宮古on Web「宮古伝言板」後のコーケやんブログ

2011.6.1~。大津波、宮古市、鍬ヶ崎復興計画。陸中宮古への硬派のオマージュ。 藤田幸右(ふじたこうすけ) 管理人

リメンバー田老3.11 (その4)田老のジレンマ

2012年03月03日 | どうなる田老

宮古市の津波遺産は、破壊され、また巨大な越流を許して地区内で220人を超える犠牲者を出してしまった田老の防潮堤が第一である。先きに宮古市が募集していて先月で締め切った「津波遺産」への応募は0(ゼロ)、防潮堤はおろか、他の被災構築物の応募もなかったという。いやしい考えでそのようなことをするからそういう結果になるのである。ただの俗化企画に反発して0(ゼロ)にした市民感情の方が正しいといえる。


世界の災害遺産  田老の問題の防潮堤遺構は田老地区だけ宮古市だけの津波遺構ではない。世界的な地震頻発期の地球規模の津波襲撃候補地から注目される貴重な災害遺構となっている。南海トラフを中心とした西日本太平洋の研究と観測からは、東海、東南海、南海地方のマグニチュード9.0クラスの大地震が予想され、確信されてきている。「30年以内」の観測さえある。少なくとも、同地方のほか関東地方など全国に大型津波防災の市民的気運が高まっている事は事実である。ここで短絡的な話で恐縮だが、西部日本から、全国から、世界から今後どのくらいの現地見学者が田老の被災状況、防災状況を聞きに訪れるのか予想もつかない。


見学者の受入れ  田老地区を中心にした地元のブログにて、外部からの見学者の接待、対応の問題で少しだがブログ炎上した事があった。もちろん災害跡地は依然として生活の場である。またこの災害で犠牲になった人、その親族も多い。訪れる人も目的のはっきりしない興味本位の人もある事は事実であろう。役場、NPO、各種組織や個人など受入れる側の体制、また説明する人、説明する事、等々はっきりしない事もある。そのようなことでブログ上での地元の意見のぶっつけ合いであったように思う。意見の出し合いやブログ炎上はわるい事ではない。節度とマナーと自重…、しかし、結論的にはあらゆる見学者を受入れる事は大事であり必然である、と、しなければならない。田老の義務でもあるとおもう。
あるがままが第一、取り繕う事だけはやめてもらいたい。

 写真は「河北新報」特集記事より


防潮堤の遺構とはなんであるのか?

残された残骸の事である。



壊れた第一線堤を修復して、4.7mかさ上げして14.7mにしようという動きがある。高さをつくっても前の強度から強くなるわけではなく、ただ外目の体裁(てーさい)をととのえようとする考えのように見える。よく言って、先人の遺業の形を後代に残そうという考えのようである。しかし、田老の人は、もうそのような修理・修復が津波に対して効果があるとは信じていない。そしてそのような修復の必要性はただ土木業者とつるんだ政治家や官僚のニーズだという事も知るにいたっている。釜石湾口防波堤の修復のように…

亡くなった津波犠牲者にとってみれば、残骸は一日でも早くなくしてほしいのではないか?…。あれほど信頼していた防潮堤が崩れたがために命を失ったのである。恨みこそすれ愛着はない。残された第二線堤なども、出来れば田老の海岸から全て撤去してほしい。残された人は安全な高台に住み、番屋や街なかで働く人は地震や海の兆候があればすぐ山に避難するようにしてほしい、と。日頃の注意や教育や訓練で、田老の人が津波で命を落とすことはもうなくなるだろう。コンクリートの構造物で人間の命が守られることはないのだよ。──と嘆き、涙を流す姿があるような気がする。 合掌


防潮堤の遺構とは、こうして、今次東日本大震災のすさまじさの象徴であると同時に、後世にその存在意義を問いかける災害遺産である。現実問題としては防潮堤は地域の多くの命を守れなかった。建て替えるのではなく、また壊してなくするのでもなく、ていねいな最小限の修理の後、現在の姿のままで、まず、後世の戒めとしての建造物として残し、有用性を発揮するべきである。

残された残骸とは、まさしく天の采配によって、人間世界に、その(自然の)真正の力を印したものである。全世界の人に見てもらいたい。危険なものはもちろん撤去するべきであるが、出来るだけ、あるがままの残骸を残してほしい。

残された残骸、遺構はまた、人間の知恵が自然の猛威に最大限対抗できた効果的なコアの遺構として残ったともいえる。そのかぎりで、今後とも本来の目的に沿った防災建造物として、残して役立ってもらいたいという思いもある。


※遺構の現状変更は逐一地域住民と協議する事、コンセンサスをとる事が不可欠。住民の方もその準備に入るべきだ。

 








コメント (9)
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