The Snowman
The Snowmanは原作の絵本よりも、きれいな映像と音楽で評判をさらったビデオ作品として知られているかもしれません。
1978年に出版されたレイモンド・ブリッグズ原作の絵本を、1982年にダイアン・ジャクソン監督が短編のアニメ―ションに制作し、クリスマス・イブにテレビ放映して大成功を収めました。
少年が昼間作った雪だるまが、深夜、その少年のところへ遊びに来ます。二人は、大人たちを起こさないように声をひそめて家の中で遊びまわり、それから外へ出てさらに遊びまわったあと、遂には一緒に空に飛び上がり、街の家々の屋根を越え、海に出て、海上はるかな北極まで旅します。
・・・と、こう描写しましたが、実は、これ、絵だけで物語を描いた言葉のない絵本。言葉がないために翻訳出版が容易だったためでしょう、世界中で刊行されて人気を博しました。
日本では1978年に『ゆきだるま』の邦題で初版が発行され、1995年に『スノーマン』と改題されて再出版されています。アニメーションビデオでは、雪だるまと少年が空を飛ぶシーンで流れる歌"Walking in the Air"(『空を歩いて』)が大ヒットしました。
さて、北極に到着した少年は、雪だるまのパーティに招き入れられ、そこでサンタクロースからマフラーを贈られます。それから少年と雪だるまは、また、空を飛んで家に帰り、少年は雪だるまに「おやすみ」を言って眠りにつきます。
翌朝、目覚めた少年が雪だるまのところに駆けつけると、そこには朝陽に溶けてしまった雪だるまの跡だけが残されています。・・・みんな夢だったの?いいえ、贈られたマフラーは少年の手に残されていました。
クリスマス・イブの真夜中に夢のような超自然的な体験をする、というのは、クリスマスをめぐる物語の定型のひとつです。クリスマスの朝のきらめく陽ざしに、夢はあとかたもなく消え去ってしまうのですが、でも、主人公の掌には小さなギフトが、心の中には大きな大きな想い出が残されている・・・。
よく知られているところでは、ディケンズの中編小説『クリスマス・キャロル』がありますし、今週ご紹介した『くるみ割り人形』も同じ仕立ての物語ですね。