こんな本を読みました

気ままで偏りのある読書忘備録。冒頭の文章は、読んだ本からの引用です。

『銀の匙』(中勘助)

2017-02-23 | 近代小説
そうしたら富公は意外にも忽ちへなへなとして「いやだあ、乱暴するんだもの」といいながら
額をおさえてめそめそ泣きだした。


 以前感想を書いたアンソロジーで、ピックアップしたことがある本作。しかしその部分ではあまりにも
頼りないおぼっちゃまだった「私」は、成長に従い男らしく勇ましくなっていく。その変貌ぶりは唐突過
ぎる気もしたが、回想とはそんなものなんだろう。表の顔は変わっても、幼少時の繊細さを内包していた
からこそのこの文章なんだなあと納得できる。
 で、引用の文は、読んで大笑いした箇所。アンソロジーで読んだ部分では、幼い「私」のあまりに内気
な行動(ほしいものがあっても言い出せずお手伝いさんの袖をつかんでうつむくだけ、的な)を中森明菜
の「セカンドラブ」の原点ここに見たり!と悦に入っていたのだが、こちらは成長後。なんと小学校でぐ
んぐん成長した私は、お調子者の富公に一発食らわせるのである。「富公は内心びくびくしながらも頼も
しい味方の振舞に力を得て「こら、貴様生意気だぞ」といって寄ってきたので私はいきなり布袋竹で真向
をくらわしてやった」(かっこいい!)に続く、引用は調子に乗っていた富公の反応である。この仕草、
セリフ、コントやん!既視感のあるドリフあたりのコントはこれが原点になってるのでは・・・と思わず
にいられない。
 ほんとはもっと心洗われる美しい表現などにふれるべきなんだが。(この時代の文章は、やはりとても
好き)あまりにもおもしろすぎて、一番印象に残ってしまったのがここなのであった。
しかもこれ読んだの、実は昨年の話ね^^;
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『夫のちんぽが入らない』(こだま)

2017-02-23 | ルポ・エッセイ
世の中の女性は本当にちんぽが入っているのだろうか。そんなことってあり得るのだろうか。
それすら疑わしくなるほど未来が見えなかった。



 話題書としてタイトルを知った時、「ちんぽって言いたいだけちゃうんか!」と手にとる気になれな
かった。でも、私がとても惹かれているブロガーさんがいたく感動したもようで、おすすめ書に挙げて
いたので、ポチってしまった。別に書店でレジにもっていく勇気がなかったわけではない。(ほんまか?)
 感想・・・これが、実は難しい。自分の身に起こったことを淡々と書き綴るこだまさんの文体は確か
に読みやすくて無駄がなく、引き込まれる。テーマの一件にはじまり、次々とハードな試練が夫婦の人
生を席捲していく。芯のある文体ほどに、ふたりとも強くはない。静かで達観した語り口にだまされそ
うに(?)なるが、けっこう滅茶苦茶なこともしてしまう。一番もどかしかったのは、こだまさんが完
全に「閉じて」いること。もちろん、その背景は語られ続けたし、そういう彼女だからこそ紡げたストー
リーである。だから、表題のごとく「届かない」「入り込めない」むずむずを感じるのも、多分想定の
範囲内。爽快感がないのが私小説の真骨頂なのだ。ただ、最後の1ページに凝縮された思いはすとんと
心におさまったし、共感も感動もした。葛藤の末にたどりついた境地、勝ち得た強さ。うんうん、声の
大きい人の脇に歩み寄ってささやきたくなる、そんな主張である。やっぱりうまいんだな。
 たしかに、こんな文章が書けたらなと思う。あえて言うなら、もう少しサービス精神というか、軽妙
な笑いがほしかったな〜と思うのは、やっぱり関西人だからかしら。その点は「ちんぽ」に頼りすぎの
感あり。
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『圓太郎馬車』(正岡容)

2017-02-08 | 近代小説
ものの「真」を写すこと。
ものの「姿」をマザマザと活けるがことがごとく写し取ること。
それこそ「芸」の奥儀である。
(『寄席』より)


 知る人ぞ知る、寄席芸能研究家であり作家の正岡容(いるる)。…て、私はしらなかったんだけどね^^;
江戸落語に魅せられつつある昨今、明治から大正、昭和を駆け抜けた名人たちの人生を切り取ったこの小説は
実に興味深く、読むほどに感じ入った。て、創作か評伝か、実は現段階で理解していないのだけど^^;
 短編を連ねた本書、抜粋は一番の長編(?)『寄席』の主人公、今松が流れ流れた先で出会った大名人、
柳桜師匠から受けた言葉。本当はこのあとに続く、「芸である以上、馬鹿正直に写してしまうばかりが能じゃ
ない。目分量でいらないと思うところはどんどん苅り込め、略してしまえ。また適当に美しく愉しいものにあ
げることをも忘れるな。その要領は自分で悟っていくよりしょうがない」(意訳)に深くうなずいたのだ。
 ほんっとええこと言わはる。自分は全く精進が足りない。(芸人じゃないけど、どんな仕事にも通じるもの
じゃないだろうか)
 でもって、正岡容氏にいたく興味をもったのだが、著書や評伝、再販されないかな〜

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最近の読書事情

2017-01-05 | そのた
あけましておめでとうございます。

旧年中は・・・すみませんでしたっ!
と、いきなり謝罪から入る新年もいかがなものか。
いや〜、放置にもほどがあるにもかかわらず、
ポツポツとご訪問くださる方もいるようでたいへんたいへん申し訳なく。
なかなか更新する気力と時間がもてない日々が続いており、
閉鎖も考えたのですが、もともと
「読んだことを忘れてまた同じ本を買って(借りて)しまう」という
ボケ封じの覚書として始めたこのブログ、本当に必要になるのは
ますます私の頭の中の消しゴム(懐)が勢いを増すこれからだろう!
と思い直し、がんばって続けることにいたします。

とはいえ、ここ数カ月も決して読書をさぼっていたわけではなく
積もり積もっておる。なんなら感想書く気で画像だけ取り込んでるのもある。
さーて、どこから始めるか・・・
とにかく益体ない独り言のような、やっつけ仕事のような
更新が続くかもしれませんがご容赦くださいませということで。

ひとまず言い訳と謝罪の更新でした〜!
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『ヘリオット先生の動物家族』(J・ヘリオット)

2016-09-14 | 現代小説
「ヘリオットさん、この犬、変わりましたでしょ」

 古本フェアで何気なく手にとった一冊。イギリス・ヨークシャーで獣医師として活躍するヘリオット先
生の日々を描いたもので、本来、ルポやエッセイに分類すべきところだけど・・・あまりにもドラマティ
ックなので、小説にしてしまった。いやあ、買おうか迷ったけど、当たりの本だった。
 獣医といっても、少し昔のイギリスの田舎、診るのは牛や馬がほとんど。事件らしい事件が起こるわけ
でもないが、オムニバス的に綴られた日常のエピソード、ひとつひとつが味わい深い。動物家族といいつ
つ、動物と向き合う人々を描いているんですな。どうしようもなくむかつく人間もいるし、幸せを祈らず
におれない真摯な人間もいる。ヘリオット先生はときに情けなくもあるけれど、その視点のやさしさ、器
の大きさは全編から伝わってくる。淡々とした描写がいいんだな。
 この本は電車のなかで少しずつ読んだのだが、途中、たまらず涙をこぼしてしまったことが2回。心に
しみいるエピソードがいくつもあった。引用は私自身の関心ごとのひとつ、「保護犬」問題を実に感動的
に描いた一作より。ああ、今思い出すだけで泣きそう。
 軽妙な文体も読みやすいと思ったら、元上野動物園の名物園長、故・中川志郎さんの訳だったところも、
一粒で二度おいしい感じ。
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