【98】ヘンリー八世式・英国王ヘンリー

　荘園【108】への刺殺旅行の際、剣を構えて目に見えないほどの速度で走りながら決まった地点で瞬間的に立ち止まり、農奴たちを次々に突き刺していくうちに分身が増えていたという英国王ヘンリーの八人目にあたるヘンリー八世（仏教徒の場合はアンリに変異）が、トウモロコシ畑における現地調査【103】の結果をうけてさまざまなものに応用できるよう実用化した異時同図法で、ヘンリー八世式と呼ばれている。他にもルイやラムセスなど無数の類似品がある。人間に使用した場合の副作用としては、知性の低下【104】や発育の遅滞とともに、一人の相手では満足できなくなるという浮気症が指摘されており、それが副作用なのか人間の本来備え持っている先天的な欠陥なのか、それとも欠陥ではなく祖先繁栄のための必然的な本能であるのか、という言い逃れの言波として備えられた本能でしかないのか、つまりは追求から逃れるための消極的な本能なのか、それでいて追求するための本能であるのはどういうわけなのか ―― 以上のことをすべて明確にするよう区役所【106】はヘンリー八世に勧告すると同時に、好色占拠法に抵触するとして、コーン【九三】のスピーカー以外の使用を大幅に制限した。

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