松永和紀blog

科学情報の提供、時々私事

口蹄疫の殺処分が大幅遅れ 2

2010-05-13 11:59:12 | Weblog
 ありがたいですねえ。いろいろな人から、処分の推移をグラフにしたぞ、というご連絡をいただいている。

 11日に大規模養豚場の殺処分が完了し、処分完了数は約3万頭になった。しかし、対象数は7万8000頭に増え、処分は依然として大幅遅れ、といってよい状況だろう。

 コンタンさんのブログの「3.個別の数字」を見ると、一つ一つの事例で処分終了までにかなりの日数がかかっていることが、一目で見てとれる。コンタンさんも書いている通り、未だ処分されていない患畜はウイルスを吐き出し続けている。ウイルス培養器なのだ。ぞっとするような現実だ。

 さまざまな情報を総合すると、遅れの原因はやっぱりまず、埋設地の確保がスムーズに行っていないこと。
 国は「国有地を使えばと言ったのに、断られた」と弁解しているらしいが、実際には伏流水が出る土地で、埋設地としては伝えなかったようだ。
 それに、殺処分した農場から埋設地が遠ければ、運搬によるウイルス拡散のリスクが上がってしまう。農場に近くて伏流水が出ず管理ができる土地、となると、探すのは非常に難しい。それを、生産者自身が主体的にやれと言う。それでは、うまく進むはずがない。

 もう一つの大きな理由は、感染が豚で一気に拡大した5月初めごろの獣医確保が不十分だったためだという。殺処分は、牛の場合は薬殺、豚は炭酸ガスを使ったり、鎮静剤で前処置してから電気で気絶させて薬殺、という方法で行われている。注射による薬殺は、獣医が行わなければならない。だが、獣医が足りなかった。結局、感染は拡大し、薬殺しなければならない家畜は増え、依然として獣医は足りていない。


 私は昨年、月刊誌「養豚界」という雑誌で6回の連載をした。養豚に興味があるため引き受けたのだが、それにも増して、尊敬する養豚専門の獣医師たちから「書いてよ」と頼まれたことが嬉しかった。

 その獣医師たちが今、宮崎に入って活動している。もうすぐ10日になるという。まったくのボランティアだそうだ。業界のリーダー格である素晴らしい人たちが、懸命に動いている。あんなに養豚のことを考え、業界の改善に力を尽くしている人たちが今、豚を処分するために宮崎にいる。
 忙しい合間を縫って、一人が電話を下さった。話を聞きながら、私は流れてくる涙を止めることができなかった。

 宮崎で多くの人たちが、口蹄疫拡大を防ぐために力を尽くしている。そのことを、一般市民、消費者、ほかの地域の生産者、官僚などになんとしても伝えなければいけない。それが私の仕事だ。
 

最新の画像もっと見る

14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2010-05-13 14:07:24
はじめまして

友人がパニック状態でメールしてきました。

飛躍している部分もあるかと思いますが、打開したいという気持ちは伝わってきましたので、
コメントさせていただきます。

以下転載-------------------------------------

今一番ありがたいのはこの現状を知ってもらうこと、世論で政府を動かすしかもう手が無いんです。
先日した仲間の輪による消毒剤の話の進捗ですが、政府の圧力がかかり、
「各県まず自分所の防疫の徹底をせよ。宮崎は農相みずから出向き全力で対応している」
との電話があったみたいです

消毒剤が圧倒的に足りません。
人手も圧倒的に足りません。
政府は“現場スタッフを国としても確保している”と発表してますが、
一昨日までの現場スタッフ350人のほとんどは県のスタッフ。
九州農政局から3人の獣医師と20人のスタッフ、追加で30人の自衛隊。
農政局の獣医師はペーパー獣医師で現場じゃまともに牛に触ることも出来ない、
追加で来た自衛隊は4日出たら2日休み実質2/3の労力。
昨日から宮崎による確保と九州各県の応援により倍の700人体勢に。
それでも殺処分対称の1割しか処分出来てません。
県も、保健所も、獣医師も、JAも、市町村も、休みなしで必死になって頑張ってます。
保健所の友人はGWどころか、発生からずっと休み無し、6~21時の重労働。爪は割れ、消毒剤で手の皮膚が爛れ…
それでも必死になって戦ってます

それでも全然処分が追い付かないんです。
今、処分対称の10万頭のうち、20日間で処分が終わったのは1万頭にも届きません。
今1日の処分頭数が千頭。毎日発症する頭数の方が圧倒的に多いんです。
感染した牛は毎日10億個、豚は5兆個のウイルスを撒き散らします。
感染拡大が止まりません。
4月末に発症した友人の農場では、今のペースでは5月内に処分出来るかどうかと言った所です。
全て殺されてしまう。
それでも弱れば排出するウイルスが増える。だから、殺されるのがわかってても、
毎日餌をやり、ビタミンをやり、あらゆる手を尽くして少しでも牛を健康に保とうとしてます。

でも、農場全ての牛に広がり、弱い子牛から次々に弱り、死んでいきます。
死んでも処理業者も出入りできないため、死体の上に大量の石灰を乗せても、腐敗し異臭を放ち始め
それでも親牛は自分の子を一生懸命舐め、石灰を落とそうとします。

消毒剤の不足から、本来は牛に使わないような強い薬を大量に毎日浴びせられ、
牛は毛が抜け、ぼろぼろになっていきます。
そんな中で、自分の家族同然の牛を殺す事も出来ず、飼い続けなければならないんです。

また、保健所や獣医師が殺処分現場に集中せざるを得ず、発症が疑われる農場の検査も出来ず、
テレビや報道では50件80,000頭となっていますが、オレが把握しているだけで発症の疑いがあり検査待ちの所があと40農場あります。

とにかく人手が足りないんです。
もう殺処分が追い付かないんです。
首相が激甚災害に認定し、自衛隊を出さない限り、拡大は収まりません。
その必要があるかどうかを関係閣僚と話し合い、必要とあれば検討する」とか言ってる場合 じゃないんです!
ワクチンと言う手も有りますが、現行の法律では使えず しかも大臣は「参院選後の国会で立案立法を…」とか言ってますが、
その頃には国内の牛・豚・山羊・羊・鹿・猪…等の偶蹄類はいなくなってるでしょう。

皆さんにお願いです、 とにかく今、宮崎で大変な事が起こってると言うことを、多くの人に伝えて下さい。
もう世論で政府を動かすしか方法がないんです。

資材機材も、人手も、予算も… もう国に頼るしかないんです。
よろしくお願いします。
これって... (瀬戸晶成)
2010-05-13 15:19:54
こんにちは。
このコメントはマルチポストですよね。

一次情報はmixi日記らしいのですが、それと思われる日記はユーザーごと削除されているようです。
自衛隊を出さないと (From京都)
2010-05-13 23:15:18
私は家畜伝染病に関しては素人ですが、京都の鳥インフルエンザのときに白装束で鶏舎の中で作業をしたことがあります。
感染拡大を超えるスピードで殺処分をするのは、通常の行政の能力では無理です。
プロ集団の人海戦術と重機を用いて力ずくで封じ込めないと間に合いません。病気は感染しませんが、長引くと現場の人間が疲労で倒れます。

それから、まだ処理中なのに反省は時期尚早ですが、ここ数年の家畜疾病の流行を見ると、現在の高密度の飼育体制を見直す必要があるように感じます。

この騒ぎが収まった後に、畜産農家が経営を再開するには前途多難です。底の見えない日々に苦労されている畜産農家の方に何もできない自分の無力を感じます。
Unknown (miyu)
2010-05-14 00:14:28
今多分、大きくこの件が話題になっているものにツイッターがあると思われます。
 虚実入り混じりうわさが広まっていますが(だからこそですが)こちらのブログを紹介させていただきました。
どこまで反応してもらえるかはわかりませんが・・・、
被害はいろんなところに (sachan)
2010-05-15 13:52:39
はじめまして。
宮崎に知人がいるものです。知人は食品加工の機械を作る仕事をしていますが、今回の口蹄疫の影響で、客先から工事のストップが入ってしまい仕事が出来ない状態となっています。
今の所、宮崎県のみで防いでいますが、これが九州全土に拡大すると考えだけでぞっとします。
松坂牛などは子牛の頃は佐賀で育ち、大きくなって松坂に送られて一定の期間松阪で過ごして松坂牛になると佐賀県の知人から聞いたこともあります。
今は、TVで全くといっていいほど報道がなされませんが、食品加工業、飲食業、知人みたいなそれら業界と関わる仕事、ひいては一般消費者に影響があることでしょう。一刻も早い、適切な報道が流れることを祈っております。
最後に、これは噂のレベルですが、国道を封鎖するのは国の許可が必要らしいのですが、申請はしているものの許可が下りていない状況というのも感染拡大している原因とも聞きました。
Unknown (Gloria)
2010-05-15 20:47:19
このような事態を前にしてこそ
それぞれの立場における判断の根拠をどこまで事実と科学に置き続けられるのか
が私たちに容赦なく問われているのだと思います
Unknown (Unknown)
2010-05-16 00:27:44
緊急事態発生です!!
改良事業団の種牛に感染確認
江藤拓 公式ブログ/危機 - GREE
ttp://gree.jp/etoh_taku/blog/entry/441594259
まだ種牛では・・・ (Unknown)
2010-05-16 10:47:26
江藤氏のブログには「肥育牛」とはありますが、「種牛」「種雄牛」とは書いてないんですよね、実は。

もちろん同じ施設内で飼われている種雄牛と、先日同事業団から避難していた6頭の種雄牛、感染の疑いが出てくるわけで心配ですが……。
こちらは感染していないことを祈りつつ、経過を見るしかないのだと思います。

「種牛も感染!」という情報が一人歩きするのは、逆に、別の不安がありますね。
デマがまことになってしまったら、笑うに笑えない。
一部訂正です (Unknown)
2010-05-16 10:57:54
自己レスで申し訳ありません。

>同じ施設内で飼われている種雄牛

こちらは感染確定ではないものの「疑似患畜」で、種雄牛、肥育牛とも殺処分が決まったようですね。

移動した6頭は経過観察ですが、残っていた他の種雄牛も貴重な財産。それが処分とは……
ひたすら悲しいです。
Unknown (Gloria)
2010-05-16 12:12:00
「科学的知見」「中立性」という言葉に私はなんの幻想も持ってはいませんでしたが、この出来事でそれが幻想であるだけでなく、依然として幻想であるまま政治にすっぽり取り込まれ、その道具の一つとしての本質をむき出しにさせられるものであることを見せつけられたと感じています。(それは、「科学」がその歴史において政治的免疫を一度として具備したことがない、あるいは具備することを忌避し続けてきたということに、まさに政治的帰結だと思います)
「科学的知見」「中立性」を主張してきた人たちは、少なくともその言葉によって負うはずであった役割をもう一度思い起こしてください。
私たちは、破壊的な政治ヒステリアですべてが覆い尽くされる前に、確かめられた証のある事実を体系化する作業を、それぞれの政治的、思想的、そして生活的立場で継続する作業を続けていくしかないはずです。
口蹄疫の事態は社会的にほとんど米軍基地移設問題との類似性をいうことに何の違和感もなないところまで来ています。 しかし、基地問題は双方の愚かな政治勢力の意図を遥かに超えて沖縄問題、戦後体制の本質にまで及ぼうとしています(個別案件としては、おそらくは「特定勢力が政治的混乱に乗じて・・・」として圧殺されようとするのでしょうが)。 どれだけ愚弄されようとも、しかし民衆は決して愚かではないのです。