日々記

ひびき

珪藻土塗り④

2009-07-28 | Weblog
「やる気がねぇんならとっととけぇれ。仕事の邪魔だ」
およそこんな内容のことをカミさんに言われた。
せっかくの休日にどうして左官仕事なんかと今でも思ってしまうが、
カミさんは珪藻土塗りが楽しくて仕方がないらしい。
「ああ早く休みにならないかな」なんてことまで言う。
さすがに大口を叩くだけのことはあって左官屋さんも感心するほどの仕上がりだ。
自分はといえば、やればやるほど下手糞になっていく。
建築士の先生が、「やっているうちに普通は上達していく。
ただし、申し訳ないけど向き不向きはある。」と率直に自分の腕前を慰めた。
別に申し訳なく思ってもらわなくったって結構だが、
こうカミさんばっかり誉められちゃ面白くない。
それでいて、今に見てろ、とそんな気も起こらない。
昨今では自分で壁塗りをする夫婦が増えているそうだ。
まかせきりの建て売りよりも自然志向で自分も携わるのが増えているそうだ。
自分の担当は便所が残っている。
便所は、いちばん最後に仕上げるものらしい。
お客さんにしろ、住む人にしろいちばんじっくり壁を見るから、
よほど手馴れたころ合いに作業するのがいいというのだ。
そんな大役を仰せつかってまったくありがたい。
この日、自分は昼飯のあと少し居眠りをした。
普段からそうしているからどこに居たってすぐに眠れる。
昨日は花火大会があって痛飲してしまった。
朝いちばんに叱られたとき、さっさと帰ればよかったと昼寝の前に思った。
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68歳になったら

2009-07-25 | Weblog
先日の皆既日食は世間が騒いだせいか、
そんなに興味のない人も関心を持ったようだ。
ただ、そのために遠征したり高い金を使った人が目立った。
「見れるもんなら見たいけど仕事があるからね」という人も多かった。
自分は、仕事中に空を見上げた。
雲がかかっていても欠けているのが見れた。
自家製の遮光板でもって、みんなかわりばんこに「見せて見せて」と見た。
こんなことで普段、そんなに話もしない人たちが集まるのは悪くない。
しかし世間が騒げば騒ぐほど忘れられるのも遅くない。
次回は、26年後だそうだ。自分は古希の手前だ。
弟が、「自分の居場所で何気なく空を見上げるがいい」
みたいなことを言っていたがその通りだ。
今度は自宅の玄関先で麦酒を片手に空を見上げたい。
そのとき、誰かそばにいてくれたらなとつくづく思う。

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このたび離婚する友人へ

2009-07-24 | Weblog
不謹慎かも知らないが、このたびはおめでとう。
これから、これ以前にも、いろいろ気苦労はあっただろうし
あるだろうけどそんなのは屁こいて雨に流したらいい。
子供のことは、それはそれとして自分なりに内心で思うしかない。
自分も一時いろいろ悩んだけど、髪が薄くなって白髪が増えたくらいで
そんなのどうってことはない。
時が解決するというけれどあれは嘘だ。
時間が経っても薄らいでいかないことはいくらもあるし、
とりあえず酒でも飲んでぼかして過ごしたらいい。
いい人が現れたら何度でも、「お前しかいない」と結婚するのが一番だ。
世の中には一辺の結婚も知らないで鬱屈している人もいるのに、
おれもお前も幸せもんだ。
今後、も一度そんな人が現れたら今度こそは大丈夫だ。
あとは幸せな毎日が待っている。
嘘でもそんなふうに言わないと万が一カミさんがみたら怖いじゃないか。
ともかく、気を揉むのが体にいちばん良くない。
毎日、あの地獄のような二日酔いになるほうがまだマシだ。
近いうちに一度飲もう。
互いに電車を使えばどこかの焼き鳥屋くらいすぐいけるだろう。
不謹慎かも知らないが、ともかく良かったじゃないか。
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珪藻土塗り③

2009-07-20 | Weblog
子供のころ、ひとり遊びに画用紙をあてがわれると退屈しなかった。
三枚もらうと三枚とも描いてしまわなければ気がすまなかった。
ただ、せっかく下書きがうまくいっても塗り絵がうまくいかないと
泣きたくなるくらい落ち込んでその絵をヤケクソにしてしまう癖があった。
今日、自分はクローゼットの壁面塗りを任された。
天井はカミさんが首尾よく済ませていたので
あとは壁面を上手に塗ればそれでよかった。
「自己流でいいから」とカミさんは言ったが、
「どうせやるならきちんとやりたいからな」と左官屋さんの教えを求めた。
まずはコテの持ち方から珪藻土を画板から取る仕方を教わった。
「先生、見本を見せてください。物真似するから」と
左官屋さんのうっとりするようなコテ捌きを見て盗んでやろうと思った。
ところがコテがうまく持てない。
珪藻土を均等に壁に塗りつけることも出来ない。
左右滑らかに動かさなければならないのに一方通行になってしまう。
「自己流でいいから」とカミさんは慰めてくれるが、
その自己流すら出来ない。
「一朝一夕に行かないのは承知だけど、こんなに珪藻土に遊ばれるなんて」
そう、左官屋さんに言うと、コテダコが出来るくらいやらないとな
と言った。「しかし奥さんは根気がある。」と天井を見て頷いた。
この頷きは、たいしたもんだの意味が含まれている。
自分の時は、首を傾げて「貸してごらん」と何度も見本を見せてくれた。
物真似しようにも出来ないのが悔しい。
途中誰も見ていないところで思わずヤケクソに塗りたくってやった。
まるで子供のような仕草で恥しくなった。
それにしても今日という今日はカミさんを見直した。

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珪藻土塗り②

2009-07-19 | Weblog
昨夜は友達とまた夜更けまで歌合戦をやって二日酔いになった。
午前中は古い映画を観て、ぼおっと過ごし午後から仕事に入った。
昨日は石膏ボードの隙間部分をテープで張った。
今日は、マスキングとボードのビスに珪藻土を塗った。
カミさんは足場板に乗って天井の珪藻土塗りに入った。
素人が素人を誉めても仕方ないが仕上がりは悪くなかったように思う。
「おお、なかなかいーんでない。うんうんいい感じ」
そんな独り言が隣の部屋から聞こえてくる。
今日は職人さんが休みなので好きなように出来る。
夜、ラーメンを食いに行ったとき、
「私、左官屋に弟子入りしようかしら」と軽口を言った。
冗談か本気か知らないがやる気があるから余裕もあるようだ。
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珪藻土塗り

2009-07-18 | Weblog
いよいよ今日から壁塗りの下準備にかかった。
左官仕事は左官屋さんに任せればいいのだが、
カミさんはそうはいかない。
自分の手で出来るところはしたいと、
材料から自分で調べて良質の珪藻土を塗ることにした。
現場では親切な左官屋さんが細かい指示をくれる。
自分としてはあんましやる気がないので、
「そんなにうまくいくかね、プロにまかせたらどうだ」というと
「私ひとりでもやるからいい」と言うことを聞かない。
大工さんにも「奥さん、大丈夫かい」といわれたが、
「平気です、やる気で体がウズウズしています」と言った。
仕上がりの良し悪しはこの際関係ない。
やる気を捻じ曲げるようなことは言いたくないから、
黙って付いていくしかない。
大工さんに「うちの親方は頑固だから」と言うと、
「何事も経験だよ、自分の家だから好きなようにしたらいい」と言った。
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夏の旅

2009-07-16 | Weblog
カミさんが会社の人から原付バイクをもらってきた。
今時、こんな景気のいい人がいるのかと思ったが
電話でお礼を言ったら「処分するつもりだったし」と言った。
このごろの自分は、軽トラックか原付バイクがとっても欲しかった。
それが、ぽっと夢が叶ったような気がした。
早速、晩酌も忘れてうろうろ走りまわった。
二十数年ぶりだ。
おお、木の匂いがする。あ、ノウゼンカツラだ。
おお、川の匂いもするぞ。無数の虫が口の中に入ってくる。
いいぞバイク。
よし、おれは今夏旅に出るぞ。
誰も知る人のない町や海を見に行くぞ。
そんなことを妄想するだけで今日の暑さも優しくなってくる。
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抜歯

2009-07-15 | Weblog
この一週間くらい下顎が痛んだので、
以前に抜歯した奥歯の影響かと思って歯医者へ行った。
物を噛むのも、いちいち気になるほど痛みがあった。
噛み合わせがおかしいですかね、と先生に聞くと
「あら、根元が腐ってます。おっきな虫歯」といわれた。
この歯科は初めてだが女医さんで親切だという噂をきいて選んだ。
さすが女の人なのかためらいがない。
レントゲン写真を見て五分とかからないうちに麻酔を終っていた。
「痛かったら、言ってくださいね」というがふさがれた口で声が出せない。
歯医者さんというのは患者の頬の攣り具合や眉間の皺で加減しないのだろうか。
骨が引き裂かれるような音が耳元でしていたが、
ともかくこっちが過剰に怯えるほどには痛くもなかった。
来院して三十分も経たないうちに奥歯をあっさり抜いて行った。
抜歯のあと仕事へ戻ったが暑さでどうにもならい。
ないはずの歯は痛むような気もするし、声まで掠れて疲労してきた。
それにいつまで経っても微量の血が止まらなくて口内が生臭い。
このまま出血多量で死にはしないかと何となく飯だけはしっかり食った。
だんだん自分の歯がなくなっていくのを実感している。
こんなところから老化がはじまるんだと思うと、
やっぱし笑えてくるのは自分だけの変癖だろうか。

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墓参り

2009-07-12 | Weblog
菩提寺でお参りをしていたら、
庫裏のところからお茶でもどうぞと声をかけられた。
「車だから」と遠慮したら、「お酒じゃないから」
みたいなことを婆さんが言った。
自分としては、せまい駐車場しかないから早く出たほうが
次のお参りの車も入れるだろうと気を利かせたつもりだった。
中へどうぞ、と言われたが縁側に腰掛けて「ここでいいよ」と冷茶を飲んだ。
「今日はまだ涼しいから良かった」とこちらがお愛想でいうと、
「ほんと、二三日前なら大変でした」と婆さんが言った。
長居する理由もないので一気にお茶を飲み干して腰を上げると、
カミさんも慌ててお茶を飲み干した。
御供え物の菓子を頂き早々に寺を出て車の中で半紙に包まれた菓子を食べた。
「懐かしいなこれ、昔と全然かわってない」
何十年振りかにその菓子を食べて、ぷっと笑えるほど歳が増えたなあと思った。
お麩に砂糖をまぶしただけのような質素な味で、
口の中に入れると慌てて溶けてゆく。
小さいころはこれをうまいと思って食べたことがない。
これならチョコレートがいいと思っていた筈だ。
ところが今は、チョコレートよりこれがいいと本気で思う。
菓子は変わっていないが自分だけがどんどん変わっていくのが
なんだか可笑しくてならなかった。
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