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【115】販売

 大戦前には犯罪更衣と呼ばれていた。通りを練り歩いているモデルたちに素敵な衣装を売ってくれるようお願いすると、婦女奉公しているスタイリストが現れ、客の好みにあうモデルルームを設置してくれる。中に入るとモデルが衣装を脱いで手渡してくれるが、最もウェストがくびれたモデルになると副業に砂時計を営んでいるほどなので、一般的なスタイルの客にとっては二次元のデザイン画を試着するようなものである。それでも無理に袖を通してボタンを留め、さらりと着こなしている風を装っているうちに、誰だか判らなくなるほどに顔が鬱血してくる。体の各所ではドーナツ【43】の小爆発が連鎖的に発生し、時には骨が粉々に砕けてしまうこともある。ファッション・マッサージと呼ばれる服作用である。客は命の危険を感じた時点でようやく購買を思いとどまるが、見る間にモデルルームが撤収されていくので大人しくおじぎ【163】をするしかない。その時に苦虫【285】を噛み潰すのは、買った衣装に袖を通せないからではなく、服交換神経の発達したモデルが、衣裳登録されたばかりの砕身モードに平然と身を包んでいるためである。

リンク元【111】マデリーンたちははなからそんなことを問題にしているのではなかった

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