お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

併読のパワー:注文の多い料理店

2010-07-29 | about 英語の絵本

The Restaurant of Many Orders

山に狩りに来た二人の紳士が、森の中で、日暮れて道に迷ってしまいます。気味の悪い風が吹き、猟犬もどこかに消えてしまい・・・。強がっていた二人も内心だんだん怖くなってきたところへ・・・「あっ、こんな山奥にレストランが!」

今日の絵本は、宮沢賢治さんの「注文の多い料理店」です。

お話のディテールは憶えていなくても、二人の紳士がだんだん洋服を脱いで裸になり、バターや塩を身体に塗りこむ場面は、たいていの人がご存知と思います。なんともシュールな、じわじわと怖さが沁みてくる物語です。

英訳版(今日ご紹介している佐藤国男さんの版画つきバ―ション)は、イラストもお話も、小さな子たちにもわかりやすく作られています。それでも全編を貫く、えも言われぬ気味悪さ、怖さは、しっかりとよく表現されていて、その意味ではやや大きくなった子ども向きかもしれません。うちの娘はかなり大きくなるまで、「怖いね、このお話。怖いよね」と言いながら、いつも恐る恐る読んでいました。

怖いといえば、うちの娘は実に『怖がり』で(小さい頃だけでなく、実は今でもかなりの怖がりです)、子どもの頃はディズニーのアニメ映画でも、怖がってベソをかいてしまうほど。『白雪姫』は魔法使いのおばあさんが怖くてダメ。『シンデレラ』は猫がネズミに追いかけられる場面が怖くて泣いてしまう、という具合で、子ども向き映画でさえもなかなか全編通して見ることができませんでした。

プリスクールのサマープログラムでは、毎年、毎週水曜日がムービーデイ(子どもたちが好きなビデオを家から持参して、みんなで観る)でした。ところが、他の子たちは大喜びで楽しみにしているというのに、娘はどんな映画が上映されるか心配で怖くて行かれず、夏の間ずっと水曜日はお休みしていました。4年も通ったプリスクールで、4年間ずっと夏のムービーデイをお休みしていたので、先生方の間で今でも笑い話になっているほど。どうなる事やら・・・と思いましたが、今では普通の大人になって社会生活を送っています。怖がりのお子さんをお持ちのお母様は、どうぞご安心ください。

そんなわけで、この「注文の多い料理店」の絵本は、娘には数えるほどしか読み聞かせなかったのですが、が、その1-2回がよほど印象的だったのでしょう。かなり大きくなっても実にしっかりと内容を憶えていて、驚かされました。

宮沢賢治さんの絵本は、お話もですが、どれも切り絵や版画の挿絵が素晴らしく、いかにも日本の絵本という素晴らしい作品ばかり。でも、小さい子にはちょっと難しいかもしれないという気がします。

余談ですが、私は宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ・・・」の詩が大好きです。でも、小さな子どものころには「雨ニモ負ケズ・・・」の詩の冒頭の2行しか知らず(日本人ならきっと誰でも知っている?)、日本式の根性モノかぁ・・・と誤解して敬遠し、子ども向けの文学全集でも彼の詩は全部読み飛ばしていました。その全集に宮沢賢治の詩にならんで出ていた「二羽の山鳩がやさしい心で愛し合いました。その余は申しあげかねまする。」という詩は、ジャン・コクトーだったか・・・、訳も分からず暗唱し、今でも憶えているというのに・・・。子どもなんて実にきまぐれ。私にとって幸いなことに「雨ニモ負ケズ・・・」は、その後、思春期を過ぎて読み返す機会があり、今でも「・・・サウイフモノ二 ワタシハナリタイ」の最後の2行まで繰り返し読みました。大人になって読む機会があってよかった!

そうなんです。本との出会いってタイミングが大事!タイミングが悪いと、好きにならないだけじゃなくて、ちゃんと読まないのに嫌いになっちゃうことまであるんですもの。だから本は無理強いしないことはもとより、読みたいタイミングに読みたいものにさりげなく出会えるようにしてあげたい。さりげなく・・・言うは易しですが、子どもが小さいうちは親はときには「演出家」です。



コメント
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