松永和紀blog

科学情報の提供、時々私事

吉川泰弘教授のインタビュー

2009-07-30 02:47:48 | Weblog
 食品安全委員会の委員人事で渦中の人となった吉川泰弘・東京大学大学院教授に今月はじめ、3時間近くインタビューした。
 その内容を、先週水曜日から日経BPの「Food Science 食の機能と安全」で計4回にわたって掲載した。
 編集部のご好意で、掲載1週間後には無料で読めるようにしていただいた。現在、第1回が無料で読める。これを機会に、Food Scienceの有料読者に、という方がいてくださると嬉しい。月額500円だ。
 計4回の記事は、特別寄稿からご覧いただきたい。

 吉川先生の発言の細かい部分で賛否はあっても、科学的な事実に基づき判断したいという姿勢にウソはない、ということは分かっていただけると思う。

 民主党は27日にマニフェストを発表した。その中の「食の安全・安心を確保する」という項目に、下記のような文章があった。

「BSE対策としての全頭検査に対する国庫補助を復活し、また輸入牛肉の条件違反があった場合には、輸入の全面禁止等直ちに対応する」

 慄然としているのは私だけだろうか。
 私は、吉川先生のインタビュー記事の第2回目の最後に、コメントとして以下のように書いている。

 現在のBSE検査では若齢牛のプリオン検出は難しいというのは、極めて単純な科学的事実である。全頭検査は、BSE問題に対応した“ふり”をするための措置、つまりポーズであり、それに中央や地方の政治家が乗った。もう一つ、消費者団体の一部も、活動しているふりをするためか、「全頭検査」を強行に主張し、今も主張し続けている。そして、リスク管理機関はおそらく、全頭検査の無意味さを十分に分かっていたはずだが、その流れに逆らえなかった。
 その結果、今もまったく無駄な全頭検査が自治体の負担によって続けられている。私たちの税金も意味のない検査に使われていることに、多くの消費者は気付いていない。

 さて、自民党が31日に発表するというマニフェストは、どのような内容なのか。しっかりとみていかねば、と思う。


 

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37 コメント

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全頭検査は本当にムダなのでしょうか? (ナカ モトヤ)
2009-08-01 15:01:11
はじめまて。
松永さんは、常々「全頭検査」は全くのムダと一刀両断にされておられるようですが、本当にそうでしょうか。
私には、二つのメリットがあるように思います。
1.24ヶ月齢以下の牛が誤まって混入する可能性もあり、それを防ぐためのダブルチェックとしての役割
2.24ヶ月齢以下の検査をしないことになると検査忌避のために、却って24ヶ月齢以上の危険な牛が月齢偽装されノーチェックで出荷されてしまう危険性が発生するものと思われますが、それを回避できる。

松永さんのご見解をお聞かせいただければ幸いです。
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自民党の責任 (民主党がんばれ~)
2009-08-01 17:46:43
ついでに、BSE問題のとき、最も重要な対策であった牛のピッシング廃止の対応に十分な予算と強力な指示を出さなかったために、対策完了までにかなり時間がかかってしまいました。(全頭検査に金を使いすぎたから?)
その責任政党は「自民党」です。
早くから専門家はそのことを指摘してた。自民党は国民を危険にさらした責任を取るべき。

確か自民党の政治家もアメリカの牛肉処理施設を民主党よりも”真剣に”見てこられたはずなのに、国内の処理場を見て何も感じなかったんでしょう。(見てないのかな)
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BSE検査の意味 (松永 和紀)
2009-08-02 01:04:44
ナカ モトヤさん

 24カ月齢とされている意味が、よく分からないので、ちょっとずれたお答えになるのかもしれませんが……。


 日本の厚労省は、21カ月齢以上の牛について検査を義務づけています。私が、「全頭検査は無意味」としているのは、「20カ月齢以下の牛を検査しても、現状の検査ではプリオンを検出できない」というのが科学的知見だからです。

 以下、24カ月齢というのは、20カ月齢の勘違いだと想定して、考えてみるとーー。

 それにしても、1の質問の意味が私にはよく読み取れず、お答えできません。
 2については、月齢偽装牛が存在し、その月齢偽装牛はBSE感染牛である、という二重の仮定が成立しないといけませんね。そのうえで、検査でプリオンを検出してそのBSE感染牛をブロックして初めて、「危険を阻止した」「検査の効果あり」ということになります。
 しかし、その仮定が二重に成立するということはまず、あり得ません。日本は、飼料へのプリオン混入を排除するための飼料規制を2001年から始めていて、以降に生まれた牛からは、2002年誕生の1頭を除きBSE感染牛が見つかっていません。飼料の規制をはじめるとBSEが発生しなくなるというのは、世界的に認められている科学的知見です。
 そうなると、2001年以前に生まれたよぼよぼの牛を、20カ月齢以下に偽装して出荷するケースでないと、2はありえないのです。それは無理でしょう。外見上も肉質もまるっきり違います。

 第一、もし月齢偽装する農家や業者がいるのなら、それを防ぐための直接的な対策を検討する方が、お金の使い方として遥かに有効だと私は思うのですが。

 BSE感染を防ぐための三つの方策、飼料規制とSRMの除去、BSE検査についての考え方は、食品安全委員会の「BSE及びvCJDについて」というページにある資料をご覧になっていただければ、よりすっきりと理解していただけると思いますので、チェックしてみてください。
http://www.fsc.go.jp/sonota/bse1601.html

 ちなみに、BSE感染のリスクが下がっている現状に合わせて、EUの15カ国は今年2月から、検査対象を48カ月齢以上に上げています。

 ただし、以上の話は非定型BSEについては当てはまりませんので、ごっちゃにしないでくださいね。
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Unknown (ナカ モトヤ)
2009-08-02 19:14:17
早速のご回答ありがとうございます。

24カ月齢は20ヶ月齢の誤りです。うろ覚えのまま書き込みをしてしまい失礼しました。
一部の質問については説明が舌足らずのようでした。重ねてお詫びします。

以下の点について再度ご教示いただければ幸いです。

1.20カ月齢以下の牛を検査しないということになった場合、プリオンの検出され得る月齢の牛が誤まって20ヶ月齢以下の牛として流通した場合、無検査で出荷される恐れがあります。その危険性を避ける意味で全頭検査には意味があるのではないでしょうか。実際にアメリカ産の牛肉が特定危険部位の混入したまま輸入されると人為的ミスが発生しています。この種の危険性は常に考えておくべきではないでしょうか。

2.費用対効果の面で全頭検査はムダだと仰られているようですが、全頭検査のコストは牛一頭あたりおいくらでしょう。月齢偽装を防ぐための直接的な対策の方が安いとされる具体的な計算根拠をご提示いただけないでしょうか。

月齢の判断が「外見上も肉質もまるっきり違います」とうのはいささか性善説すぎるように思います。検査逃れのために組織的に偽装されれば、いくらでもごまかすことができます。

情報が古いかも知れませんが、米国の飼料規制は抜け道だらけで、鶏用飼料の肉骨粉が牛に流用される危険性や鶏の食べ残しあるいは未消化の肉骨粉が混入した鶏糞が牛の飼料として使用されているのではないかという危険性を指摘する声もあるようなのですが・・。


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BSE検査の意味2 (松永 和紀)
2009-08-04 00:41:19
ナカ モトヤさん

BSE検査では、検出限界以上のプリオンのことしか分からないのだ、ということをお考えください。

検査のコストの話は、食の信頼向上をめざす会が都道府県にアンケートをして公表していますので、そちらをご覧下さい。
http://www.shoku-no-shinrai.org/

それに、米国での管理の問題と、日本で何カ月齢以上を検査するか、という話はまったく別のことなので、ごっちゃにしないほうがよいと思います。

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たびたびすみません。 (ナカ モトヤ)
2009-08-04 16:22:32
松永さんは、BSE問題にお詳しいようでしたので、いろいろお尋ねさせていただきましたが、少々がっかりしております。

「検査のコスト」の情報としてURLをお示しいただきましたが、リンクがたくさん貼ってあり、どこを見ればよいのかよくわかりませんでした。

松永さんが全頭検査無用論を唱える根拠が費用対効果であることを主張されているようでしたので、もっと詳しいお箸をお聞かせいただけるものと期待しておりましたが残念です。

米国と日本の飼料管理をごっちゃにしない方がよいのではないかとうご意見につきましてはそうかもしれませんが、日本での全頭検査を廃止した場合、米国からの輸入牛肉だけ全頭検査を存続するという訳にもいかないよう思いますので、やはりきちんと議論すべきではないかと思います。

20ヶ月齢の牛からプリオンが検出されないから全頭検査は無意味だというのは「科学的」には真実であると思いますが、食品偽装の問題など流通の問題も関わってきますので、それらも加味して総合的に対策を考えるべきだと思います。

消費者に十分な説明責任を果たさずに、科学的には「安全」だからとゴリ押しをしても、消費者の「安心」を得ることできないと思います。

現状では、全頭検査の実施は消費者が「安心」感を得るための保険料としてやむをえない側面があるように思います。
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横から失礼します。 (さき)
2009-08-04 20:10:58
>松永さんは、BSE問題にお詳しいようでしたので、いろいろお尋ねさせていただきましたが、少々がっかりしております。

それはあまりに失礼な物言いではないでしょうか?
確かにあのリンクだけではどこに書いてあるのかよくわかりませんが、きちんと探せば書いてあります。
そもそも、ここで聞く前にちょっと検索すればわかりそうなものです。
(それが信頼できるかわかりませんが)

>消費者に十分な説明責任を果たさずに、科学的には「安全」だからとゴリ押しをしても、消費者の「安心」を得ることできないと思います。

ちょっとナカ モトヤさんにお訊ねしたいのですが、
誰がどのような説明責任を果たせば、消費者の安心を得ることができるとお考えでしょうか?
十分な説明責任とは?
ずっと考えているのですが、よくわからないのです。是非お教え頂きたいです。

蛇足ですが、
全頭検査は、説明責任を放棄し、偽りの安心を消費者に与える方法であると考えています。
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管理 (民主党がんばれ~)
2009-08-05 01:07:00
私も全頭検査は一定月例になるまでの牛では検査法が有効でないため、ある意味有効ではないでしょう。
ただ、事故米のような行政(農水省)と業者との癒着はあったのですから、畜産業界の古い体質を考えると偽装やミスがないとは言えないし、実際個体識別の証明書なんか使い回ししてたという笑えない事態により、検査よりも管理の方が大丈夫?って言いたくもなります。
アメリカの場合は、コスト削減のため人件費の安い労働力を使い、熟練したら首を切って新しい安い労働力を投入するケースもあります。クレームつけたらそんな回答があり、絶句した経験があります。
まあ、いずれにせよ、検査に頼らなくても消費者に納得されるような管理体制は必要ではないでしょうか?
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自民党の説明責任 (民主党がんばれ~)
2009-08-05 01:29:30
>全頭検査は、説明責任を放棄し、偽りの安心を消費者に与える方法
これは自民党が率先してやったことでそれに対する説明が十分ではないというのが先に考えるべきでしょう。
アメリカの処理場では日本で行われてきたピッシングなどの愚かなやり方はせず、危険部位の除去をしっかりやるマニュアルだそうで、松永さんが「民主党の議員はろくに工場を見もしなかった」と工場の担当者の引用をされてますが、本当のところ、この担当者は「日本の処理場がこれだけひどいのになぜアメリカの方が輸入禁止になるのだ」って自民党を馬鹿にしていたのがより真実だと思います。

自民党や自治体はまともなリスク評価をされたら、ピッシング禁止により、日本の処理業者・生産者(自民党の支持基盤かは知りませんが)が出荷停止になりかねないので(アメリカさんは困ってもよい)、「全頭検査」を「継続」し、利用したと私は見ています。まあ、おかげで見事にピッシングで危険部位が飛散するリスクなど国民はほとんど知らされず、マスコミも騒がなかった。私はこのケースはリスコミの情けないものと考えています。
自民党に一度すべて説明責任を果たしてもらいたいのですが、無駄でしょう。
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Unknown (yama)
2009-08-05 09:28:07
>これは自民党が率先してやったことでそれに対する説明が十分ではないというのが先に考えるべきでしょう

もちろんその通りです。ですからむしろ野党は「全頭検査しているから国産の牛肉は安全」とした政府・与党を追求するべきであり、また税金の無駄遣いを今すぐやめるよう全頭検査の廃止(検査そのものの廃止)を主張すべきなのです。

しかしそうではなく国庫補助復活をマニフェストに掲げるのはいったいどういう事でしょうか?
考えられる理由は
1この分野のマニフェスト作成担当者が全くの無知・無能である
2民主党における食の安全を担当する議員・職員が今さら全頭検査は必要ありませんと認めると過去の主張を問われ、責任追及されたら困るので議員・職員やめるまでウソをつきつづけ逃げ切ろうとしている。保身ですね。

>本当のところ、この担当者は-略-自民党を馬鹿にしていたのがより真実だと思います。

いくらHNからして民主党びいきだからってこの空想は・・・・w

>おかげで見事にピッシングで危険部位が飛散するリスクなど国民はほとんど知らされず、マスコミも騒がなかった。

民主党もねw。チャンスのがしましたね。

>全頭検査は、説明責任を放棄し、偽りの安心を消費者に与える方法であると考えています

全くその通りです。その偽りの安全のため政権取ったら国庫補助復活っていうんだから何かんがえんだ。

民主党がんばれ~さんは民主を愛するなら諫言してみればいいんじゃないかな。
マニフェストの修正が相次いでいるから直してくれるかも知れませんよ。そうしたら食の安全対策を投票基準の第一に考えている人が考え変わるかも?
現に私の周りにも吉川さん問題とこれで民主党への投票を躊躇している人いますから。
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