海猫日和

色々と思うこと,見たことについてとりあえず気の赴くままに書いてみる.

ポタモゲトンの話

2008-09-10 | 植物あれこれ
先日のコメント欄に出てきていたのでちょいとネタにしてみよう.


ポタモゲトン


何やら怪獣のような名前だが,これはれっきとした水草の名前(属名)である.まあ,そんなこと言うと,爬虫類やら魚の学名でもこんな感じのはあったと思うし,関係ないところで言えば,丼ものだってそうだろう.プルコギ丼とか.カタカナに直すとプルコギドン.怪獣みたいですね.




ええ,話を戻しまして.

正式には,被子植物門(Magnoliophyta)単子葉植物綱(Liliopsida)オモダカ目(Alismatales)ヒルムシロ科(Potamogetonaceae)の中の,ヒルムシロ属(Potamogeton)のことを指す.ちなみに人間は,脊索動物門(Chordata)哺乳綱(Mammalia)霊長目(Primate)ヒト科(Hominidae)ヒト属(Homo)に属する,ヒト(Homo sapiens)という生物なわけだ(本当はもうちと細かく分かれているのだが,めんどいので一部省略).現代において生物には,基本的にこういう位置づけで種として名前が付いている.これはリンネという人によって提唱されたもので,属名と種小名の2つで種を表すので,これを「2名法」という.

なんだか落語の「じゅげむ」みたいだが,分類というのはそういうもんなので仕方ない.

じゅげむじゅげむごこうのすりきれz(ry


だからっていきなりじゅげむの暗唱始める奴があるかい.
さて,話がそれたので戻そう(またかよ).


で,このポタモゲトン,というかヒルムシロ属だが,ヒルムシロと聞いてパッと姿が浮かぶ人はまずおるまい.茎は細く,葉は対生(互生でした.すみません).水面に楕円形の浮き葉を出すもの(ヒルムシロ,ホソバミズヒキモなど)と,浮き葉を出さない種(エビモなど)がある.名前の由来としては,ヒルがこの葉の上で寝るからヒルムシロなんだそうですが,・・・ホンマかいな.

ちなみに簡単に水草を型に分けると,湿地性,沈水性,抽水性,浮葉性,浮遊性に分けられる.簡単に説明を付けると,湿地性というのは根元が水に浸かっているだけで,あまり陸上植物と変わらない.抽水性は,根は水底にあって茎や葉を伸ばして水面上に出るタイプ.浮葉性は,根は水底に着いていて葉を水面に浮かべるもので,浮遊性とは,根が固定されていないもので,全体が水に浮いているもの.沈水性とは,全体が水に浸かっているものと言える.どれもこれも例外もあるし,これでかっちり分けられるかというと,そうでもない.科や属と言った分類とも一致しないところが多い.が,おおざっぱな目安と言うことで.

つまり,ヒルムシロ属には,沈水性のものと浮葉性のものがあると言うことですね.

うーん,話が纏めづらくなってきました.そしてあまり畑違いの事ばかり詳しくなってどうする俺.

まあ,面白そうなので別にかまわんのですが.


そんなわけで,ポタモゲトンというのはこういうシロモノなわけですが.ビオトープやらアクアリウムに多少は使われるそうなんですが,そっちはあまり知らないので割愛.なんだかんだと最近の世の中で湿地やら田んぼやらが減少していく中で,こうした水草というのも絶滅に瀕したり減ってたりするわけです.だからどしたと言われてもちょいと困るわけですが,色々な生き物がいるんですよと言うことで.

何か即効的に役に立つとか,そういうシロモノじゃないのは確かなんですが,役に立つたたねえはその辺に置いときまして,昔っから人の生活圏に近いとこにいたお隣さんなわけですから,こういう奴もいるんだなあ程度にでも認識していただけるとありがたい.

まあ,環境問題がどうのとそういう次元の話をする気はござんせん.何やら異次元な話よりは,今日をどうするかっつう話の方が基本だとは思うわけで.今がある程度よくなけりゃあ息がつまっちまうのも事実なんで,今さえ良けりゃいいのかと言う気もないですねえ.

結局その辺は一気に変わるわけでもないですし,価値観なんざ人それぞれ.私は此処で好き勝手に色々書きますが,何か影響があるとは思ってないです.ま,こういう若造の戯れ言を見たり聞いたりして,何か興味でも向けてもらえれば其れは其れでいいことですし,今まで関心が無さそうなところにちょいとでも目が向くようになれば其れもまた良し.こういうものはそれでいいんです.

Veronica

2008-06-13 | 植物あれこれ
・・・と,いきなり書いても何のことやら.

「ヴェロニカ」というのは,オオイヌノフグリなどの属名である.

この名はどこから来たかというと,キリスト教系の話になってくるわけで.

キリストが磔にされることになり,十字架を背負って刑場まで歩いていったわけですが.その時に一人の女性が流れる血と汗を拭ってあげたのだトカ.で,なんとその布にキリストの顔が浮かび上がるという奇跡がおきたのです(棒読み).この女性の名がヴェロニカであると言うんですね.


どうひいき目に読んでも後世のねつz(ryです.本当に(ry.


まあ,こういう胡散臭い話はその辺に置いておくとして(あ,言っちゃったよこの人),件の花に,そのようにキリストの顔が浮かび上がっているように見えるからと言う話らしいんですが.


オオイヌノフグリ


タチイヌノフグリ



・・・・・・・うーむ.


人の顔に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見えませんねえ.

私には信心が足らんのでしょうか(棒読み).




ちなみにこの話,聖書には無いんですけどね.

何故かカソリックでは聖女として祀られている不思議.



日本名の「オオイヌノフグリ」は,実がイヌのキンタマの様に見えるからと言う(伏せろよ),そういう話で,うまく名を付けたものだと思う.蛇足ながら英名は「cat's eye」. わかりにくい学名に比べれば何とも的確な名ではないか.


犬ふぐり星のまたたく如くなり(高浜虚子)

芹薺

2008-06-09 | 植物あれこれ

御形繁縷仏の座 菘蘿蔔これぞ七種(河海抄:四辻善成)





・・・なんて歌があるわけですが.

正月7日にこれらを入れた七種粥を食べる風習があり,ご存じの方も多いだろう(蛇足ながらこれで「ななくさ」と読む.七草と書くと秋の七草を指す).


ナズナ


ミドリハコベ



ナズナもハコベも咲く季節になりました.そろそろセリも.スズナとスズシロはカブとダイコンなので,置いておくとして.

残りの御形と仏の座はというと,実は北海道には分布していない.
















・・・ホトケノザなら分布しているだろうという方,ちょっと待った.

現在標準和名ホトケノザとされているのはシソ科の植物で,これは有毒なので食べられない(まあ,北海道で分布が確認されたのはここ数年らしいが).もともとは現在コオニタビラコ(キク科)と呼ばれる種の名だったのが,別の種の和名になってしまったということらしい.ややこしいことこの上ない.ロゼットの形を仏が座る台座に見立てたと言われるが,そのままにしておけばよかったものを.

ちなみにゴギョウとはハハコグサ(キク科)のことを指し,これは本州から九州に分布している.

まあこんな話をすると,そもそも旧暦の行事なので西暦の1月時点でこれらを採集するのはちょいと難しい,という話になるわけで.越冬型のロゼット葉など,花が咲く前で成長段階のものは見分けづらいものなんですけどね.

最近では,件の季節ににスーパーで売られているとか.

山菜も詰め合わせなんかで売られていたりするし.

何というか,便利と言うか,ありがたみがないというか,そもそもその同定は正しいのかとか,そこはかとなく疑問がわいてくるのでありました.

思えばそんなお年頃.

似てる?似てない?

2008-05-26 | 植物あれこれ
花の形というのは,似ているものが結構ある.

例えば,シソ科,ゴマノハグサ科,ケマンソウ科などがある.花だけ見ていると間違えそうになることがたまにある.まあ,葉や茎や花のつきかたを見ると違うので区別はできるが.


カキドオシ.シソ科.


イヌゴマ.シソ科.


ミゾホオズキ.ゴマノハグサ科


エゾエンゴサク.ケマンソウ科.

花の形が似ているものというと,案外あるものだ.

いずれも口が広く,奥に向けて細くなっていく.

花は大きめで目立ち,入り口には特徴的な模様がある.昆虫(主にハチの仲間)を呼び寄せ,花粉を運んでもらうのだ.


ナミキソウ.シソ科.マルハナバチが入り口から入ろうとしている.

花の奥には蜜腺があり,ハチが蜜を吸っている間に体に花粉をくっつける.気付かないうちに背中に紙を貼る悪戯のようなものだ.ハチは種類によって体の大きさや舌の長さが違い,植物の側はそれに合わせて花の形を変えてきた.誰に運んでもらうかを長年かけて選んできたわけだ.

だが,ハチもさるもの.たまに花の根元をかじって蜜だけ持っていくような,そういう輩もいるらしい.植物の本来の目的である受粉が果たされないため,これを盗蜜と呼ぶ.セイヨウオオマルハナバチなどでこの盗蜜行動が知られ,在来のマルハナバチ類に受粉を頼んできた植物たちに影響が出るのではないかと言われている.在来の種が盗蜜しないということではないけども(例えばエゾオオマルハナバチでエゾエンゴサクの盗蜜が知られる.本来の受粉はエゾトラマルハナバチが主).

見方によれば共生と言えるし,また別の見方をすれば雇用主と労働者,資産家と泥棒という場合もあろう.一部のランなどでは蜜があるように見せかけてハチにただ働きをさせるという,そんな関係もある.

そんなわけで,植物と訪花昆虫との関係は今日もどこかで続いていると言うお話.

曖昧な

2008-04-25 | 植物あれこれ
だいぶ暖かく,大学近くでもヤマザクラが開き始めた.キタコブシは既に満開と言ってよく,ドロノキやミズナラも目立たないが花をつけている.気をつけていないと見逃してしまいそうだ.

反対に,草本は目立つものが多い.花の色も鮮やかなものが多く,地面を覆い尽くすかのように広がるものもあるからだ.そんなわけで,今回はその一例としてエゾエンゴサクを挙げよう.



斜面を埋め尽くすように咲くエゾエンゴサク Corydalis fumariifolia subsp.azurea
ケシ目ケマンソウ科キケマン属

漢字では蝦夷延胡索と書く.アイヌ語名は「トマ」.
和名の由来は,地中の根が漢方薬の「延胡索」に似ているからとか.

花の色は変異が多い.


空色タイプ


赤紫タイプ


アルビノ

他にも様々なタイプがある.少しずつ色の異なる花が一面に広がり,春の地面を美しく彩る.

ちなみに学名は近年変わったもので,以前はC. ambigua と呼ばれていた.たぶんまだこういう表記の図鑑やサイトが多いものと思う.

属名の「Corydalis」はギリシャ語のヒバリに由来する.以前の種小名「ambigua」は「曖昧な」という意味なので,花の色の変異が多いこと等の説明に便利だったのだが,学術的に変わったものは変わったものなので仕方ない.これはこれでネタとして使えばよい.ちなみに新しい方の種小名は「fumariifolius(Fumaria(カラクサケマン属)の葉の)」という意味になるようです.ついでに亜種名の「azurea」は「空色」の意.まあ,確かに青っぽい色の個体が多いか.

今年は咲き始めが早いので,もうタネをつけ始めているものもあった.が,まだしばらくは見頃だろう.連休が過ぎる頃には木々が葉を伸べ,春の妖精はまた地中に隠れ行く.

いわゆる一つの

2008-04-21 | 植物あれこれ
数日前にスプリング・エフェメラルというのを記事に書いた.これについてもう少し書いてみよう.あまり身も蓋もない話をするのもどうかと思うが,これは仕様なので変えられません.あしからず.

さて,北国では冬の間、地面は雪に覆われ,常緑の針葉樹以外は葉を落としている.雪がとけると地面が露出するが,一方で木々の葉が伸びるにはまだ時間がかかる.この辺りでは5月にならないと森は緑にならない.そんなわけで,早春の森の中は日当たりがよい.気温はさほど高くならず,夜は冷え込む.

Spring Ephemeralと呼ばれる植物たちは,この時季を有効に使っている.遮るものが少ない早春の森で,葉を伸ばし花をつける.競争相手が少ないのと,寒さ対策のために草丈は低い.

花は大きめで目立ち,春になって動き始めたばかりのハナアブやマルハナバチを誘って受粉してもらい,伸ばした葉で盛んに光合成をしてエネルギーをせっせと地下に蓄える.周りの木々が葉を伸べ,林床が少し暗くなる頃には花は枯れ,光合成のための葉だけを残す.その葉も夏になる前に無くなり,後の季節は地下部分の球根や根茎で過ごす.来春に花を咲かせるエネルギーを今のうちに蓄えているのだ.

言ってみれば,落葉広葉樹林に適応した生活戦略である.まあ,そう一言で纏めてしまうとロマンが薄れるやもしれぬ.が,春先の短い間,我々の目を楽しませてくれる花々の生き様というのは実に興味深いものである.

微妙な組み合わせ

2008-02-14 | 植物あれこれ


後輩がゼミにこういうものを持ってきたので,いただいてみた.

なかなか微妙な味であった.

チョコレートにさわやかさを求めるのはどうなんだろうと思いつつ.

そんなわけでシソについて少し.


シソ目シソ科シソ属に属するもので,食用になっているのは中国原産のもの.

学名で表記するとPerilla frutescensとなる.

通常食べるのは青じそと赤じその2つあり,それぞれの学名が以下になる.

P. frutescens var. crispa f. viridis
P. frutescens var. crispa f. purpurea

なんだか長ったらしいのであれだが,まあ,分類というのはこういうもんなんで仕方ない.ちなみにvar.とは変種のことを,fは品種のことをそれぞれ指している.











・・・そのうちに学名の話でも書くかねえ.ややこしいけど.














ええと.このまま終わっては全然シソの話じゃないぞ.

青じそはてんぷらにしたり刺身に添えたり,或いは色々料理に使ったりする.「大葉」の名で野菜扱いで売られていたりもする.赤じそは梅干しの色着けに使うくらいしか知らなかったが,食べる地方もあるらしい

他にも北海道白糠ではシソ焼酎が作られている.「鍛高譚」というのがたぶん全国的に売られていると思うが,それだ.

漢字で書くと「紫蘇」であり,これは中国の伝承に基づくらしい.その昔,華蛇という名医がいて,とある若者を救うために煎じた薬草がこれだと言われており,「紫」の「蘇る」薬だから紫蘇なのだとか.

なんだかとりとめのない話ですがこの辺で.

ピーナツ南京豆落花生

2008-02-08 | 植物あれこれ
さて,節分も過ぎたわけですが.

北海道に来てちょっとしたカルチャーショックだったのが,節分の豆が落花生だったという話.実家だとフツーに大豆を撒いていた.

なんでも地べたに落ちても殻を剥けば喰えるからと言うことらしい.・・・実家だとフツーに床に落ちた大豆喰ってましたけどね・・・.

まあ,其れが良いの悪いのっつう話がしたいわけではないのだが.

そんなわけで落花生の話.落花生といえば千葉県です.千葉県といえば落花生.国産の7割強を千葉県が生産している.尤も,国内に多く流通しているのは中国産だそうですが.

落花生,南京豆,ピーナツなどと呼称する事が多い.まあ,どう呼ぼうと同じものだ.ちなみに標準和名は「ラッカセイ」である.受精後,子房部分が地中に潜り込み,そこで実が熟すことが名の由来だそうだ.原産は南米であり,日本には江戸時代に中国経由で来たという.ゆでても煎ってもうまい.実家の方だとみそピーというのが売っているのだが,北海道では売っていないようだ.

名前は他にも色々あり,「唐人豆」,「地豆」,「ジーマミー」などとも呼ばれる.最後のは沖縄方言で,ちなみに沖縄では「ジーマミー豆腐」というのがあり,美味である.

ところでラッカセイに限らないが,ナッツ系には時々アフラトキシンという物質が含まれていることがある.アフラトキシンというのは,主にAspergillus flavusというカビが産するカビ毒の一種である.その昔イギリスでシチメンチョウの大量死が起きたという報告があり,これは謎の病気だと言うことで「ターキーX」と呼ばれた.現在でも「X病」として伝染病の教科書に載っている.人間では,急性中毒での死亡例が知られる.ついでにアフラトキシンは発ガン性物質であり,主に肝臓への毒性が強い.ちなみに最も強いのはアフラトキシンB1という種類.

ああ,流通に際しては各国で厳しく基準値が決まっており,安全の確認されたものが流通に回っていると言うことを書いておく.時々検出されるらしいが.















・・・あれ?
書いてるうちに話がずれたぞ.




・・・まあ,そういうこともあるよね.

食べられるか否か

2007-09-22 | 植物あれこれ
さて,人に役に立たない植物はたいてい雑草と呼ばれる.特に,作物に似ているが役に立たない物の場合,イヌを冠した名が付けられていることが多い.例えばイヌムギ,イヌビエ,イヌゴマなどがある.

この時季になると目立つ植物はこやつくらいである.
ところで,こやつはソバに似ているが,「イヌソバ」とは呼ばれない.


名を「ミゾソバ」と言う.
タデ科の植物で,湿ったところを埋め尽くすように生える.


これはタニソバという近縁種である.茎の色や葉の形,下部の葉が紅葉することなどで見分けられる.

もう少し経てば,黒い実をつける.その昔,飢饉の時にはこの植物の実を食べたという話がある.いわゆる救荒植物だったわけで,つまりは役に立たない植物では無かったと言うことだ.茎には鋭いトゲがある.また普通につける花の他,地中に閉鎖花という開かない花を持つ.これは自家受粉により自分のクローンを作るためである.他の個体から受粉して作った種子は他の動物に食べさせて散布し,一方で自分の分身を作って水辺という不安定な生息地の急な環境の変化に対応しようとする.そういう戦略を持った植物である.

この類の植物はよく似ていて,また名前も独特である.

鋭いトゲを持つことから,「ママコノシリヌグイ(継子の尻ぬぐい)」や「ウナギツカミ(ウナギ掴み)」などといった名が付けられたものもある.一度聞けば,なんじゃそりゃ,と言いたくなる.昔の人のネーミングセンスというのはある意味恐ろしい.たまたま人が喰ったからミゾソバという名になったわけで,まったく別の名になっていた可能性もある.

尤も,植物にとっては人からどう呼ばれようと大したことではないのかもしれないが.

マ○ではない

2007-07-10 | 植物あれこれ
道ばたに生える草というのは,踏まれるものである.それを前提としてそこに生える.そして,中にはそういう場所以外では生きられないものもいる.例えばオオバコがその代表格である.


オオバコのロゼット.

オオバコは適度に踏みつけられて地面が固いところに生える.ロゼットとは植物の生活型の一つである.中心に芽があり,放射状に葉が生える.葉は全て少しずつずれて伸び,中心以外では重なることはない.硬い土に根を深く張り,できるだけ葉を広げて陽光を浴びる.全体を平たく,低くすることにより,踏みつけに耐えるようになったということか.



葉を注意深く引っ張ってみると,葉の中にいくつものしっかりした筋が通っているのが分かる.これも踏みつけに耐える方法の一つである.


花が終わったあと.

花序は伸びるが,そんなに高くならない.しかも直立ではなく少し斜めに伸びる.踏まれる衝撃を小さくしたいということだろう.葉は地面にべったりで,上から遮られれば光合成はできない.だからオオバコは草むらの中では生きられず,踏みつけの強い道ばたに場所を求めた.ヒトの通行が減り,踏みつけられなくなった場所からは徐々に姿を消していく.

そして,やがては踏みつけを子孫を残すのにもうまく利用するようになった.オオバコの種は水を含むとぬるぬるし,靴底などにくっつくことができる.ヒトの移動と共にオオバコは生きるのである.

このようにヒトの近くで生きてきた歴史があり,だからヒトの方でも薬草として利用したり,茎や葉を引っ張り合って遊んだりと,そういう文化もできたのだろう.

ヒトと共に在る.望むと望まざると,彼らの選択の結果である.ヒトが歩く限り,オオバコの生もまた続くのだ.