とねり日記

とりことや舎人(とねり)の
どげんかせんとの日々

ほだ木切り2日目、3日目

2012年02月18日 | 山里から
ナガちゃん(家主さん、80歳)は今回、70~80本ほどのほだ木(1本1メートル)を切り出すつもりでいた。だが、里山の適切な更新のために切るべき木(切らねばならない木)を切っていったら、少し切りすぎてしまったようだ。しかも近年、薪炭用に切ることもなくなり、総じて木が育ちすぎてしまっていた。根もとの直径が20センチ弱くらいの木なら1本の木から適当なほだ木が5~6本取れるのだが、直径30センチ超もあると1本のクヌギからほだ木が10数本も取れてしまう。おまけにこの冬の間に雪や風で倒れた木からも切り出したので、どんどん増えて、ほだ木の数はなんと200本を軽く超えてしまった。私が切り出したのが70数本だったから、ナガちゃんは140~150本も切り出してしまったわけだね。この働きもんが!

ほだ木需要のあった昔なら「儲かったな」となるのだろうが、自分ち用に30本、親戚のところに30本、うちに10本、くらいのつもりでいたから、ナガちゃんも「困ったな~」と頭を抱え込んでしまった。

でもナガちゃんも困ったが、私もまいったなあと思った。谷に転がり落としたほだ木を杣道まで運び出すのはもっぱら私の仕事で、谷底は切り捨て間伐の杉で足の踏み場もないほど。1日目、落ちてきたほだ木を小沢の向こう側へ「えいやーっ」とかたっぱしから放り投げていたら、ナガちゃんから「ほだ木に傷がつくとそこから雑菌が入って早く腐るのでもっと大事に扱うように」とやんわり厳しく注意されていた。そこでオレは考えた。

1日目のナガちゃんの仕事のやり方を見て、フ~ンと思ったことがあった。ナガちゃんは山へ入っていくときもほだ木を運び出すときも、まず簡単な作業道をつけている。これだな、と思った。

例えばこの写真。折り重なる倒木の向こうにほだ木が20本ほどある。



チェーンソーで倒木を切り、枝を払い道をつける。



ついでに切った倒木で小沢に橋を架ける。



こうやれば作業はずっとはかどるし事故やケガもない。仕事がはかどると楽しくもなる。こうしてナガちゃんが落としたほだ木をずんずん杣道に積み上げていった。ナガちゃんはそれをキャタピラーつきの小型運搬機で林道まで運び出す。



全部運び出したあとでナガちゃんに「5く(く=工=工数=仕事量?)はあったなあ。おかげで助かった」とほめてもらった。で、「100本ほど持ってってくれ」と言う。わが家の食糧自給分なら椎茸用5本、ナメコ用5本の10本もあれば十分だ。でもナガちゃんも困り果てた様子。そこでオレは再び考えた。

茸(きのこ)が出るまで2~3年かかる。それまでにどうやってさばくか考えたらいい。きのこ狩りできるこかげカフェってのもいいな。菌打ちしたほだ木のオーナーを募集してもおもしろいかも……。

仕事が終わった次の日、ほだ木を切った山に登ってみた。作業中はゆっくり山や木々を眺める余裕もなかった。大きなクヌギが立ったまま眠るようにそびえ、その間に椎・樫類も多い。落葉と常緑の違いはあるが、クヌギと樫は同じブナ科こなら属の兄弟だ。風は瀟々として冷たく、はるか下方遠くにわが安鳥谷が見える。


一本の樫の木やさしそのなかに血は立ったまま眠れるものを(寺山修司)

この日の夜から雪が降り始め、一晩で30~40センチほど積もった。今年はうちらへんでは雪が少なかったが、最後にどかっときた。この雪が溶けたら、たぶん春だ。













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ほだ木切り・初日

2012年02月14日 | 山里から
ナガちゃんが椎茸のほだ木を切りに行くというので、チェーンソーを持ってついて行った。


ほだ木を運び出すための木橋を昨日、ナガちゃんがつけてある。


いつもラクを散歩させている林道からすこし奥へ入ったところにある急斜面の雑木林だ。ほだ木にする10数本のクヌギは去年の秋遅く、切り倒してある。




これはナガちゃんがバリバリの働き盛りのころ切った株から生えたひこばえだろうか。立派な3本の木に再生したなかの1本を今回切らせていただいたわけだ。山や木の再生のサイクルと人の生のサイクルが重なっていることの暖かみを感じる。


椎茸やナメコは前年の秋に切った木に春、菌打ちをして、2~3年後から茸(きのこ)が出始め、木が腐るまで数年出続ける。したがって、秋の早い時期に切ると木のなかの水分が多く、腐りやすくなり、その分、茸が出る期間が短くなるというわけだ。だから木が水を吸い上げる活動をゆるめ、木のなかの水分が少なくなる秋遅く木を切る。秋の早い時期からホームセンターなどで売っているほだ木は「腐りやすくてよくない」とナガちゃんは言う。

ナガちゃんが切っておいた木を1メートル間隔で玉切りして、谷へ転がり落とす。クヌギなどの広葉樹は杉などに比べ硬く重い。急斜面で足場が悪いなか、木がはねる方向、落ちる方向を考え、チェーンソーが挟まれたりはじかれたりしないよう考えながら作業する。

午前中かかって5本のクヌギから30本ほどのほだ木を切り出した。これを谷に落とし、そこから対岸の杣(そま)道まで出す。汗をびっしょりかく。木を切るより運び出す方が重労働だ。

「ダムを拒否した村」として知られる徳島県・木頭村(現・那賀町)の藤田恵・元村長の話を思い出す。村長はインタビューの途中で肩をはだけて首の付け根にできた大きな瘤(こぶ)を見せ、「昔はすべてが人力だった。椎茸のほだ木も昔のは直径が50センチもあった。肥(こえ=下肥)も天秤棒で担いで畑に運び上げた。肥をこぼすと日当払わんと言われた」と話した。

話はさらにそれるが、一昨年秋、道をつけるためわが家の横の杉を数十本、ナガちゃんが切って、「あんたらで使い」と言って、道のそばに積んでおいてくれた。太いのは1~2本しかなかったが、中くらいの太さのものを3~4寸(9~12センチ)角の柱に、細いものは垂木用の角材などに賃挽き(製材所で製材賃だけ払って材木にしてもらうこと)してもらった。小さな離れ程度の家の構造材なら1軒分ありそうなくらいの材木になって返ってきたが、その挽き賃が思っていたより安かった。材木屋の兄ちゃんに「こんなに安かったら、自分のところの木を挽いてもらって自力で家を建てたら、うんと安く家が建つな」と言ったら、「道まで出すまでの費用がかかるんや。道まで出しておいてもろたらなんぼもかからん」と言われた。(ここらあたりに日本の林「業」の根本的問題点が潜んでいるのだが、それはまた別の機会に)

私が30本出したということは、ナガちゃんは40~50本は出しているだろう。雨が降って午後からの作業は中止になったが、全部で100本ほどになるかな。その中から少しわけていただいて、お彼岸のころまでには菌打ちをする。
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2代目スモーカー

2012年02月13日 | 山里から
去年秋に新しい燻煙器を作った。先代の燻煙器は小さいながらも本当によく頑張ってくれたが、ドアが壊れ、床は焦げて穴が開き、ボロボロの体になり引退となった。

2代目は温度管理がしやすいように先代の3倍くらいの容積にした。


燻製で難しいのは温度の高い熱燻よりも温燻や冷燻で、煙がモクモク出て温度は上がりすぎないようにしないといけない。だが燻煙器が小さいとついつい温度が上がり過ぎがちになるのだ。

で、去年12月のデビュー戦、初燻煙のときは、なかなかいい感じで温度コントロールができた。ところが、冷たい風が吹いた昨日、逆に、これまでのような火加減ではなかなか温度が上がらない。

椎名誠が-40度のシベリアで焚き火をしてもちっとも面白くないと書いていた。焚き火が温かいのは火が周りの空気を暖めるからで、零下40度では周りの空気がちっとも暖まらず、火のすぐきわまで寄らないといけないから面白くないんだそうだ。わが家も寒い日はストーブのすぐそばしか温かくないから、おっしゃることがよくわかる。燻煙器もそういうことなのだね。

七輪の炭をいつもより多くし、チップをあぶる鉄板を七輪から少し離し、煙出し口を閉め加減にし…と、1時間ほどしてようやく一定の温度で安定してきた。あとはウイスキーをすすりながらゆっくり火の番。

肉から油がポタポタ。


毎回できぐあいが少しずつ違う。温度が高めでしっかり煙をつけるとビーフジャーキーっぽくフレーバーになり、低めで通すとジューシーになる。今回はフレーバーアンドジューシーやね。

ちなみにチップは、肉桂、山桜、こぶし、月桂樹。なかでも気に入っているのは爽やかなこぶしの香り。


寒い季節だけ手作り市に出すのだが、すこし売れ残ってくれた方が実は嬉しい。あとは私のビールやウイスキーのお供になりますから。
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水道管炸裂

2012年02月06日 | 山里から
今回は写真なし。
写真を撮る心の余裕がなかった。

私たちが住む京都府南丹市で一番繁華な園部町が2月の観測史上最低の-10.5℃を記録した(うちらあたりはもっと低かった)一昨日の夜8時過ぎ、舎長(妻)と二人して外出から帰ってくると、門の付近の坂道の雪が溶けて氷になっている。見あげると石垣伝いに流れる水。そして激しく水が噴き出す音。
「あっちゃー」
玄関前のトイレ・風呂場へ走る。
トイレをの戸を開けると、水道管が破れて噴水のように水が噴き出し、水が滝のように流れ出している。
どげんもこげんも手のつけようがない。
とにかく水道の元栓を止めなければならない。ヤカンやらポットやら水差しやらに水をため当面の飲み水を確保したあと、元栓を閉める。

トイレに戻り、あらためて惨状を再確認し、あらためて茫然とする。
床だけでなく壁のなかにも水が噴き出し、壁土が流れ出て漆喰が半分崩れかけている。
便槽のなかにも水が入っているだろうなあ、と思って開けてみると、あふれる寸前。よかった~。
トイレの前にたたずむ二人。沈黙とため息。どこから手をつければよいのか…。
もし自分一人だったら、たぶんさめざめと泣いていただろうなあ。でも舎長もいるし泣けない。

どげんかせんといけん。ようやく少しだけ気持ちに力をこめることができた。

とにかくあふれた水をなんとかしなければ。
バールを持ってきて敷物をはがし、新聞紙やらボロ切れやらで拭く。
「困った、どうしようて言うてるヒマがあったら動け。動いたら動いた分、前に進む」
ナガちゃんの言葉を思い出しつつ、極寒の夜、泣きたい気持ちで水浸しの便所の床を拭く。

翌朝。天気はよい。寒いが昨日ほどではない。
昨夜、布団のなかで、ああしよう、こうしようと考えていたのですぐに動き出す。
まずは、水道管(塩ビパイプ)の修理のための工具や資材を点検。パイプをつなぐジョイントやパイプを覆う防寒カバーなどが少し足りない。破損箇所を開け、前後をパイプ切断用ノコで切り、乾かすために外気にさらしたうえで、車で20分ほどの園部町のDIYの店まで資材を買いに行く。

トイレの水道管は配管が複雑なので難儀するかと思ったが、たまたま近所から借りてあった土間工事用の工具が大いに役立った。取りかかってみると、時間はかかったが、着々と仕事が進んだ。

午後3時、水道復旧。
床板もだいぶ乾いてきて、すぐに取り替えるほどではなさそう。
壁は崩れかけているが、そ~っとしておいて、暖かくなったら塗り直そう。

何度か水道管破裂は経験してきたが、今回は気持ちが折れそうになった。どうなることやらと思ったが、翌日1日で復旧できた。少し自信がついた。
これで「六姓」になったかな。
コメント (2)
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