時差

端的に時刻のずれであるが、

　地球規模では各地方での標準時の差のことを言い、宇宙規模では実際の太陽の動きと仮想の平均太陽時の差を言う。標準時はイギリスのグリニッジ時を基準として地方の標準時を決める。各地の標準時は当然ながら場所によっては太陽の動きとは一致しない。日本の標準時の場合北海道と九州では１時間くらいの差が出る。昔であれば太陽の動きに合わせて生活していたのだろうが、国規模、世界規模で情報が飛び回っている現代においては共通の時刻を共有することは必要なことなんだろう。半面太陽の動きで生活している側からすると不便でもある。

地デジ放送が始まった時、

　地デジ放送とアナログ放送が共存していて、地デジ放送の遅延が話題になった。地デジ放送とアナログ放送の時報が一致しないのである。当然、映像も1.5秒から2秒地デジ放送が遅れていた。現在は時報や時刻表示は調整して一致させているようであるが、実況放送は依然として遅れたままである。実験的にラジオの実況放送と地デジのテレビ放送を同時に見てみればわかると思う。日本全国地デジによるテレビ放送は1.5秒から2秒遅れて各家庭に届けられているのである。あまり皆さんは気にしていないようであるが、私は天邪鬼なのか気になってしょうがない。

放送をする側は1.5秒から2秒早めに情報を取得できる。

　当然現地にいる人も同様である。それから全国に向けて地デジ放送で配信される。なんか気持ち悪いのである。この時間差を利用して何か悪いことをされるのではないかと思ってしまう。1.5秒から2秒あれば一つの行動が可能である。多くの人に先んじて一つの行動ができるということは、大きな特権である。たとえば、緊急地震速報での1.5秒から2秒は重要である。これだけ時間の余裕があれば一つか二つの行動がとれる。ガスを止める、ドアを開けるくらいであろうか…。無視できる話ではないであろう。

考えてみると、情報というのは我々一般大衆に届くまで本来時差がある。

　一番最初に情報を得ているのは誰なのか、その人達はその特権を何に使っているのだろうか、その特権の使い方は正当なのだろうかと疑心暗鬼に陥ってしまう。我々一般大衆が狸か狐に化かされているのではないかと思ってしまう。そのことが表に出ることはないし、知らない間に見えないところで一番最初に情報を得た人達に牛耳られているのである。果たしてそんなことを許していいのだろうか…。そんなことはないと思う。反対にそんな情報に翻弄されなければいいと思う。多数の翻弄される人がいるから最初に情報を得た人達が特権を得るのである。

情報とは面白いものだと思う。

　情報を判断するのは自分なのである。各人が各人で自己の判断と自己の決定に従っていれば情報が新鮮であろうと新鮮でなかろうと情報そのものの真偽には関係ないのである。そして、長い目で自己の判断と自己の決心の結果を見守る気持ちがあれば、少々の時差なんて問題ないはずである。問題は、例えばコンピュータの結果にすべてを委ねてしまえば、瞬時の判断と決心が可能なコンピュータは瞬時に反応してくれるだろう。そのような世界では時差が重大なファクターとなる。これが果たして正しい方向なのかは疑問である。そして、万人がこんなことを永久に繰り返せば人間の知恵そのものがますます希薄になり、やがては消滅してしまうだろう。

例えば株の投資について

　短時間で取引して儲けを生み出す手法がある。株価が上がりそうなものを見つけて投資し、株価が上がったところで売りに出すのである。これをやって何の意味があるのだろう。本来の投資とは全く関係なく、ただのギャンブルの対象でしかない。競馬や競輪の予想をして最大限の儲けを出す考え方と何ら変わりない。こういう人には時差が重要なファクターとなるだろうが、その時差は一瞬にして消える。そこに何の意味があるのだろうか…。ただの金儲けのための手段でしかない。この時差を利用してコンピュータトレーディングで儲けることは可能ではあるが、これに一般大衆が翻弄されなければ株式は動かないし、儲けもない。

本来の目的に向かって投資したい。

　そうであれば、将来性のある自分の好きな信頼できる会社を自分で選択して投資し、その会社の発展とともに投資の成果が生まれるのが本来であろう。本来であれば瞬時のデータで状況が急変することはあり得ないし、長い目で見ればまた元の状態に戻るはずである。短期の変動に一喜一憂するのでなく、また、短期の変動に合わせて投資先をあちこちに変えるのは得策だとは思えない。そんな投資ばかりになったら株式のシステムそのものがおかしくなってしまうと思うし、既にそうなってしまっているのかも知れない。