佐々川咲菜の日記的エッセイ”心のビタミン”

離婚・夫婦・恋愛問題を専門とするカウンセラー&セミナー講師の佐々川咲菜によるエッセイ

素直があだになったの?

2007-10-16 08:59:31 | 子育て
とっても素直で優しい心の持主の友人がいます。
いつも周りに気配りしています。
ちょっと気遣いすぎでは?と思えるほどに……

だから彼女といて、彼女の言った一言で傷ついた経験って、たぶんない。
長年の付き合いなのに、全然記憶にない。
本当にいい人なのよね~

そんな彼女なのに、なんとなく生きづらそうなのです。
いつも悩みを抱えている。

まわりに翻弄されて、疲れている。
気遣いすぎて、疲労困憊。

それでも彼女は、周りの人のために役に立つのが生きがいのように働くのです。
人のために周りのためにと頑張って頑張って……そして、疲れすぎてダウン!
心も体もダウンしてしまうのです。

これを繰り返してきました。
そんな彼女に「そこまですることないと思うよ~」と何度言ったことか。

実は彼女は、周りのために働いて、
認められたり感謝されたりすることが彼女のビタミン剤だったのです。
そのビタミンがほしいので、彼女は頑張ってきたのです。

さらに、いい子に育て!という親の願いを彼女の素直な心が受けとめ、
親の期待通りになってあげようと、
いつも笑顔で弱音を吐かずに頑張ってきたのです。

いい子でいれば、親はものすごく可愛がってくれた。
だから、どんな時もいやな顔をせず、怒りを出さず、
兄弟を可愛がって世話をして、一生懸命まじめに勉強をして、
親が喜ぶように行動し続けました。

親の薦めの学校に行き、
祖父母の薦めの大学の学部を選択し、
親や周りが喜んでくれるのがうれしくて、
そして、自分が認められたと安堵して……

でも、気が付いたら主体性というものがどこかへ行ってしまっていました。

自分がどうしたいのか、考えてもわからない。
周りが喜んでくれるならいい、周りの機嫌がいいならいい、
そんな理由で自分の行動を決めていく、
気がついたら、そんな人生になっていました。

自分の人生、あと何年なんだろう?
こんな自分でどんな老後が来るんだろう?

そんな思いがふと頭をよぎりだして、
自分の考えで、自分の感性で、
もっと「楽しい!」と思える毎日にしたい!

そんな思いがムクムクと湧いてきて、
彼女は昨日、カウンセリングを受けにやってきました。

以前にも、そんな彼女に、
何が食べたいか、そんなことだけでも自分の意志で決めてみたら?
と言ってみたことがありました。

でも、彼女はそれさえも、
「自信を持って自分が本当に食べたいものはこれだ!とわからないの。
 いつでも、家族のことを考えて献立を決めるし、
 外食でも、周りに合わせてめメニューを選択するしね。
 私の好みとかは二の次三の次なのよ。」
そんなことを言っていました。

彼女が主体性を持って楽しい!と思える人生を手に入れるために
今できることは何なのか?
無理せず、できることは何なのか?

過去にできていた記憶はゼロ。
気が付いたら、こういう生き方だった。

じゃあ、今までと違うことをするしかないよね!
でも、自信がなくて、どんな小さな一歩も出ないし、
その一歩が周りから認められないと悲しくなるし、
自分のやろうとすることの結果が出ないと怒りがこみあげてきて、
頭がパニックしてくる。


というわけで、

彼女の幼少期のことを思い出してもらうと、
いつも町内会の人気者だったお父様のところに、
たくさんの人が集まっている光景が浮かんで来ました。

いつもはニコニコと笑顔で愛想を振りまく彼女も
日によっては機嫌の悪いこともあったはず。

直前に兄弟げんかをしたかもしれない。
学校の宿題がはかどっていない日もあったかもしれない。
幼いながらも何か心配事がある時もあったでしょう。

でも、どんな時にも、不機嫌は許されなかった。
お父様は叱るわけではないけれど、
「いい子はニコニコ笑顔でいるものだよ。
 ○○子ならできるよね」
と威圧してきた。

素直な心の彼女は、その通りだと思って頑張った。
その通りだと思って……

辛い時も、悲しい時も、
どんな時でも笑顔で頑張った。
そして、その笑顔をほめてもらことが彼女のエネルギー源になっていった。

だから、ずっとずーっと頑張ってきたんだよね。
認められたくて、ほめてもらいたくて、感謝されたくて……

そんな彼女に質問しました。
「その時、お父様になんて言ってほしかった?
 どんなことを言ってもらったら、うれしかった?」

「そうね……そうね……
 なんて言ってほしかったんだろう?
 ・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・ 
 ・・・・・・・・・・
 『どうしたの?何か困ったことがあったのか?
  言ってごらん。
  そうか、そんな時もあるよね。
  でも、パパもママもいつでも見守っているから、大丈夫だよ。』

 そんなことを言ってほしかったのかもしれない。
 もしそんなことを言ってもらっていたら、
 私、もっと自分の考えを口にして、自分の考えで行動していたように思う。

 あ~そうか~
 私の主体性の無さは、私が悪いわけじゃなかったのかもしれないわね。
 今初めてそう思えたわ。

 父は私を理想の子に育てたかったの。
 親ならみんなそう思うから、父が悪かったわけではないけれど、
 父の視線には、やはり威圧感があったわ。
 その思いに応えようと、私は頑張りすぎたのね。

 誰が悪いわけではないけれど、別な視線で、別な言葉をかけてもらっていたら、
 私の人生は変わっていたのかもしれないわね。

 これからの残りの人生をもっと楽しむわ。
 私の考えで、私の感性を信じて。

 今までは自分に自信がなかったけれど、できそうな気がしてきたわ!」

そう言って彼女は帰っていきました。

親のいつもの何気ない、『良かれと思った』対応で
彼女の生き方の方向が決まってしまった。
ずっと『いい子でいなくちゃ!』と思い続けて50年以上。
長かったね~

素直があだになっってしまったのでしょうか?
子供はみ~んな素直なものです。
彼女はその中でもとびきり素直な子だったのだと思います。
素直だから親の一言で人生が決まってしまったりするのです。
確かに素直さがあだになったとも取れるかもしれません。

でもその素直さのために得られる幸せもいっぱいいっぱいあるはず。
今日からは、その素直さで新しい人生をプロデュースして行って!
あなたならできる!
応援しています。