日々記

ひびき

妊婦さん

2012-02-19 | Weblog
昔の職場の人と遅い新年会をやった。
「もう二月だけど」とみんなで笑ったが、
ともかく今年もよろしくね、ということになった。
お腹の大きい女の子がいて、次は三人目だから
「もう慣れっこやろ出産も」と云うと
「そうでもないけど」みたいなことを云った。
それにしても妊婦はすごい。
お腹の中に人間を宿すとはどんなもんなんだろう。
それだけで神々しく、御利益があるふうに見えてくる。
予約先の店まで街を歩いたが積雪で足元が覚束ないのでひやひやした。
こんなところで転倒でもしたら大変なことになる。
雪は辺りの景色を霞めるくらいも降っていた。
転ばないだろうかと、そんなことばかり考えていた。
会食が終わって帰り際、その妊婦の子は「気をつけてくださいね」と云った。
少し酔った自分をみてそんなことを云ったんだろう。
こういうところが男は妊娠できないとこなんだろうと思った。
家の近くまでくると、除雪車が通ったあとが凍ってアイスバーンになっていた。
不意に足を滑らせて思い切り尻もちをついてしまった。
自分は妊婦でもないくせに、思わずお腹に手を当てた。

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遠い恋心

2012-02-14 | Weblog
会社で世話になっているお父さんが、
「昔、好きな子がいて、その子がクシャミばっかりするんで
風邪を貰おうと思ってその子の前で息を吸ったりなんかした」と昔話を云った。
そしたらそのうち鼻汁が出てきて、ほんとに風邪が伝染したそうだ。
しばらくすると発熱して顔が真っ赤になったが、
お父さんは、それが嬉しくて嬉しくて仕方がなかったそうだ。
また、その子が現れる時間に、見計らってその場所へ行き
ほんの少しでもきっかけを作ろうと時計をチラチラ見たそうだ。
もう五十年くらい前の話だけども、とお父さんは笑っていたが、
年甲斐も忘れてそんなことをする中年は幾らでもいる。
自分がそんなだったから、人のはよう見えると云った。
「男っていうのは健気なもんなんやな」
「女って面倒臭いですね」
「そういうこと」
その女の子からチョコレートなんか貰いましたか、と訊いたら
「わしらのところでは、そんな習慣はなかったな」と笑った。
今日は奥さんや娘さんにチョコレートを貰っているだろうが、
こんな日に、そんな思い出話をするんなんて、粋な爺さんだなと思った。
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忘れ得ぬ風景

2012-02-11 | Weblog
国、時代は不明だが湖面に拝殿が浮かんでいる。
能舞台のようでもあるし、お寺の本堂のようでもある。
自分は小舟に乗ってその周囲を遊覧している。
かつてそんな夢を見て、その景色が未だ鮮明に記憶から離れない。
自分は、時々そんなおかしな夢を見る。
夢の一部を録画出来ないだろうか、また写真に写せないだろうかと思うが
そんなことは無理に決まっているので、ラフなスケッチで済ませてしまっている。
実際に、写真に撮るように描けないものかと思い起ち
面識のあった日本画の先生を訪ねて教えて貰うことにした。
「デッサンも何も自分は全くの素人なんです」
「デッサンはあとからついてくるから、ともかく描いてみなさい」
そういわれて新しいドローイングブックに鉛筆を落としてみる。
初めは、自分の好きな風景写真を見本に描いていく。
先生の一言一言が、自分の拙い絵に厚みを与えてくれる。
鉛筆で手が真っ黒になるなんて小中学以来だろうか。
観察するとはこういうことかと、今さらながらに気づかされた。
他の生徒さんの作品を見ると、自分のなんかは手で隠したくなるが
いつの日か、夢で見たあの風景を頭の中から取り出せたらと思っている。
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雪解けの災難

2012-02-05 | Weblog
先日、時々買いに行く和菓子屋が食中毒を出した。
その詳細はよく知らないが、新聞に出るほど騒がれた。
老舗なので、一度くらいの不手際でどうということはないが
それでも頑なに、あそこはもう行かない、という人もいるだろう。
「こういう時こそ、近所の自分らが行ってあげないと」
そんなようなことを言って桜餅を買いに行くと、
二階屋根の瓦から落ちてきた雪の塊が頭に直撃した。
なんだ雪くらいと思うかも知らないが、
存分に水を含んだ雪は氷に近いくらいの固さがある。
恩を仇で返されたような気持もしたが、
とけだした雪の始末まで店を責めるわけにもいかない。
「おれには何の落ち度もないはずだ」
「そいえば前にも、神社で雪が頭に落ちてきたわね。」
「あと一歩早ければお前に当たっていたぞ」
自分の不運に切なくなって、ちょっと恩着せを言ってみた。
カミさんも、大丈夫?と云いながらも満面の笑みがこぼれている。
頭を押さえてみると、まだ鈍い痛みがある。
ちょうどたんこぶが引いていくときのようなあれだ。
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立春

2012-02-04 | Weblog
暦の上ではそういうことになっているが
このところの積雪にはうんざりさせられる。
毎朝、二階窓から車の屋根に積もった雪で具合を測る。
今朝も雪が降っていたが、せっかくの休みなので
ストーヴの前でミルクを飲みながら新聞を読んだ。
外からお隣さんが雪を賺す音が聞こえてきたので
「そろそろはじめるか」と帽子と手袋を用意する。
小一時間、少し重たくなった雪をどかして買い物へ出た。
「もうすぐ誕生日やね。新しいヒートテック買おうか」
「いいよ別に。今ので足りてる」
「あ、じゃあ長靴買ってあげるわ」
長靴ならちょうど欲しいと思っていたので靴屋へ行った。
ちょっと値は張ったが永く履くつもりで好みのを選んだ。
「たい焼きでも食うか」とお礼のつもりで買い食いをして家に帰った。
新しい長靴を履きたくなって、小庭に積もっていた雪を退ける。
シャラの木はみんな葉を落としてシャンと立っているが
枇杷なんかは雪の重みで大きくしなっていた。
葉の雪を退けてやると、勢いよく姿勢を立て直した。
「たいしたもんだな、このしなり方は」
まだ二月になったばかりなのに、春が待ち遠しい。
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