肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『ブラック・ダリア』、観ました。

2006-10-15 20:49:44 | 映画(は行)






監督: ブライアン・デ・パルマ
出演: ジョシュ・ハートネット, スカーレット・ヨハンソン

 『ブラック・ダリア』、映画館で観ました。
1947年LA。身体を腰で切断された女の惨殺死体がみつかった。ハリウッド
スターを夢見ながら大都会の暗闇に葬られた彼女を、人々はブラック・ダリアと
呼んだ。やがて捜査線上に浮かび上がる一編のポルノ映画、ダリアに似た
大富豪の娘、そして彼女の一族にまつわるドス黒い秘密。事件の謎は、捜査に
あたる2人の刑事の運命をも狂わせて行く…。 
 観終わって映画館の席を立ち、出口に向かう人の流れに目をやれば、皆々さん、
今ひとつ釈然としない御様子。だって、それもその筈、映画の宣伝文句は奇妙で
猟奇的な惨殺死体であるはずなのに、物語は一向にサイコな展開に発展しよう
とはせず、なかなか次なる殺人事件も発生しない。映画は、甘く危険な香り、
妖しいオンナの影がチラチラ、その嘘と誘惑に翻弄(ほんろう)され、どんどん
“ヤバい世界”に足を踏み入れていく主人公、焼け落ちていくワイヤーの上を
歩いているようなスリルを感じちまう。そうさ、コイツは血の気も凍る“サイコ・
サスペンス”なんかとは程遠い、犯人捜しの“謎解きミステリー”とも違ってる。
「愛」と「金」と「欲望」の中で、男女それぞれの思惑が見え隠れする“闇の映画”。
典型的な“フィルム・ノワール”だよ。
 さて、映画は上にも書いたように、当初の予想とは少しイメージが違ったが、
柔軟に頭を切り替えられれば、全く楽しめない映画ではないと思う。40年代
アメリカの埃(ほこり)っぽくて汗臭い雰囲気は、セット撮影にしたことで
映像によく表現されているし、他にもクラシカルなファッションや自動車など、
本作の楽しみ方は数多い。中でも今回、オイラが最大の見所として挙げたいのが
キャスティング。スカーレット・ヨハンソンの艶っぽさ、ヒラリー・スワンクの
妖艶な香りは、画面を通じてこちら側に匂いたち、映画全体を支配している。
この映画で残念だったのは、次々と現れて消えていく登場人物が整理されて
いないため、複雑に絡まった事件の糸が、最後の最後まで解(ほど)けずに
スッキリしない。だけど、ラストだけは無理矢理に丸く収めてしまって…、
うーん、「フィルム・ノワール」であの結末は‥‥無いよなぁ。


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