とねり日記

とりことや舎人(とねり)の
どげんかせんとの日々

三股の鹿

2014年01月26日 | 山里から
年が明けて、新しい罠を仕掛けた。

炭焼き窯へ行く林道の入口付近に、昨年末、ヒトッちゃんと一緒に作ったものだが、1月12日、ストッパーをはずし、エサの古米を檻の最奥、真ん中、入口の内側、入口の外側の順に量を減らしながら撒いた。

これ以降、鹿や猪が檻の中に入り、檻の最奥部に積まれているエサを食べようとして、鼻面(か前脚)で仕掛けをグイッと押すと、背後の入口の鉄格子が情け容赦なくガシャーンと落ちる。鹿や猪はパニックに陥り、檻の中でうろたえ暴れる。少し離れた山の斜面のどこかから、母親か兄弟姉妹の呼ぶ声が聞こえるなか、猟師が罠に近づいていくと鹿や猪は渾身の力を振り絞って暴れる。猟師は感情を殺して槍で止め刺しする…。
そういう場面がまた再現されるのだなあ、というどこか重たい気持ちを感じながら、覚悟を決めてストッパーをはずすのだ。

翌朝、檻を見回ると、入口の内側20~30センチくらいのところに鹿の足跡がついていて、入口付近の餌が食べられている。
大きな足跡。
あいつかもしれないな…。
炭焼き窯への行き帰りに里まるのメンバーの多くが目撃している、立派な角を持った大きな鹿。

さらに次の日、大きな足跡は、檻の入口の内側50センチほどのところにためらいがちについていて、真ん中へんのエサが少し食べられてある。たぶん、明日か明後日、獲れるだろう。

翌、早朝、ラク(犬)の散歩から帰ってきた舎長が、いくらか緊張気味に「入っている」と告げた。
今期、5頭目の鹿。これまでで最大。
檻の中で動き回るさまは「牛みたいだ」と思った。


角も立派だった。三股の角の鹿は初めてだ。
写真の向かって左が、昨シーズン獲った若い牡鹿の角、真ん中が去年11月に獲った鹿の角、そして一番右側が今回の鹿の角。


二日後、川から上げ、皮を剥いで、肉を取った。背ロースのお尻に近いところから、幅10センチ、厚さ2センチほどの肉を切り分けておいて、仕事がすんだ後で土間のルンペンストーブの上に置いたフライパンで焼いて食べた。ニンニクとバターと塩と胡椒だけだったがうまかった。

その後、若い牡鹿を獲った。これで今期獲った鹿は6頭になった。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

白炭へGO!

2014年01月19日 | 山里から
炭山も雪化粧。


1月5日、里まるメンバー8名が参加して「窯開き」をおこなった。
お鏡、御神酒などをお供えして、会長(せーやん)を先頭に、2礼2拍手1礼。


ナガちゃんが新年の訓示。
「今年は白炭に挑戦します」
一同
「おーっ!」


日本の炭には、大きく分けて、黒炭(くろずみ)と白炭(しろずみ)がある。

黒炭は一般的な炭で、着火しやすいが火持ちは若干短い。去年私たちが焼いた炭がこれ。
白炭は「紀州備長炭」に代表される炭で、着火しにくいが火持ちはグンと長い。
両者の最大の違いは焼き方。

木材は350度くらいで炭化する。
木はヘミセルロース(20~30%)、セルロース(50%)、リグニン(20~30%)の三つの成分でできていて、大量の水分も含んでいる。セルロースが木のしなやかさを、リグニンが硬さを担い、ヘミセルロースはセルロースとリグニンを結びつける役割を担う。
窯の中に1.2メートルくらいに切った原木を入れ、焚き口で火を焚くと、まず水分が抜けていく。窯の中が100度以上になると水分が水蒸気となって盛んに出ていくとともに、ヘミセルロースの熱分解が始まり、炭素(C)が残り、水素(H)や酸素(O)が出ていく。これが炭化の始まりだ。さらに焚き口で火を焚き、窯内の温度が上がると次はセルロースの熱分解が始まる。セルロースは分解するとき強い分解熱を発する。窯内が280度くらいになるとセルロースは最も盛んに分解する。こうなるとセルロースの分解熱で窯内が高温に維持されるようになるので、焚き口で火を焚き熱分解を応援してやる必要が無くなる。したがってこの後、泥団子で窯口を徐々に塞いでいくことになる。そして窯内が350度を超えるとリグニンの分解が始まる。このとき出るのが青い煙だ。この青い煙が徐々に薄くなり透明になってくるとリグニンの分解も終わりに近づいたということ。木を形作る三つの成分の全てが分解され、HとOが煙となって出ていって、ほぼCだけになり、炭化が完了する。この後、窯口と煙突を完全に泥で塞いで、窯を「窒息」させて窯内の火を消し、窯が冷めた後、炭を取り出す。

こうしてできるのが黒炭。

白炭は、黒炭をさらに高温で焼く。
炭化が完了した段階で、窯口をあけ、窯の中に空気を入れると、窯内の温度は1000度近くになり、窯内の炭が真っ赤に熾(いこ)り、硬く締まる。これを金属の棒で掻き出して、消し粉と呼ばれる灰をかけて消火すると白炭になる。表面に消し粉がついて白っぽくなることから「白炭」と呼ばれる。

こう書くと簡単なようだが、高温に耐える窯を作らねばならないし、窯口をあけるタイミング、掻き出すタイミングなどなど、ハード面でもソフト面でもハードルが高い。しかし、国産のものはよい値で売れるし、供給が需要に追いつかない状態だそうだ。

白炭にチャレンジすることを誓って、
ヒトッちゃんの発声で乾杯!


1月15日におこなわれた、集落のとんどでも「里まる」の発展をねがって、書き初めを燃やし、その火で餅を焼いて食べた。


「白炭」と書いた半紙を火にくべると、おーっ! 


高く舞い上がった。


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

あけましておめでとうございます

2014年01月01日 | 山里から
あけましておめでとうございます。


今年の正月は着物を着た。

山一つ超えた集落に着付けのお師匠さんがいる。私たちの結婚式(5年前に地域の皆さんの協力で昔のような自宅婚形式でやった)で、着物を着付けしてくださった方です。その方がくださった着物を着た。
帯は教えてもらったとおりに、なんとか「貝の口」に締めることができた。

お鏡を掲げて「あん」


そして、舎長が心を込めて準備したおせち。今年のメインは煮豚ではなく、煮シシ(猪)、ロースト鹿、そして鹿の竜田揚げ、などなど、


私たちが奪った命に感謝して、


いただきます。


いつもの安酒ではなく、きちんとした料理にふさわしいきちんとしたお酒をいただき、よい気分になり、サンシンをトゥルルンテン♪


午後は、ヒトッちゃん、セーやん、トシローさんが来て、


「今年も炭焼き頑張るぞー!」
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする