本家のブログでご存知の方も多いでしょうが、
先日より群馬チームの使っている、通称 魔法の水 についての賛否が問題になっているようです。
自分のブログでも度々登場した 魔法の水 について、自分なりの考えを書かせていただきます。
まず、この水ですが、薬品ではありません。
ある植物から油を抽出するときに副産物として出る芳香水ということです。
製造元によると入浴剤としてリラックス効果を得るために販売している物だそうです。
完全に植物由来の成分を削り材の水分として使うことで、ただの水以上に削り材の組織に浸透するんじゃないか?
こんな程度の考えで、本家の詳しい考えも聞かずに別ルートで入手した魔法の水の原液?を入手したのが始まりでした。
今年になって入手した地檜に、最初の本格的な使用を始めましたが、
この檜、それ程いい材質ではありませんでした。
一番の問題点は、薄く削ると横方向の繊維がバラバラになり、そもそも計測ということができなくなること。
米ヒバですと、柔らかすぎる材でなければ水道水に浸す・濡れ布巾で包んで密閉、
の方法だけで(要するに削り材の水分量が程よければ)自分レベルでは横方向のバラケが気になるレベルではないのです。
しかし檜では、水分量が程よくても、材の質によって横方向のバラケ方は様々で、
5ミクロンを下回るような削りに対応できる檜材はそうそう無い、という認識でした。
しかし自分の元に有るのはこのような物だけ。
植物由来の水分で、何とか良材に近づけないか?との思いでの試行でした。
結果から言うと、この水だからこその効果と感じているのは二点ほど。
まず横方向のバラケがかなり少なくなる。
このことで薄く削った時に計測ができる鉋屑が出るようになること。
二点目は刃当りが優しくなること。
これによってチャレンジの回数が数回多くなるようです。
議論の焦点になっている、これを使うと薄くなる。
については計測値がシビアになるほど効果が無くなる印象です。
20ミクロン程の毛羽立った削り華が、数ミクロン薄く計測されることはあるようですが、
一桁突入からの削りでは、シックネスゲージの誤差程度の効果?しかないと思っています。
(正直、先日の練習会でも自分は部分的に5ミクロンまでしか削れていません。)
この様な結果を出すには、一にも二にも削り材以外の要素が揃っていないとダメなようです。
10ミクロンが9ミクロンになることはあっても、
5ミクロン以下の削りはいくら削り材に対する工夫をしたところで刃が・台が切れなければ結果は出ません。
先日の練習会でも自分の削りがそれに及ばなかったこと、5ミクロン以下の削りをやってのけた方々も
研ぎ直しをしながら調子を上げてあの結果を出したところからも、
この水を使えば薄くなる、とは思っていないようです。
薄削りには大事な要素が4つあると考えています。
1つ目は 鉋刃
鋼の質や火作り・焼き戻し温度など
2つ目は 研ぎ
人造・天然・研磨剤、先研ぎ・平面研ぎなど。砥石以外の物で最終仕上げをなさっている方もいるようです。
3つ目は 台
一枚板・積層・樹脂の注入や金属の補強。
下端の漉き取り方・表馴染みの当て方・硬さ。
4つ目に 削り材
檜か?米ヒバか?湿り具合は?
薄くてたわまないように台木に張ったり。
自分の感覚では、鉋刃にこだわるように、研ぎに工夫を凝らすように、
台の精度・狂わなさに工夫を凝らすように、
削り材にも工夫をして、自分の手持ちの材料を薄削りに対応できる材に育てているつもりです。
多くの削りストが削り材の質の重要さはご存知だと思います。
それぞれが工夫をして、自分の削り材をさらに削りやすくしようと努力をしていることと思います。
自分としては、研ぎの工夫や台の工夫と同一線上の工夫として、魔法の水を使ったわけです。
現段階では最終的にこの水の使用の可否がどうなるかはわかりませんが、
薄く削るための工夫をみんなで楽しむのが削ろう会だと理解しています。
その中で一つの事項を禁止にするのは、多くの実証を行い実証結果を明らかにして、
くれぐれも慎重に判断して頂きたいと思っています。
刃・研ぎ・台などの工夫と削り材への工夫が同一線上のものであると認められること、
そして 魔法の水 がその範疇にあると認められることを願っています。