松永和紀blog

科学情報の提供、時々私事

消費者委員会と「あるある」問題

2009-10-16 12:01:46 | Weblog
 健康食品管理士認定協会理事長の長村洋一先生が、決心して協会のウェブサイトで告発された。
 私は、事実のみを簡潔に書こうと思う。そのうえで、長村先生の告発文をお読みいただきたい。

 消費者委員会は6日に開かれた第2回委員会で、「新開発食品調査部会」を設置することを決め、部会長に田島眞・実践女子大学生活科学部教授を充てることを決めた。この部会は、設置・運営規定の第3条によれば、「健康増進法の規定に基づき、販売に供する食品につき、内閣総理大臣が、特別の用途に適する旨の表示をしようとする者に当該表示の許可を行うとき、及び当該許可に係る食品について、新たな科学的知見が生じたときその他必要があると認めるときに、内閣総理大臣の求めを受けて調査審議する」となっている。

 もし、花王がエコナの特定保健用食品の失効届を出していなければ、この調査部会の最初の審議対象は、エコナになったはずだ。
 それを踏まえて、田島教授について書く。

 田島教授は、2007年に起きた「発掘! あるある大事典II」の捏造問題の時に、ちらっと名前が出てきた。捏造が問題になった納豆の回には関係していない。そうではなく、長村洋一・藤田保健衛生大学名誉教授(現鈴鹿医療科学大学大学院・教授)が告発したレタスの回に関係していた。

 このレタスの特集は、「発掘! あるある大事典II」の前身番組「発掘! あるある大事典」で1998年に放映された。「レタスをたくさん食べるとよく眠れる」という企画で、マウスにレタスを食べさせる実験を行い、マウスが寝た様子が流された。
 長村教授は番組から依頼を受け、マウスにレタスジュースを飲ませる実験をしたが、マウスは眠らなかった。しかし、番組はその実験の様子を流し、眠っているように見えるマウスの映像も流して、「眠ってしまった」と説明した。長村教授に依頼した実験であることに、番組はまったく触れなかった。そして、別の大学教授が「レタスにはラクッコピコリンという有効成分が含まれていて、即効性があります」とコメントした。この人物こそが、田島教授だ。

 長村教授は、レタスで眠らなかった実験結果であったにもかかわらず、その映像の一部を使い「眠った」と報じたのは問題があると考えて、納豆の回の捏造が明らかになった後に告発した。関西テレビが設置した調査委員会は問題事例とはしなかったが、英国の学術誌「Nature」が取り上げた。
(Nature 445, 804-805,22 February 2007)

 日本語の翻訳で脚色したと思われるのは困るので、Natureの記事の一部をそのまま引用する。

So Nagamura was surprised when he saw the programme show one of his mice, declaring: “It’s fallen asleep!” Makoto Tajima, a nutrition researcher at Jissen Women’s University in Tokyo, then appeared explaining that lactucopicrin, a chemical found in wild lettuce, and in trace amounts in cultivated lettuce, can induce sleep. “The programme left the impression that eating three leaves of lettuce can knock you out,” says Nagamura.
Tajima says he’s never carried out any experiments with lettuce, but that he gave accurate information from the scientific literature. He says he felt “a little uncomfortable” explaining another scientist’s results, but wasn’t too con- cerned: “We’re used like TV personalities, I say what the programme wants me to.” Tajima adds that he has appeared on more than 500 television programmes to explain nutrition. “If I didn’t do it, they’d get someone worse.”

 Natureは、日本語のダイジェスト版も出している。2007年4月号に、この記事を翻訳したものが掲載されていて、上記の文章の最後の部分は以下のように翻訳されている。

「我々はテレビタレントとして使われているのだ。だから指示通りにコメントする」と田島教授は話す。これまで500 以上のテレビ番組に出演して栄養素について解説したという教授は、「もし私が出なければ、もっとひどい研究者を取材するだろう」と話す。

 今、この田島教授が消費者委員会の「新開発食品調査部会」の部会長である。
 もう一つ、付け加えなければならないことがある。「発掘! あるある大事典」と「発掘! あるある大事典II」は、花王が単独スポンサーだった。
 

 以上が、明らかな事実だ。
 田島教授は、「あるある」に何回くらい出たのだろうか? ネットで検索するといろいろと出てくるのだが、回数まではつかめない。
 花王が単独スポンサーだった番組に出演し、Natureの記者に“We’re used like TV personalities, I say what the programme wants me to.”と語ったとされる人が、花王の問題商品を審査する? そんな事態は、花王の自主的な失効届によって、避けられた。だが、花王が再度、エコナを申請した暁には、新開発食品調査部会が審査する。

 どう受け止めるべきなのか? 
 私は、こう思うのだ。田島教授は消費者委員として、部会長として国民に説明する義務がある。どんな経緯であのような番組に関わり、Natureのインタビューにどのように話したのか、なにを考えて消費者委員を引き受け、部会長になったのか。
 「あるある」に出ていたからだめだ、などと言うつもりはない。Natureの記者がへんな奴で、発言を曲解された可能性だってある。だから、説明してほしい。
 ことの是非は、それから考えたい。

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6 コメント

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非常に興味深い話題ですね。 (ナカ モトヤ)
2009-10-16 16:36:12
確かに、田島氏は委員として不適格な方のように見受けられますが、どのような経緯で選任されたのかがとても気になりますね。

この人事の背景には誰かの何らかの思惑が働いているのでしょうか。

もう少し、深堀りしてくださる方がいらっしゃれば、是非お願いします。
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ここは酷い強制終了ですね (Unknown)
2009-10-16 22:39:18
こういう終わり方こそトクホにお似合い
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JR西●本 (Unknown)
2009-10-17 00:15:04
どっかの鉄道会社と同じことをやろうとしたの?
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委員の選任 (yamaguchi)
2009-10-18 17:38:44
て、政権交代前に決まったんでしたっけ?
だとしたら自民党や野田の責任ということになるが。
tt得、選考中指摘する政治家や官僚いなかったんかいな、困ったもんだ。
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Unknown (荒井)
2009-10-20 08:52:44
多分初めて書き込みます。
私は田島先生とは面識がありませんが、あるあるの経緯は知っておりましたので、田島教授が消費者委員になったことにとても驚きました。これまでもいろいろ委員を務めておられましたが、それも不思議でした。やはり学会長なども務めておられるので、人望のある方ということなのでしょうか。
新開発食品調査部会のトップになるというのは、他の消費者委員には食品の科学的な専門家というのはいらっしゃらないのでむしろ自然な流れかと思いましたが、そうでもないのでしょうか。
以下、私の感想ですが、トクホはとどのつまりは企業に広告の幅を広げさせてあげるという制度であって、消費者にとって大して有益と思っていません。メディア受け、ひいては消費者受けの仕方を知る人を就けたのだなぁと感じました。
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一市民の意見 (大槻政嗣浪)
2009-12-29 22:26:27
結局、不景気だから、いろんなとこで卑屈なんんだよ。
今日も、さむいね・・・。
以上。
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