せやすい」(P70)


「箱庭療法――自分の取り巻く環境を世界そのものとして見られるような感覚、自分の日常が世界の縮図であるという感覚に変わる」(P102)


「セルフマネージメントがこの世をうまく泳いでいくキーになる」(P144)


「どっかで笑って受け流すところがないと、エネルギーの奪い合いに巻き込まれてしまう。」
「――嫌なものを人に出した人って、それを相手が受けなければ、その人に返っていくと思うんだよね、その嫌なものって。出した人に。嫌な気持ちが去らないと思うんだよね。もやもやしてるんじゃないかな。」(P167)


「すごく気が合っていた友だちにある時、急に違和感を覚え、どんどん気持ちが離れていくことって人生には時々ある。そういう時は自分は違う流れに入ったんだなと思う。目的地の違う列車に乗り換えたんだなと。残念だけれど仕方がない。抵抗を受けたりもするけれど。
変化と抵抗。変化することに人は寛容ではない。特に、好きな人が変化して自分から離れていくように思える時は。でもやっぱり人は、ネガティブだと感じるものではなく、自分がポジティブだと感じられる人やものと、つきあった方がいいと思う。」(P209)


「相思相愛。見てる自分と見られてる自分が。それがそうかな、日本語で言うと。だから寄り添うが近いのかな。――どっちがどっちに服従しているわけでもない。どっちものことをおもしろがってる。自分のことを見てる自分を面白がりながら、遊んでる自分と、予想外のことをしだしたりすることも含めて、やってる自分とか生きてる自分を愛を持って見てる自分、っていうか。その両方がある時って僕、すごい楽しいかな。――すごい楽しい。充実してる、って感じがする。発揮してるって感じもあるし。ああ、これが俺のやりたいことなんだなあって思う。そういう自分が立ち現れた時。」(P232)



「だからやっぱり、その手前には自分との会話を育てるっていうか、それってすごい必要かなって思う。自分の声を聞く時間を持つ。」(P233)


「アートっていうのは、生きるってことがアートだと思ってるから、別にアーティストじゃなくて、他の職業でも私は芸術だと思ってるから、生きてることは芸術で、それがすべてであるべきだと思うし。そういう人はすごく尊敬する。だれもその人を見てなくても。」(P242)



「書くっていうことに希望がまた湧いたな。書き続けることによって、同じことの繰り返しになってく人もいるだろうし、より難しくなっていく人もいれば、整理されていく人もいると思うんですよね。整理されていくっていう方向性があるんだなって思ったし。ちょっと簡単に、思えてきた。」
「――文字はあんまり関係ないんだよね。字面の意味はあんまり関係ない。そこに、言葉の上にエネルギーをのせていってるわけだからさ、なんでもいいんだよ、本当は。そのエネルギーを人は受け取ってるわけでさ。」(P254)


〔あとがきより〕

「私の経験で言うと、これは大変だ、大変なことになった!と大打撃を受けたあとは必ず、大きく人生が好転します。すぐにはそう思えないけど、あとになって思うと。それ以前にはできなかったことができるようになったり、何かから解放されたり。だから判断というのは、どの段階でも時期尚早です。出来事の価値や意味は生きている限り変化し続けるから。いや、変化させられるから。」


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ざっとおおまかには、こんな感じだろうか。


もちろんすべてではなけれど、共感するところやハッとさせられる文章に出会って、自分自身の(特にここ二年間)人生について、思いを馳せることができた。


考え方や物事の捉え方。世界の見え方。生き方。
わたしにとっての「本当の自分の人生」とはなんだろうとか。
そこに向かい始めている時期なんじゃないか、とか。


また、世界の捉え方や、人とどう関わるか、というテーマは特に、共感する部分が多かったように思う。


自分と他人の境界線。
個人で生きているわけではなく、もっと大きな流れの中のひとつというスタンスで存在していること。
他人の怒りの裏側には哀しみがあるから、怒りを恐れることはない。その感情を理解すること。
暴力に暴力で対抗しない。非服従。

生きていくうえで同じ価値観を持ち続けることは難しいから、ずっと一緒にいられなくても仕方がない。
過剰に哀しみや怒りに感情移入しすぎない。(他人の感情に巻き込まれないということ)

これらは、生きていくうえの立ち位置、在り方としても、とりわけ重要なものに思えた。



そういう意味ではすごく、今読むべきタイミングだったんだろうなあと思ったし、自分の思考を裏付けたり、深めたりする上ではすごく、役に立つ本だった。


今は読み返している最中で、今度はすらすらと内容が頭に入ってきて気持ちよく読めている。


また何か思いついたことがあれば付け足して書こうと思う。



新しい発見というよりは、自分の生き方を見つめ直す、定義し直す機会をくれた、そんな一冊だった。







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