こちらは「みやぎ野菜ソムリエの会」に所属している
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食素材研究部会
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ブロッコリーで思い出すのはいつも十数年前の大失敗です。
あまりにもひどいので、頭にこびりついて離れないのです。ブロッコリーの牡蠣炒めをしようと、牡蠣を塩水で洗い、拭きもせず、片栗粉をつけ、ブロッコリーと一緒に炒めました。結果は言わずとも分かると思いますが、見た目も味も……、ご想像にお任せします。作った本人もビックリ仰天。
料理ってほんの僅かな手間や工夫をするだけで大分味も見た目も違ってくると今は思います。
余談はさておき、本題に入りましょう。
【栄養素】
ブロッコリー(緑花野菜:みどりはなやさい)のつぼみはガクや花弁が分化して出来た花蕾の集合体。紫緑色で、枝分かれし、半球形状に固まっています。低カロリーで、栄養価の高い緑黄色野菜です。1株200g当たりに含まれる大概の栄養素を以下に示します。
エネルギー:66kcal、カロテン:1.6mg、植物繊維:8.8g、リン:178mg
カリウム:720mg、カルシウム:76mg、マグネシウム:52mg、鉄:2mg
ビタミンE:4.8mg、葉酸:420μg、ビタミンC:240mg、
ビタミンK:320μg、ビタミンB1:0.28mg、ビタミンB2:0.4mg、
ビタミンB6:0.54mg、パントテン酸:2.24mg、ビオチン:18.6μg、
ナイアシン:1.6mg
●ビタミン
ブロッコリーは栄養的に優れ、特にビタミンCはレモンの2倍、カリフラワーの3倍、キャベツの4倍、グリンアスパラの13倍、レタスの27倍も含まれています。
上記でわかるように、ビタミンCは飛び抜けて多く、シミやしわの防止など効果を発揮し、同時にブロッコリーに含まれているビタミンA、ビタミンEと一緒に‘ビタミンエース(ACE)’と呼ばれ、これらの相乗効果で抗酸化力が高まります。ビタミンB群やカリウム、カルシウム、鉄分などのミネラルも豊富で、植物繊維も多く含み、栄養価が高い緑黄色野菜です。
●スルフォラファン
ブロッコリーに含まれるイオウ化合物は、体内でスルフォラファンと呼ばれる物質に変化します。
スルフォラファンにはがん抑制酵素を活性化する働きがあると言われており、注目されています。また、種子に水と光を与え2~3日育てた芽(スプラウト)には、スルフォラファンが同量のブロッコリーより20~50倍多く含まれていると発表され、普及し出しています。
●薬膳としての効能
生命エネルギーの一種である「気」を補給して、筋肉や関節、腱を丈夫にし、スムーズに動くように助ける働きがあります。疲れやすい、胃腸が弱いなど虚弱体質の人や、ストレスによる肩こり、目の疲れ、腰痛などの症状がある人、腱鞘炎や関節痛に悩む中高年に向く野菜です。
【科名】
アブラナ科アブラナ属
【原産地】
北海・英仏海峡、大西洋等ヨーロッパ海岸、地中海沿岸諸国
【伝来】
ブロッコリーはキャベツ同様、野生種のケールが起源。ケールを紀元前600年頃にケルト人がヨーロッパ各地に広め、改良が繰り返され、ブロッコリーやカリフラワー、コールラビ、芽キャベツ、キャベツに分化しました。ブロッコリーはキャベツの中で最も進化が遅れたグループになります。
カリフラワー。
北海道のカリフラワー畑。ブロッコリー畑にそっくりです。
ブロッコリーはラテン語のbroccoに由来し、キャベツ類の花梗(かこう)を意味します。16世紀頃からイタリアを中心にヨーロッパ各地へ広まっていました。日本には明治初期にカリフラワーとともに導入されましたが、普及せず、第二次大戦後食の欧米化で注目され、1980年代、緑黄色野菜として栄養価の評価が高まり、本格的に広まりました。
【分類】
・頂花蕾型:株の頂上に花蕾を着ける。(品種例:緑嶺 ピクセル)
・頂・側花蕾兼用型:わき芽の花蕾も利用する。(品種例:ドシコー スティックセニョール ハイツ)
【栽培】
3パターン
・ 冬~春蒔きの春夏収穫(早生)
・ 夏蒔き夏~冬収穫
・ 秋蒔き冬~春収穫
ブロッコリーの定植(苗植え)作業。春蒔きです。
定植から一ヶ月位たった頃。
【産地・流通】
11月~3月には愛知、千葉、静岡等の物が、夏には長野や北海道の物が出回ります。他にアメリカ、台湾などからの輸入品を含めて周年出回ります。
北海道のブロッコリー収穫作業風景。
【良いブロッコリーの選び方】
・ 重くてずっしりしている
・ つぼみが詰まっている
・ 中央部が盛り上がっている
・ 根元の切り口がみずみずしい
・ 濃い緑色
ブロッコリーは寒さにあたるとアントシアニンが生成され、濃い紫色になる場合があります。茹でるとアントシアニンは水に溶けて、花蕾は緑色に変わります。品質に影響がなく、紫になっている物が良いとも言われています。
ブロッコリーの花蕾は呼吸作用が盛んで、高温、乾燥下では急速に黄化します。つまりつぼみも根元も黄色みがかかってきて、鮮度が落ちます。火を通してもスカスカ感と苦みが残ってしまうので、注意しましょう。ブロッコリーは冷蔵庫の普及に合わせて消費が伸びたとも言えます。鮮度保持には0℃に近い低温と適度な湿度の供給が必要となります。
【保存方法】
あまり日持ちがせず、黄色く変化し易いので、ポリ袋に入れるかラップで包むかして、それから冷蔵庫に入れて保存しましょう。できればすぐに食べましょう。硬めに茹でて小分けして冷凍保存も可能です。
ブロッコリーはカリフラワーに比べて茎が美味しく食べられます。特に中国で改良された芥藍(かいらん)は茎が美味しい。ブロッコリーに芥藍を交配して作ったスティックセニョールは長い茎を持つフローレット(小花蕾球)タイプのブロッコリーです。最近、このわき芽を収穫するスティックセニョールも出回っています。アスパラのように茎の部分が長くて柔らかいので、そのまま茹でて食べられます。一般のブロッコリーより暑さに強いので、真夏でも収穫出来ます。
【幅広い調理用途】
ブロッコリーは花蕾及び茎を利用します。「あく」や「くせ」がなく、調理時間も短く、多くの料理に使用出来ます。
・ 茹でる:サラダ、和え物
・ 炒める:塩炒め、醬油炒め、味噌炒め、オイスターソース炒め
・ 煮る:カレー、シチュー、スープ
・ 焼く:チーズ焼き、グラタン
・ 揚げる:フライ、天ぷら
茎の外皮をむいて火を通せば、とても甘くて美味しい、ホタテと相性が良いと某有名シェフの本に書いてありました。私は豆腐が好きなので、豆腐炒めにもブロッコリーを使います。下の写真はブロッコリーと厚揚げのオイスターソース炒めです。とてもヘルシーなので、ペロリと食べられてしまいます。
周年出回っているブロッコリーの旬が、11月~3月で、12月は特に美味しいと言われています。その上、扱い易い食材で、栄養面においても、味の面においても本当に魅力いっぱいの野菜です。どんどん使って、より健康により美しくより素敵になりましょう。
参考文献
・ 花図鑑野菜+果物 草土出版
・ 新ビジュアル食品成分表 新訂版 大修館書店
・ 奥田政行の食材スーパーハンドブック 小学館
・ おいしい野菜教室 (株)出版社
・ おいしい野菜や果物の選び方 千葉県農林水産部生産販売振興課発行
・ 野菜ソムリエコース テキスト 日本野菜ソムリエ協会
・ 野菜薬膳 株式会社マイナビ
(文 食素材研究部会 岩佐麗子 写真 食素材研究部会 岩佐麗子・遠藤敬)
今年も行ってきました!気仙沼『ベジフルさんままつり2012~繋がる~』。
10月8日(体育の日)気仙沼おさかな市場で開催されたイベントに、料理部会と合同参加しました。
食素材部会の担当はJA南三陸様から提供していただいた地元産のリンゴ食べ比べコーナーです。スーパーではなかなか見かけない品種を揃え、お客様にじっくり味わっていただきました。そこで今回は『ベジフルさんままつり』の報告と南三陸産の品種紹介を兼ねまして『リンゴ』のお話です。
【原産地】
中央アジアの山岳地帯、またコーカサス(カフカス)地方から西アジアにかけての寒冷地が「りんご」の原産地とされています。そこからヨーロッパとアジア、2つのルートへと広まったそうです。
りんごの栽培は8,000年前から始まったとされ、紀元前1300年にはナイル川デルタ地帯に果樹園もあったそうです。また、ギリシャ時代には野生種と栽培種が区別され、接木で繁殖させる方法もあったとか。ローマ時代にはさまざまなりんごを掲載した本・・・いわゆる“カタログ”も出版されていました。
【伝来】
日本に渡来したのは平安時代中期とされていますが、当時は「和リンゴ」という観賞用のリンゴでした。現在栽培されている「西洋リンゴ」が日本に伝わったのは明治時代。今では身近な果物ですが、意外と歴史は浅いのです。
また、日本での栽培は青森から・・・と言いたいところですが、北海道函館市に隣接する小さな町、七重村(現:七飯町)が初栽培の地です。明治元年にドイツ人の農業指導者R.ガルトネルが “七重村農場”を開設、翌年(明治2年)には母国から取り寄せた苗木を植え付けました。その後、農場は明治新政府の手に引き継がれて“七重官園”となりました。明治10年には“青森県りんごの始祖”とされる菊池楯衛(きくちたてえ)が来園、接木や苗木の仕立てといった技術を学んでいったそうです。
青森のりんご、「ふじ」の畑。
青森県ではそれらの技術が広まるとともに、栽培も盛んになりました。現在国内生産量の約60%は青森県産です。
りんご取扱量日本一の弘果 弘前中央青果さんの場内。時期になると場内ほとんどりんごです。
【旬】
品種によって収穫期が異なることから、「旬」と呼ばれる時期もバラバラ。
ここではスーパーなどでよく見かける品種の旬を紹介します。その時期に合った品種を食べるのが“りんご通”ですよ。
早生(9月~):つがる
中生(10月上旬~中旬):千秋、ゴールデンデリシャス、ジョナゴールド、紅玉
晩生(11月上旬~):ふじ、王林、
初秋の味覚、つがるです。
シナノゴールド。10月から出まわります。貯蔵性もいいので春先まで店頭に並びます。
ふじ。きっとみんなで何かしゃべっています。
【栄養素】
“1日1個のリンゴは医者を遠ざける”とのことわざがあるように、身体に良いことで知られているリンゴ。幼い時に風邪をひくと、すりおろしリンゴを食べさせられた経験がおありの方も少なくないのでは?私は祖母に作ってもらっていましたが、“栄養”と“愛情”がたっぷり詰まり、熱っぽい体にす~っと入っていった記憶があります。
では一体どのような栄養的特徴があるのでしょう。
●カリウム
ナトリウム(塩分)を排泄する作用や、体内水分バランスを整え利尿を促す働きがあり、むくみの改善、腎臓病や高血圧の予防に効果があります。
●ペクチン
水溶性の食物繊維のペクチンは、腸内に入ったときに消化物やコレステロールを包み込んで、腸内を刺激し、体外に排出させやすくする働きがあり、便秘の予防や高血圧予防に効果があります。
さらに腸内環境を整える働きも。腸内の乳酸菌の生育を促進し、悪玉菌の活動を抑え、善玉菌を増やしてくれます。
●ポリフェノール
皮に多く含まれる近年話題の成分ポリフェノールは、体内の細胞を老化させてしまう活性酸素の働きを抑制し、生活習慣病を予防する効果があります。また、肌や皮膚を若々しく保つ美容効果もあります。
さらに、酸味のもとであるリンゴ酸とクエン酸は、疲労回復、食欲増進などにも効果があります。リンゴは栄養価が高く、美容・健康・ダイエットにも優れた果物と言えます。
りんごの幼果。春先のりんごの姿です。
【保存方法】
冷蔵庫に入れると長持ちします。ただし、リンゴはエチレンガスを放出し、周りの食品の熟成を早めてしまう恐れがあるのでご注意を。1個ずつポリ袋に入れて密閉し、冷蔵庫の野菜室に入れましょう。
また、リンゴが発するエチレンガスの効果を利用して硬いキウイが食べやすくなるのを早めることができます。
【食べ方】
・冷やして食べましょう
果糖にはα型とβ型(=甘さがα型の3倍!!)があり、冷やすとα型からβ型に変わります。ただし、冷やしすぎると舌が感じにくくなるので注意しましょう。
【仲間たち】
今回はさんままつりで提供しました南三陸産の品種「秋映」、「メロー」、「やたか」をご紹介します。
さんままつりではお客様にチェックシートをお配りし、甘味、酸味、蜜、香り、食感、ジューシーさの6項目について審査してもらいました。気に入った品種に投票してもらったところ、一番人気の品種は…。
●秋映(得票数8票)
千秋×つがる、収穫時期10月中旬~下旬
300g~350gで円形。何といっても特徴は濃い赤色。白雪姫に出てくるリンゴを連想させる黒っぽい赤です。香りが強く、果汁もたっぷりで食味は良好…というのが一般的な特徴。見た目のインパクトとはっきりした味からスタッフの前評判は高かったのですが…。今年は夏が長く気温が下がらなかったせいか、当日の秋映の外観は普通の赤リンゴ。収穫時期が早かったためか渋味もあり、人気投票では残念な結果でした。
個人的にはとても好きな品種です。どこかで見かけましたら怖がらずに(?)手に取ってみてくださいね。
●メロー(得票数47票)
(ゴールデンデリシャス×印度)×ゴールデンデリシャス、収穫時期10月下旬~11月上旬
300g前後で中くらいのサイズが一般的ですが、当日提供したものはかなり大きめでした。黄緑から黄色で果実は円形から長円形。王林よりやや早く出回ります。名前は“熟して甘い。芳香があって美味しい”を意味する『mellow』に由来するとのこと。
甘味が多く、酸味が少ないのでお子様たちに人気だったようです。果汁が多く、さっぱりした清々しい味でした。
●やたか(得票数61票)
ふじの枝変わり、収穫時期10月上旬頃
300g~450gと大きく、赤色で縞がはっきり出ます。品種名は育成者の父、母(妻との説も)、本人の名前の頭文字を取りました。ふじと同様に蜜が入る品種です。
今回の人気投票では堂々の第一位!!甘味が強く、酸味は弱め。お子様から大人までに好まれるバランスの良い味でした。こんなに人気なのになぜスーパーに並ばないのでしょう?これはいくつも割ってみて気づいたのですが、稀に芯の中の種の付近にカビが見えるものがありました。芯カビ病が発生しやすい品種なのかもしれません。外観からは見分けがつきにくいものですが、カビの部分を除いて食べれば問題ないそうです。でもやはり、この特徴を知らないでカビを見たら驚きますよね。美味しいけれど生産者としては難しいところでしょう。
おまけで・・・
●ひめかみ
ふじ×紅玉、収穫時期10月中旬
300g程度の小ぶりな大きさで、やや固め。甘味酸味とも強く、パイナップルのようなはっきりした味です。蜜が入る品種で、収穫時期が遅くなるほど蜜は多くなります。品種名は育成地(岩手県盛岡市)から遠望できる姫神山に因んだ名前です。保存性も比較的良く、加熱しても果肉が崩れにくいので調理用としても利用可能。
気仙沼に向かう途中、一関市の“道の駅かわさき”で出会いました!店頭で色々な品種を並べて試食販売していたので、ちょっと寄り道。珍しい品種なので試食したところ“これは美味しい!”となり、ソムリエたちでかなり買い占めてきました。(あとから来たお客様方、スミマセン。)寒い地域が適している品種なので、岩手以北に行ったときには探してみたいと思います。
南三陸と農産物はなかなか結びつかないかもしれませが、紹介したリンゴのほかにも柚子、気仙沼茶豆など美味しいものが色々あります。イベント翌日にお祭り会場から直送した秋刀魚を焼き、大島産柚子を添えていただきました。脂の乗った秋刀魚と柚子の清々しさが口いっぱいに広がり、味覚の秋を満喫。ご馳走様でした。
来年もベジフルさんままつりで、南三陸産の野菜や果物と美味しい出会いをしたいと思います。皆さん、お野菜縁日&ベジフルCafeをさらにバージョンアップさせてさんままつりに向かいましょう!
【参考】
りんごミュージアム http://www.ringomuseum.com
医学健康情報サイト J-Medical http://www.j-medical.net
(文 食素材研究部会 成田浩子 写真 食素材研究部会 遠藤敬)
今回ご紹介する果物は今が旬の「梨(ナシ)」です。
その中でも、「日本ナシ」にスポットを当ててみました。
そもそも、どうして「ナシ」と呼ばれるようになったのでしょう。
「ナシ」という名前の由来は、果実を割った時に中が白かったことから「なかしろ」なかしろ・なかしろ・なかしろ・・・「ナシ」になったそうです。
【種類】
果樹として栽培されているのは約20種類。主に「日本ナシ Sand pear」「中国ナシ Chinese pear」「西洋ナシ Pear」です。
日本ナシは、中国中部・朝鮮半島南部・日本中部以南に原生しているヤマナシを改良したものです。
登呂遺跡(弥生時代後半:静岡)からナシの種が発見されたことから、日本最古の果樹栽培と言われております。720年「日本書記」持統天皇の代にナシの栽培を奨めたとされています。江戸時代には栽培がかなり普及し(新潟・群馬・千葉・神奈川・京都)、昭和10~50年代前半まで長十郎と二十世紀が主に出回りました。そして現在・・・より甘くやわらかめな品種が出来上がりました。
シャリシャリとした食感の幸水・糖度の高い豊水・甘くて大きい新高・長期貯蔵の効く南水・新品種のあきづき等々。
福島の二十世紀梨の畑です。
【栄養価】
◎便秘解消
ナシのシャキシャキ・ザラザラ感の正体は「石細胞」と呼ばれる食物繊維です。この成分はコレステロールを吸着し、体外に排出してくれる性質をもつといわれています。さらに果物の中でも特に多いソルビトールという糖の成分が、便をやわらかくしお通じを良くしてくれる働きがあるといわれています。
◎高血圧予防
ナシにはカリウムが豊富に含まれているので体内の余分なナトリウムを排出し、さらに果実全体の90%の潤沢な水分が血液をサラサラにして、高血圧を予防してくれる効果があるといわれています。
宮城県角田の幸水畑。
◎風邪に備えて
ナシには肺を潤してくれる働きがあるといわれています。秋のこの時期にナシをたくさん召し上がり肺を潤すことによって、風邪のウイルスの侵入を防ぐ効果があるそうです。また古来から日本ナシを煮詰めたシロップは喉の炎症に良いといわれております。
◎二日酔いにも☆
ナシに含まれるタンニンという成分はお酒の毒を体外に排出する成分を含んでいるので、二日酔いによいといわれております。
◎焼肉にひと手間
韓国ではよく料理にも使われるナシ。ナシはタンパク質分解酵素を含んでいるので、市販のタレにすり下ろしたナシを加えて肉を漬け込むと臭みが取れてやわらかくなります。
このように良い事づくしのナシですが、体を冷やす果物ですので冷え性の方などは食べ過ぎに十分にご注意ください。
【上手な選び方】
皮にハリがあり、軸がしっかりしている、重みがありふっくら丸みがあり、更に果皮がツルツルしているものは熟している証拠です。
【保存方法】
水分の蒸散を防ぐためビニールに入れて冷蔵庫の野菜室に入れるのがおススメ。
洋梨と違い追熟はしませんので、出来るだけ早めにお召し上がり下さい。
【珍名】
昔からある梨には、いろんな変わった品種(?)名があります。
・頬叩(ほほたたき):ナシのあまりの美味しさに頬が落ちそうになり叩きながら食べたことから由来
・巾着(きんちゃく):美味しいナシをまとめ買いしようとして財布(当時は巾着)ごと払ったことから由来
・独逸(どいつ):この美味しいナシの樹はどいつんだ?から由来
少し大きくなってきた幸水。まだ子どもです。6月末頃の様子です。
ナシは知れば知るほど魅力的な果物です。
秋のこの時期にしか食することは出来ませんが、たくさん召し上がっていただき冬に備えての体作りに役立てて頂きたいと思います。
桃栗3年柿8年、柚子は9年でなりさがり、梨のばかめは18年、林檎はニコニコ25年、女房の不作は60年、亭主の不作はこれまた一生、あ~こりゃこりゃ
2012年9月1日、東松島大塩仮設住宅ひまわり集会所で行われた野菜の日イベントで、梨のお話をする高橋弥生さん。
参考文献:毎日役立つ からだにやさしい 漢方・薬膳の食材帳 薬日本堂
くだもののはたらき 日本園芸農業協同組合連合会
(文 食素材研究部会 梨の語りべ 高橋 弥生、写真 食素材研究部会 遠藤 敬)
暑さも峠を越したようで、朝夕はいくらかしのぎやすくなりました。どことなく秋の気配が感じられます。そこで今回は「秋茄子は嫁に食わすな」のことわざにも登場する『ナス』のお話です。
なすと言えば、「一富士、二鷹、三なすび」と縁起の良い初夢にも登場します。駿河名物をあげたとか、高いものをあげたとか諸説ありますが、ともあれ、ナスが昔から日本人に親しまれていることは間違いないようです。
〔原産地〕
インド東部に自生する“ソラヌム インサヌム”がその原種と考えられています。「ナス科野菜(トマト、ジャガイモ、ピーマンなど)は南米原産が多いのに、何故ナスはインド?」という疑問を持った方は、産地交流部会のブログをご覧ください。
栽培の歴史は古く4~5世紀頃と言われ、6世紀頃にはすでに中国へ渡来。その後日本には8世紀頃に中国より伝わりました。奈良時代の『正倉院方書』にナスを献上したという記録があり、900年頃には、すでに漬物加工の記録もあるとか。
漬物と言えば仙台は“長なす漬け”。ところが山形のなす漬は“丸なす”が有名です。なぜお隣同士なのに形が違うのでしょうか。中国の丸なすは北陸地方に伝わり、そこから山形に伝わったようです。一方、長なすは主に九州に伝わりました。それがどうして遠く離れた仙台で?
仙台で長なすが栽培されるようになったのは伊達正宗の時代。朝鮮の役に出陣した際に立ち寄った博多で、藩士の一人が種子を持ち帰ったことが始まりとか。歴史のドラマですね。また、仙台長なすは本家の九州ものと比べずいぶんと小ぶり。これは東北地方は気温が低く、栽培期間が短いので、小さく皮が軟らかい品種に分化したからだとか。こうやって、ローカル色豊かなナスが生まれていきました。
(参考資料 豊屋食品工業株式会社HP)
〔旬〕
周年出回っていますが、旬はやはり7月~9月。この時期のものは露地物で、ほかの期間はハウス栽培です。
冬~春は高知、熊本、福岡のものが、夏~秋は茨城、栃木、群馬のものが店頭に並びます。もちろん夏場は地元産ものも出回ります。
〔栄養素〕
94%が水分なので水分補給が必要な夏には適しているとも言えますが、目立ったビタミン、ミネラルはありません。
ですが、あの“茄子紺”と呼ばれる光沢ある紫紺色は、しっかりと太陽のパワーを受け止めています。ナスの色素成分はアントシアニン系のナスニン。動脈硬化やガン予防に効果があると言われています。できるだけ皮を残したまま調理してくださいね。薄いので食感にもあまり影響しません。
〔保存方法〕
南国生まれなので寒さと乾燥が苦手。ラップに包んで冷蔵庫の野菜室で保存してください。
直接風にあたると、しわがよってしまいますのでご注意を!
〔食べ方〕
・美味しいナスの選び方
ヘタが黒く切り口が瑞々しいもので、トゲが硬くて痛いくらいのものを選びましょう。皮に色ツヤと弾力があり、持ってみて手応えと重みがあるものが良品です。
・あく抜きのコツ
イタリア料理では、ナスに塩を振って出てきた水を拭くことであくを抜きます。こうすると水を含むこともないので、水っぽくなりません。
・干しナス
夏の太陽を利用して干しナスにする方法も。
調理方法に合わせて適当に切り、ザルに並べて天日に干すと、2~3時間の半干しでもうまみがアップします。午前10時から午後2時頃をねらってください。揚げ物や炒め物にしても油はねしにくく、調理時間も短縮できます。
〔仲間たち〕
日本に伝来した歴史も古いので、地方ごとに様々な大きさ、形のものがあります。現在は長卵型の中長ナスが主流ですが、ここでは在来品種をご紹介します。
・加茂なす
京都上加茂地域で栽培されている丸ナス。直径は12~15㎝。肉質は細かく、ずっしりとした重みがあります。田楽や揚げ物に。
・水なす
大阪泉州岸和田の特産。絞ると水がしたたるほど水分が多く、浅漬け用のナスとしての品質は最高。
・小丸なす
山形県鶴岡の民田なすや、出羽小なすなど。重さ10~20gで皮は薄くて柔らかです。辛子漬けで有名です。
写真は山形の小丸なす、うす皮なす。
・長なす
西日本で人気があり、長さ20~25㎝。皮は比較的硬いが実は柔らかい。焼きなすにするとふっくら美味しい。
左から、長なす、普通の中長なす、小丸なす(うす皮なす)、米なす。家族のようです。
愛媛の絹皮なす。巨大ですが、キメが細かくとても滑らかななす。
淡泊な味わいが日本人に好まれるナス。焼き物、煮物、揚げ物、色々な調理方法に向きます。また、スポンジ状の柔らかい身はどんな味付けにも馴染みます。あっさり和風だし、トマトソースやチーズ味、中華風のピリ辛もいけますね。味を吸収するということは、もちろん油も!カロリーは少々気になりますが、油を吸ってコクが出たナスも罪作りな美味しさ。
さてさて、皆さんはどんなお料理でナスを美味しくいただきますか?
【参考文献】
草土出版『花図鑑野菜+果物』
高橋書店『からだにおいしい野菜の便利帳』
(文 食素材研究部会 成田浩子)