こんな本を読みました

気ままで偏りのある読書忘備録。冒頭の文章は、読んだ本からの引用です。

『細雪』(谷崎潤一郎)

2018-04-14 | 近代小説
「そのお婆ちゃんの日本語いうたらなあ、この間もうちに『あなた
キノドクでごぜえます』云うねんけど、発音がけったいで早口やさ
かい、『あなたクニドコでごぜえます』と聞こえるねんわ。そんで、
うち、『わたし大阪です』云うてしもてん」


 少なくとも、タイトルを知らない人はいない谷崎センセの代表作のひとつ。何より、その映像化による浸透
効果もあるだろう。「日本における『よきもの』はことごとく不可逆的な滅びのプロセスのうちにある。だか
ら私たちの最優先の仕事はそれを哀惜することである」と語られたとおり、半世紀以上を隔てた今ではほぼ見
ることのできない美しき日本人のありようが、文字だけでなく映像に残されていることはありがたい。小説中、
登場人物たちが当たり前に持ち合わせている教養・・・普通に和楽器をさらい舞をたしなみ歌を詠み美しい手
紙をしたためる光景には、その都度感嘆せずにおれない。
 ・・・て、かなり小説の文体に引っ張られてるか、今!?(いや及ばんどころかかすりもしていないけど)
ちょっと前に見たドラマ「平成細雪」(残念ながら原作の格調はほとんど失われていたにしても、人間はよく
描かれていて好感)がきっかけで、数十年ぶりに再読したこの本。少女時代には理解しようもなかった大人た
ちの心の機微が思った以上にリアル。しかも完璧なこてこて関西弁。こればっかりは、時代を超えてもあるあ
るということが多く、「ほんま、この人らおもしろいわあ」と身近に感じられたのである。共感できるかでき
ないかは別として。
 で、映像化しても尺の関係でカットだわな、と思うのが(少なくとも観た三作にはちらりとも出てこなかっ
た)二女幸子邸のお隣のシュトルツ一家、四女妙子の弟子のキリレンコ一家との交流。そのカルチャーギャッ
プもおかしく、したたかな立ち回りを見せる妙子が実はひょうきんで物真似上手というのも、小説を読んでの
拾い物であった。これだけ生き生きと人々が描けるのは、モデルありきとはいえやはり文豪ならではの観察眼
と再現力ゆえなんだろうな。会話がとにかく楽しかった。
 食べ物であれ景色であれ、季節ごとに「どこそこのなんとか」を愛でるのは関西人のブランド好きゆえ?お
かげで今年の京都の桜は、ことのほかありがたく拝見できた気がする。

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2 コメント

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Unknown (まさぽん)
2018-04-18 10:15:21
細雪かあ、どんな内容だっけ?(^_^;
さんざん観た気がするんですが、
残らない、のかな・・。
あ、読んでませんがね。
Unknown (うさいぬ)
2018-04-20 17:51:25
これもストーリーというより
雰囲気を楽しむ小説?
ディティールが面白かったです。
あ、これもカタルシスはないですよ〜
映画は、日本文化好き、きもの好きには
なかなかグッとくるものがあります。
といいつつ、私もずーっと昔に観て
すっかり忘れておったわけで^^

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