こんな本を読みました

気ままで偏りのある読書忘備録。冒頭の文章は、読んだ本からの引用です。

『夢違』(恩田陸)とやっちまったことなど

2017-04-03 | 現代小説

「夢はどこからやってきて」
岩清水がぽつんとつぶやいた。
「どこへ行くんでしょうね」

(上の『ヘヴン』については後述。画像が消せない〜^^;)
 直木賞おめでとうございます!の恩田さん。この人の文体、醸し出す雰囲気が好きで定期的に読みたく
なるのだけど、読後の満足感にはなかなか繋がらない。この小説もな〜「夢札を引く」という科学の力で
夢を視覚化するシステム、予知夢をみることでカリスマ化された結衣子というミステリアスな存在、繰り
返し現れる八咫烏や吉野の桜といったモチーフなど、続々させる駒は揃っていてぐんぐん読み進められる
のに・・・え?という終わり方が残念。風呂敷が〜畳まれない〜
 実はこれ、以前に読んだよなとわかっていつつの再読。しかし見事に内容を忘れていて新鮮な気持ちで
読めた(苦笑)。初回に読んだ時にはいったことのなかった奈良の元興寺など、今回は比較的最近に訪れ
たこともあり、より身近にイメージできたのが収穫かしら。私も毎回面白い夢を見るので、やはり夢の世
界には興味がある。「夢は外からやってくる」という、無意識につながる意識の世界観は非常に興味深か
った。だけに〜「で?主人公は結局・・・?」と思うのは、私の読解力不足なのか〜?

 で、再読といえば。この本と一緒に借りて「やっちまった」感に苛まれたこちら。

 なんとほぼ3年前に新書版(同じく図書館で借りた)で読み、やはり同じ感想を抱いたことを、読んで
から思い出した。2重にやっちまった。
 こういうことがないようにとつけ始めた読書記録なのに〜・・・いや、こうして確認できるのなら効果
ありなのか。3年たっても全く成長がないというか、むしろ退化している自分に愕然である。

 このところ読んでもアップしていない本も多いのだけど、タイトルだけでも覚書として記録しておこう
とあらためて思いました。(といいつついつになるのか、次回更新^^;)
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『こちらあみ子』(今村夏子)

2017-03-01 | そのた
「すっぱいすっぱいすっぱい」と言いながらぴょんぴょん跳ねた。
それがいつの間にかスキップにかたちを変えて「あみ子のは地団太
じゃ」と、後ろをあるく兄が笑った。


 ひえ〜なんて心がひりひりする物語を書く人なんだろう。のびやかに楽しく生きるあみ子ちゃんの、
幸福と不幸。周囲の痛みと悲嘆。生きる楽しみは、やがて生きにくさへ。その間合い、エピソードの
連ね方が絶妙で、こちらは読んでいるだけで胃がキリキリ痛みそう。みんな少しずつ不器用なだけで
誰も悪くないのにな。客観的に見れば目もあてられない日々のなかにも、少しホッとする関係性があっ
たことと、現在のおだやかさが救い。抜粋は、そんなあみ子が一番幸せだったころの記憶。追憶のタ
イミングがまた絶妙で、やりきれなさが増す。ああ、あみ子ちゃんもともえ学園(@トットちゃん)
に行ければよかったのに。
 もうひとつの収録作品、『ピクニック』もやさしさと残酷さが入り混じった、これまた心がざわつ
く物語だった。芸人との恋仲話を繰り広げる七瀬さんに乗っかり「応援」を続ける同僚のナナちゃん
たち。七瀬さんの健気さをみんなで愛するほのぼのとした楽しさと、噓の崖っぷちを並走することで
きっと見下げる気持ちもある底意地の悪さの表裏一体感は、いかにも女子あるあるって気がするので
ある。そういう揺さぶり方が、とっても巧みだと思った。
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『銀の匙』(中勘助)

2017-02-23 | 近代小説
そうしたら富公は意外にも忽ちへなへなとして「いやだあ、乱暴するんだもの」といいながら
額をおさえてめそめそ泣きだした。


 以前感想を書いたアンソロジーで、ピックアップしたことがある本作。しかしその部分ではあまりにも
頼りないおぼっちゃまだった「私」は、成長に従い男らしく勇ましくなっていく。その変貌ぶりは唐突過
ぎる気もしたが、回想とはそんなものなんだろう。表の顔は変わっても、幼少時の繊細さを内包していた
からこそのこの文章なんだなあと納得できる。
 で、引用の文は、読んで大笑いした箇所。アンソロジーで読んだ部分では、幼い「私」のあまりに内気
な行動(ほしいものがあっても言い出せずお手伝いさんの袖をつかんでうつむくだけ、的な)を中森明菜
の「セカンドラブ」の原点ここに見たり!と悦に入っていたのだが、こちらは成長後。なんと小学校でぐ
んぐん成長した私は、お調子者の富公に一発食らわせるのである。「富公は内心びくびくしながらも頼も
しい味方の振舞に力を得て「こら、貴様生意気だぞ」といって寄ってきたので私はいきなり布袋竹で真向
をくらわしてやった」(かっこいい!)に続く、引用は調子に乗っていた富公の反応である。この仕草、
セリフ、コントやん!既視感のあるドリフあたりのコントはこれが原点になってるのでは・・・と思わず
にいられない。
 ほんとはもっと心洗われる美しい表現などにふれるべきなんだが。(この時代の文章は、やはりとても
好き)あまりにもおもしろすぎて、一番印象に残ってしまったのがここなのであった。
しかもこれ読んだの、実は昨年の話ね^^;
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『夫のちんぽが入らない』(こだま)

2017-02-23 | ルポ・エッセイ
世の中の女性は本当にちんぽが入っているのだろうか。そんなことってあり得るのだろうか。
それすら疑わしくなるほど未来が見えなかった。



 話題書としてタイトルを知った時、「ちんぽって言いたいだけちゃうんか!」と手にとる気になれな
かった。でも、私がとても惹かれているブロガーさんがいたく感動したもようで、おすすめ書に挙げて
いたので、ポチってしまった。別に書店でレジにもっていく勇気がなかったわけではない。(ほんまか?)
 感想・・・これが、実は難しい。自分の身に起こったことを淡々と書き綴るこだまさんの文体は確か
に読みやすくて無駄がなく、引き込まれる。テーマの一件にはじまり、次々とハードな試練が夫婦の人
生を席捲していく。芯のある文体ほどに、ふたりとも強くはない。静かで達観した語り口にだまされそ
うに(?)なるが、けっこう滅茶苦茶なこともしてしまう。一番もどかしかったのは、こだまさんが完
全に「閉じて」いること。もちろん、その背景は語られ続けたし、そういう彼女だからこそ紡げたストー
リーである。だから、表題のごとく「届かない」「入り込めない」むずむずを感じるのも、多分想定の
範囲内。爽快感がないのが私小説の真骨頂なのだ。ただ、最後の1ページに凝縮された思いはすとんと
心におさまったし、共感も感動もした。葛藤の末にたどりついた境地、勝ち得た強さ。うんうん、声の
大きい人の脇に歩み寄ってささやきたくなる、そんな主張である。やっぱりうまいんだな。
 たしかに、こんな文章が書けたらなと思う。あえて言うなら、もう少しサービス精神というか、軽妙
な笑いがほしかったな〜と思うのは、やっぱり関西人だからかしら。その点は「ちんぽ」に頼りすぎの
感あり。
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『圓太郎馬車』(正岡容)

2017-02-08 | 近代小説
ものの「真」を写すこと。
ものの「姿」をマザマザと活けるがことがごとく写し取ること。
それこそ「芸」の奥儀である。
(『寄席』より)


 知る人ぞ知る、寄席芸能研究家であり作家の正岡容(いるる)。…て、私はしらなかったんだけどね^^;
江戸落語に魅せられつつある昨今、明治から大正、昭和を駆け抜けた名人たちの人生を切り取ったこの小説は
実に興味深く、読むほどに感じ入った。て、創作か評伝か、実は現段階で理解していないのだけど^^;
 短編を連ねた本書、抜粋は一番の長編(?)『寄席』の主人公、今松が流れ流れた先で出会った大名人、
柳桜師匠から受けた言葉。本当はこのあとに続く、「芸である以上、馬鹿正直に写してしまうばかりが能じゃ
ない。目分量でいらないと思うところはどんどん苅り込め、略してしまえ。また適当に美しく愉しいものにあ
げることをも忘れるな。その要領は自分で悟っていくよりしょうがない」(意訳)に深くうなずいたのだ。
 ほんっとええこと言わはる。自分は全く精進が足りない。(芸人じゃないけど、どんな仕事にも通じるもの
じゃないだろうか)
 でもって、正岡容氏にいたく興味をもったのだが、著書や評伝、再販されないかな〜

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