*7
ざわめきが会場に満ちている。
放課後に希望者のみでの開催ではあるが、結構な人数が集まっているようだ。
【静琉】「盛況みたいですね」
【いなほ】「だねえ」
という事で授業が終わって懇親会。
生徒会メンバーと連れだって会場に到着した所である。
会場は立食形式で軽食の並ぶテーブルと、目玉の記念撮影ブース、更に画像のプリントを行う機材などが置かれてそれぞれに賑わっていた。
壇上にもマイクが置かれている所を見ると、誰かしらの挨拶かでもあるんだろうか?
【千秋】「会長さんは挨拶とかしないのか?」
【彩月】「ええ。式典役からは特に何も聞いておりませんので。そもそも今回は生徒側が殆ど動いていないのではないかしら」
【花梨】「まおぅ勝手放題?」
【彩月】「あまり認めたくはありませんが、実質そういう事でしょうね」
【千秋】「さくらさんは、こうと決めると一直線に突進するタイプだからな」
【いなほ】「さくらさんの通った後にはペンペン草一本残らないとか伝説がありそう」
【彩月】「あの方の学生時代は、壮絶な逸話に満ちてそうですわね」
何しろあの最強っぷり。その能力を若さに任せて解放すれば何が起こるやら。
【静琉】「でもそれが意外と違ってたりするんだよ。真央さん、学生時代はどちらかというと地味な方で」
【彩月】「じみぃ?」
【いなほ】「ほえ?」
【千秋】「そうなのか?」
地味なさくらさんとか全く想像出来ないぞ?
【静琉】「成績も中位で、課外活動もしてなくて、趣味は読書で‥‥眼鏡も掛けてたかな、そういえば」
【花梨】「眼鏡まおぅ。地味め文系っ子‥‥むぅ」
【彩月】「静琉、それは本当なのかしら。俄に信じがたいのだけれど」
俺も同意見だ‥‥全く想像できない。
【静琉】「本当だよ。急に印象が変わったのは米国へ留学してからだったかな。きっと向こうで大きな転機があったんだと思う。詳しくは聞いてないんだけど」
【いなほ】「へえ、そうなんだ~」
【千秋】「アメリカ、ねえ‥‥」
そういえば、さくらさんは本来なら向こうで留学している筈の人だ、という話があったっけ。それが何で我が家でメイドなんぞをしているのか。そもそもの疑問点を今更ながらに思い出す。
【花梨】「まおぅとステイツ‥‥むぅ」
ふと見ればメイド姫が考える表情に。
【いなほ】「どうかしたのカリンちゃん?」
【花梨】「にゅーん」
いなほの問いには答えず更に考え込むお姫様。メイドさんがそんな声で鳴いていると、周囲の方々がそわそわしてしまうじゃないですか。
聞こえる呟きには「撫でたい」「愛でたい」「モフモフしたい」「prprしたい‥‥」等々穏当でない形容も混ざっており。
【いなほ】「可愛すぎるよ。ぺろぺろしたいよ、否むしろされたい。カリンちゃんが私をぺろぺろ‥‥はうー!」
【千秋】「正気に戻れ」
アホの頭を軽く小突いておく。
そんな俺たちに目もくれず、花梨姫は会場の隅っこへ。それから懐から端末を取り出した。アレはおそらくいつぞやの衛星携帯。目にも止まらぬ親指捌きで文字列が入力されていく。
【花梨】「‥‥送信」
【彩月】「生徒会メンバーがこんな場所で校則違反をするのはどうかと思うのですが‥‥今のはメールか何か?」
【花梨】「ん」
メイド姫がこくりと頷く。
【花梨】「まおぅについて可能な範囲で情報を集めて欲しいとジョシュアに命令した」
【千秋】「命令て」
【花梨】「有益な情報が集まらない場合は、今日撮影したメイド服の画像を破棄すると通告してある」
【いなほ】「な、なんですとっっ!? そんな事されたら逆らえないよ!」
【花梨】「くくく‥‥奴の命運は我が掌中にあり」
なんだかなー。
毎回この手の脅迫を受けている姫のお父上には同情を禁じ得ない。
【花梨】「あと、念のためにお母さんにも同じメールを送っている」
【千秋】「次世代コンピューターに何をさせる気かは‥‥まあ聞かないでおこう」
【静琉】「そ、そうですね。アメリカの政府機関をハッキングとかしないですよね‥‥」
【いなほ】「カリンちゃん‥‥」
【彩月】「南初瀬花梨・オルタンシア、恐ろしい女‥‥」
【花梨】「くっくっく‥‥」
こういう時のお姫様は実にイキイキとしていらっしゃる。
とはいえ、確かに興味のある情報だ。
さくらさんの過去───それも大きな転機となった時期の。
それは決して自分達と無関係ではないように思う。何となくではあるけれど。
【静琉】「真央さんは‥‥天ヶ原さんや月城さんに昔の話はしてないんですか?」
【千秋】「ああ。特には何も聞いてない‥‥かな」
【いなほ】「思い返すとそうだね。きっかけも無かったし‥‥あと、歳の話をすると宿題がものすごく増えるし」
あー。
【千秋】「それは多分、お前の質問の仕方に問題があるんだと思うぞ」
【いなほ】「そうかなー? そんな事無いと‥‥あ、カリンちゃん何処行くのー!?」
【花梨】「会場にチョコレートファウンテンが登場~」
【静琉】「わあ! すごい! チョコレートの噴水だよ!」
【彩月】「そんなにはしゃぐ程の事では‥‥あ、お待ちなさい! 私も行きますわ!」
娘さん達は連れだって小走りに。
パーティはどうやらまだまだ盛り上がっていくようだ。
何しろこれは、さくらさん主催のイベントなのであり。
【千秋】(さて、いつになったら会えるやら)
そして会ったら何を話そうか。
楽しみな中に、ちょっと不安が混ざる。
そんな気分で俺はいなほ達の後を追った。
.......次で終わり
ざわめきが会場に満ちている。
放課後に希望者のみでの開催ではあるが、結構な人数が集まっているようだ。
【静琉】「盛況みたいですね」
【いなほ】「だねえ」
という事で授業が終わって懇親会。
生徒会メンバーと連れだって会場に到着した所である。
会場は立食形式で軽食の並ぶテーブルと、目玉の記念撮影ブース、更に画像のプリントを行う機材などが置かれてそれぞれに賑わっていた。
壇上にもマイクが置かれている所を見ると、誰かしらの挨拶かでもあるんだろうか?
【千秋】「会長さんは挨拶とかしないのか?」
【彩月】「ええ。式典役からは特に何も聞いておりませんので。そもそも今回は生徒側が殆ど動いていないのではないかしら」
【花梨】「まおぅ勝手放題?」
【彩月】「あまり認めたくはありませんが、実質そういう事でしょうね」
【千秋】「さくらさんは、こうと決めると一直線に突進するタイプだからな」
【いなほ】「さくらさんの通った後にはペンペン草一本残らないとか伝説がありそう」
【彩月】「あの方の学生時代は、壮絶な逸話に満ちてそうですわね」
何しろあの最強っぷり。その能力を若さに任せて解放すれば何が起こるやら。
【静琉】「でもそれが意外と違ってたりするんだよ。真央さん、学生時代はどちらかというと地味な方で」
【彩月】「じみぃ?」
【いなほ】「ほえ?」
【千秋】「そうなのか?」
地味なさくらさんとか全く想像出来ないぞ?
【静琉】「成績も中位で、課外活動もしてなくて、趣味は読書で‥‥眼鏡も掛けてたかな、そういえば」
【花梨】「眼鏡まおぅ。地味め文系っ子‥‥むぅ」
【彩月】「静琉、それは本当なのかしら。俄に信じがたいのだけれど」
俺も同意見だ‥‥全く想像できない。
【静琉】「本当だよ。急に印象が変わったのは米国へ留学してからだったかな。きっと向こうで大きな転機があったんだと思う。詳しくは聞いてないんだけど」
【いなほ】「へえ、そうなんだ~」
【千秋】「アメリカ、ねえ‥‥」
そういえば、さくらさんは本来なら向こうで留学している筈の人だ、という話があったっけ。それが何で我が家でメイドなんぞをしているのか。そもそもの疑問点を今更ながらに思い出す。
【花梨】「まおぅとステイツ‥‥むぅ」
ふと見ればメイド姫が考える表情に。
【いなほ】「どうかしたのカリンちゃん?」
【花梨】「にゅーん」
いなほの問いには答えず更に考え込むお姫様。メイドさんがそんな声で鳴いていると、周囲の方々がそわそわしてしまうじゃないですか。
聞こえる呟きには「撫でたい」「愛でたい」「モフモフしたい」「prprしたい‥‥」等々穏当でない形容も混ざっており。
【いなほ】「可愛すぎるよ。ぺろぺろしたいよ、否むしろされたい。カリンちゃんが私をぺろぺろ‥‥はうー!」
【千秋】「正気に戻れ」
アホの頭を軽く小突いておく。
そんな俺たちに目もくれず、花梨姫は会場の隅っこへ。それから懐から端末を取り出した。アレはおそらくいつぞやの衛星携帯。目にも止まらぬ親指捌きで文字列が入力されていく。
【花梨】「‥‥送信」
【彩月】「生徒会メンバーがこんな場所で校則違反をするのはどうかと思うのですが‥‥今のはメールか何か?」
【花梨】「ん」
メイド姫がこくりと頷く。
【花梨】「まおぅについて可能な範囲で情報を集めて欲しいとジョシュアに命令した」
【千秋】「命令て」
【花梨】「有益な情報が集まらない場合は、今日撮影したメイド服の画像を破棄すると通告してある」
【いなほ】「な、なんですとっっ!? そんな事されたら逆らえないよ!」
【花梨】「くくく‥‥奴の命運は我が掌中にあり」
なんだかなー。
毎回この手の脅迫を受けている姫のお父上には同情を禁じ得ない。
【花梨】「あと、念のためにお母さんにも同じメールを送っている」
【千秋】「次世代コンピューターに何をさせる気かは‥‥まあ聞かないでおこう」
【静琉】「そ、そうですね。アメリカの政府機関をハッキングとかしないですよね‥‥」
【いなほ】「カリンちゃん‥‥」
【彩月】「南初瀬花梨・オルタンシア、恐ろしい女‥‥」
【花梨】「くっくっく‥‥」
こういう時のお姫様は実にイキイキとしていらっしゃる。
とはいえ、確かに興味のある情報だ。
さくらさんの過去───それも大きな転機となった時期の。
それは決して自分達と無関係ではないように思う。何となくではあるけれど。
【静琉】「真央さんは‥‥天ヶ原さんや月城さんに昔の話はしてないんですか?」
【千秋】「ああ。特には何も聞いてない‥‥かな」
【いなほ】「思い返すとそうだね。きっかけも無かったし‥‥あと、歳の話をすると宿題がものすごく増えるし」
あー。
【千秋】「それは多分、お前の質問の仕方に問題があるんだと思うぞ」
【いなほ】「そうかなー? そんな事無いと‥‥あ、カリンちゃん何処行くのー!?」
【花梨】「会場にチョコレートファウンテンが登場~」
【静琉】「わあ! すごい! チョコレートの噴水だよ!」
【彩月】「そんなにはしゃぐ程の事では‥‥あ、お待ちなさい! 私も行きますわ!」
娘さん達は連れだって小走りに。
パーティはどうやらまだまだ盛り上がっていくようだ。
何しろこれは、さくらさん主催のイベントなのであり。
【千秋】(さて、いつになったら会えるやら)
そして会ったら何を話そうか。
楽しみな中に、ちょっと不安が混ざる。
そんな気分で俺はいなほ達の後を追った。
.......次で終わり