連載中の記事,『チルトホイールマウス サンワサプライ「グランツHS」 試用レポート』の最初の記事で説明したように,キーボードとマウス選びは非常に難しい.特に,効率の良い,素早い,正確なキー入力が求められる,キーボード入力を生業としているユーザーにとっては,キーボード選びは死活問題でもある.従って,そのようなユーザーの場合,職人がその道具を選ぶように,慎重に自分にあったキーボードを選びたいところだ.ところが,実際に販売されているキーボード製品は多種多様であり,おそらくマウス以上にその選択は難しいと思われる.
キーボードを購入するに当たって,注目したいスペックは…
私の場合,テンキーは使用しないので,いつも購入対象はコンパクト・キーボードなのだが,未だに「これだ!」という製品に出会えていない.おそらく,その理由は,キーボード購入の予算が取れないためだろう.予算さえあれば,定番であるHKKのLite2日本語配列モデルでほぼ決まりだと思われるが,なかなか手が出ない.他社の低価格コンパクトキーボードの場合,ほとんどがメンブレンスイッチで,ストロークの非常に短い製品が多い.しかも,ノートパソコンと同様のフラットなものが多く,クリック感に乏しいため,高速な入力が難しい.
自分の理想のコンパクトキーボードのイメージは,メカニカルスイッチを採用し,フルキーボード内の使用頻度の低いキーをできるだけ省略した,キーピッチがフルキーボードと同等の製品だ.定番であるHKKのLite2日本語配列モデルは,メンブレンスイッチではあるが,ほぼこの要件を満たしている.問題は値段だ…
ところがつい先日,ドスパラ静岡店の週末セールに,Strong Man製SMK-90JPU(PRO)という,メカニカル・コンパクトキーボードが,2,970円で売りに出された.これは安いと思い,早速購入し,使用してみた.今回はその試用レポートだ.
SMK-90JPU(PRO)の詳しいスペックについては,上記リンクを見て欲しいが,基本的にはメカニカルスイッチを採用した,USB接続の日本語90キーボードだ.アダプタが付属しているので,PS2接続も可能.ちなみにUSB HUBは内蔵されていない.キーピッチは,ほぼフルキーボードと同じで,ENTERキーも2段を使用した大きなもので,押しやすい.打鍵音は,まさにメカニカルといった感じで「カチャカチャ」と大音量.この音量だと,静かなオフィスでは使用不可能だが,強い打鍵感(クリック感)と相まって,そのキーが打ち込めたかどうかが,確実にユーザーへフィードバックされる.ストローク長も長めで,深くキーを押すことが要求されるが,キーはそれほど重くない.また鉄板が入っているようで,キーボードの重量が,コンパクト型にしては1.1kgと重い.しかし,この重みのおかげで,他の軽めのコンパクトキーボードよりも,キーボード自体が打鍵に対して安定しているように思う.上記リンクのスペック表に,わざわざ重量を記しているのは,この重さのメリットを主張したいためだろう.
キー配置やキー省略についても,一部を除いて,それほどのイレギュラーはない.F11,F12キーが,それぞれF1,F2キーに割り当てられ,Fnキーと併用する必要があるが,使用上問題はないだろう.カーソルキーは,他の一部コンパクトキーボード(例えばHKKのLite2日本語配列モデル)に見られるように,右下に1段下げられて配置されておらず,他のキーと一緒に並んでいる.このため,カーソルキーの位置が,ブラインド・タッチで判定しづらいかもしれない.
キー配列の中で他のコンパクトキーボードに見られない,SMK-90JPU(PRO)オリジナルのキー配置としては,ENTERキーの右横の3つのボリューム調節キーと,BSキーの右横のスリープキーがあげられる.通常のコンパクトキーボードでは,このENTERキーの横に,PageUpあるいはPageDownキーといった,フルキーボードにおける,テンキーと通常キーの間に挟まれたキー群を配置するのが一般的だ.SMK-90JPU(PRO)では,これらのキー群は,こちらもコンパクトキーボードでしばしば採用されている,カーソルキーとFnキーの併用となっている.
この特殊なキー配置で特に問題になりそうなのは,スリープキーだ.私の場合,BSキーを押し間違えて,スリープキーを押してしまう事が何度かあった.但しスリープには突入せず,終了オプションが表示されるだけだったの,キャンセルして,事なきを得ている.このスリープキーについては,Fn併用キーとすべきではないだろうか? また,私自身は滅多に使用しないWindowsキーと右メニューキーも本製品には配置されているが,できたらFILCOのFKB89Jのように,それらは完全に省略し,他の使用頻度の高いキーを,Fn併用キーとせずに配置して欲しかった.ちなみに余談ではあるが,このFKB89Jでは,HKKのLite2日本語配列モデルと同様に,右CTRLキーとCapsLockキーが入れ替わっており,CTRLキーを多用するプログラマ等のユーザーには,使いやすい配置を採っている.
もう一つ難点を言えば,キーボードが厚いことだ.この厚さだと,スタンドを立てても,手のひらを付けたまま打つのは少々難しい.基本的には手のひらを浮かせて,打鍵するタイプのキーボードであることは間違いない.最近は,打鍵時の手首の角度をできるだけ少なくする,薄型キーボード(例えば,ゼロディグリーチルト)が流行っているようだ.この薄型キーボードの場合,手首の上げ角を抑えることによって,パームレストに手のひらを付けながら打つことができ,結果的に疲労や手首の故障を少なくすることができる.ただし,本製品のようにストロークの長いメカニカルスイッチを採用したキーにすれば,必然的にキーボードは厚くならざるを得ない.従って,この厚さについては,やむを得ないようにも思う.
ということで,やはり本製品も私にとって理想のキーボードではないものの,コストパフォーマンスの良い,非常に満足度の高いキーボードで,おそらくいままで使用してきたキーボードの中で言うのであればベストだろう.今のところ,タイピングは以前よりも遙かに快適だ.ただこのカチャカチャ音とクリック感に慣れてしまうと,他のメンブレン・キーボードが物足りなく感じられるてしまうのは,やむを得ないといったところだろうか…
キーボード関連参考リンク:
キーボードを購入するに当たって,注目したいスペックは…
- キーボードの大きさ: フルキーボード,コンパクト
- PCとの接続方法: 無線,USB,PS2,USB←→PS2アダプタありか
- ケーブル: ストレート,カール,無線,ケーブルをキーボード背面に埋め込めるか
- キー数: 省略されているキーがあるか,テンキーはあるか
- 言語: 日本語,英語,その他外国語
- キー配列: 特に漢字キー,Ctrlキー,Fnキー,カーソルキーの位置
- キーの大きさ: 特にENTERキー,BSキー,ファンクションキー
- キースイッチ: メンブレン,メカニカル,静電容量
- スイッチメーカー: Alps,Cherry
- キー形状: フラット,ステップ,ステップ・スカルプチャー,シリンドリカル・ステップ・スカルプチャー
- FとJキーの示し方: キー形状,ディンプル
- アクチュエータ: バネ(板,コイル),ラバードーム
- キーストローク安定化機構: パンタグラフ,その他のメカ
- キーストローク長: 深め,浅い
- キーピッチ: 狭い,広い
- キーの重さ: 重い,軽い
- キートップ刻印: レーザー,シルク,摩耗に強いか?
- キートップ表面: 指の滑りやすいさ
- キーボードの傾き: ゼロディグリーチルトか
- キーボードの厚さ: 薄い,厚い
- パームレスト: 広い,狭い,なし
- シャーシ材質: 樹脂製,金属製
- キーボードの重量: 鋼板入り,基盤のみ
- 打鍵感: タクタイル,クリック,ノンクリック(リニア)
- 打鍵音: 静音,騒音(メカニカル,疑似メカニカル)
- ホットキー: 特に電源キー
- スタンド: あり,なし,折れやすくないか?
- USB HUBの数: USBキーボードの場合のみ
- 付属ユーティリティ: ワンタッチキーの設定用他
- ポインティングデバイス: タッチパッド,その他
- 配色やデザイン
私の場合,テンキーは使用しないので,いつも購入対象はコンパクト・キーボードなのだが,未だに「これだ!」という製品に出会えていない.おそらく,その理由は,キーボード購入の予算が取れないためだろう.予算さえあれば,定番であるHKKのLite2日本語配列モデルでほぼ決まりだと思われるが,なかなか手が出ない.他社の低価格コンパクトキーボードの場合,ほとんどがメンブレンスイッチで,ストロークの非常に短い製品が多い.しかも,ノートパソコンと同様のフラットなものが多く,クリック感に乏しいため,高速な入力が難しい.
自分の理想のコンパクトキーボードのイメージは,メカニカルスイッチを採用し,フルキーボード内の使用頻度の低いキーをできるだけ省略した,キーピッチがフルキーボードと同等の製品だ.定番であるHKKのLite2日本語配列モデルは,メンブレンスイッチではあるが,ほぼこの要件を満たしている.問題は値段だ…
ところがつい先日,ドスパラ静岡店の週末セールに,Strong Man製SMK-90JPU(PRO)という,メカニカル・コンパクトキーボードが,2,970円で売りに出された.これは安いと思い,早速購入し,使用してみた.今回はその試用レポートだ.
SMK-90JPU(PRO)の詳しいスペックについては,上記リンクを見て欲しいが,基本的にはメカニカルスイッチを採用した,USB接続の日本語90キーボードだ.アダプタが付属しているので,PS2接続も可能.ちなみにUSB HUBは内蔵されていない.キーピッチは,ほぼフルキーボードと同じで,ENTERキーも2段を使用した大きなもので,押しやすい.打鍵音は,まさにメカニカルといった感じで「カチャカチャ」と大音量.この音量だと,静かなオフィスでは使用不可能だが,強い打鍵感(クリック感)と相まって,そのキーが打ち込めたかどうかが,確実にユーザーへフィードバックされる.ストローク長も長めで,深くキーを押すことが要求されるが,キーはそれほど重くない.また鉄板が入っているようで,キーボードの重量が,コンパクト型にしては1.1kgと重い.しかし,この重みのおかげで,他の軽めのコンパクトキーボードよりも,キーボード自体が打鍵に対して安定しているように思う.上記リンクのスペック表に,わざわざ重量を記しているのは,この重さのメリットを主張したいためだろう.
キー配置やキー省略についても,一部を除いて,それほどのイレギュラーはない.F11,F12キーが,それぞれF1,F2キーに割り当てられ,Fnキーと併用する必要があるが,使用上問題はないだろう.カーソルキーは,他の一部コンパクトキーボード(例えばHKKのLite2日本語配列モデル)に見られるように,右下に1段下げられて配置されておらず,他のキーと一緒に並んでいる.このため,カーソルキーの位置が,ブラインド・タッチで判定しづらいかもしれない.
キー配列の中で他のコンパクトキーボードに見られない,SMK-90JPU(PRO)オリジナルのキー配置としては,ENTERキーの右横の3つのボリューム調節キーと,BSキーの右横のスリープキーがあげられる.通常のコンパクトキーボードでは,このENTERキーの横に,PageUpあるいはPageDownキーといった,フルキーボードにおける,テンキーと通常キーの間に挟まれたキー群を配置するのが一般的だ.SMK-90JPU(PRO)では,これらのキー群は,こちらもコンパクトキーボードでしばしば採用されている,カーソルキーとFnキーの併用となっている.
この特殊なキー配置で特に問題になりそうなのは,スリープキーだ.私の場合,BSキーを押し間違えて,スリープキーを押してしまう事が何度かあった.但しスリープには突入せず,終了オプションが表示されるだけだったの,キャンセルして,事なきを得ている.このスリープキーについては,Fn併用キーとすべきではないだろうか? また,私自身は滅多に使用しないWindowsキーと右メニューキーも本製品には配置されているが,できたらFILCOのFKB89Jのように,それらは完全に省略し,他の使用頻度の高いキーを,Fn併用キーとせずに配置して欲しかった.ちなみに余談ではあるが,このFKB89Jでは,HKKのLite2日本語配列モデルと同様に,右CTRLキーとCapsLockキーが入れ替わっており,CTRLキーを多用するプログラマ等のユーザーには,使いやすい配置を採っている.
もう一つ難点を言えば,キーボードが厚いことだ.この厚さだと,スタンドを立てても,手のひらを付けたまま打つのは少々難しい.基本的には手のひらを浮かせて,打鍵するタイプのキーボードであることは間違いない.最近は,打鍵時の手首の角度をできるだけ少なくする,薄型キーボード(例えば,ゼロディグリーチルト)が流行っているようだ.この薄型キーボードの場合,手首の上げ角を抑えることによって,パームレストに手のひらを付けながら打つことができ,結果的に疲労や手首の故障を少なくすることができる.ただし,本製品のようにストロークの長いメカニカルスイッチを採用したキーにすれば,必然的にキーボードは厚くならざるを得ない.従って,この厚さについては,やむを得ないようにも思う.
ということで,やはり本製品も私にとって理想のキーボードではないものの,コストパフォーマンスの良い,非常に満足度の高いキーボードで,おそらくいままで使用してきたキーボードの中で言うのであればベストだろう.今のところ,タイピングは以前よりも遙かに快適だ.ただこのカチャカチャ音とクリック感に慣れてしまうと,他のメンブレン・キーボードが物足りなく感じられるてしまうのは,やむを得ないといったところだろうか…
キーボード関連参考リンク: