活動写真放浪家人生

活動写真を観ながら全国放浪の旅ちう

白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々

2006年03月29日 23時00分00秒 | さ 行 (2006.2007)

Shirobaranoiniri_1 <OS名画座>

同時公開もあるが、大阪単館公開ものは、東京より約1~2ヶ月遅れてくる。東京公開を終え、同じフィルム(おふる)が、大阪へやってくるからだ。大阪まできて、次に広島や博多へ流れることもあるが、ほとんどは大阪で上映を終わり、フィルムは東京へ返却される。みんなに観てもらいたいと思う映画の多くは、そういうシステムで、大都市だけで上映されるのだ。忸怩たる思いだ。毎年ベスト10が各賞から発表されるが、そのうちの6本7本が地方まで行かない単館ものだ。そんなものを発表される地方に住む人たちは、なおさら、映画への関心が薄れる。私は日本アカデミー賞が嫌いだが、選考理由が<全国公開>に限定している日本アカデミー賞。駄作をノミネートしながらも、誰でも知っている作品を選考していることのみ、ほめてあげたい。 この映画は1月に東京で上映され、3月に大阪へやってきた。

見事、あっぱれな視点からナチスドイツの世界を描いた秀作である。反政府の社会運動は、日本の戦時下でも度々あった。後に映画化されてもいるが、その人間がどのように捕まり、証言を聞きだされ、裁判にかけられ、処刑されていったかを完全なテーマにしたものを私は知らない。 本作は密室劇である。ほとんど外へ出ない。戦争描写もない。というのに、主演の女優、尋問する刑事の背中に大きな空間ができ、背景が広がっていく。まるで、落語家が一人で喋り、その背景に江戸の町並みが浮かぶように。 戦闘シーン、戦場を描いていないのに、世界は大きく広がる。これこそが脚本の腕の見せ所で、悲惨な外の現実を見せないでも観客に想像させ、実際には見えない頭の中のそれと同時に映画を観る醍醐味を味わさせるのだ。観客の想像と密室劇の同時進行である。密室劇でありながら、ナチスドイツの恐怖をまざまざと見せてくれる凄さ。こういう形で戦争というものを伝えるなんて・・・まいった。<85点>

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プロデューサーズ

2006年03月28日 23時50分00秒 | 90点以上(2006.2007)

Producers_1 <試写>

ブロードウェイであろうがオリジナルであろうが、久しぶりのミュージカル映画がやってきた。試写は好きではないが、「ネイサン・レイン」と聞いて、どうしても浮き足立ってやってきた。

ストーリー、構成、キャスティング、ふんだんな笑い、スピーディな進行、そしてミュージック。どれをとっても文句のつけようがないエンターテイメント作品に仕上がっている。それにしても、作品の質を損なわないようにする為にも、字幕は大変な作業だったろう。ネイサン・レインはなかなか映画に出てくれないが、出る作品は間違いないと思っているので、上映前から安心していた。しかし、その期待を良い意味で裏切る作品になっていた。自分、仕事、時をわすれさせてくれる。これほどのエンターテイメント映画は昨今、ないような気がする。目いっぱい、観客を楽しませてくれた。 エンドロールスーパーが流れた後、再び、ミュージカルカットが出てくる。最後の最後に美女に囲まれた本作のプロデューサー「メル・ブルックス」が『もう終わりだ。帰ってくれ。』という。本物のプロデューサーが最後に出てくるなんて、なんとも粋な終わり方だ。

「メルブルックスの世界史-十戒」なんて、もう誰も知らないだろう。<一枚の石板に十戒が書かれている。二枚で二十戒が本当なのだ。歴史では二十戒だったのに・・・十戒を書いた二枚の石板を用意したが、一枚床に落としてしまって・・・二十戒のうちの半分が砕けて散った。もう、やめた。このさい、十戒にしよう!二十戒だったなんて、誰にも言ってはならぬぞ。>なんて、とんでもないブラックジョークを思い出す。その頃から・・・もう30年になるか・・・。メル・ブルックスはおじいちゃんになったなと思ったが、最後の最後に一笑いさせてくれる。まだまだ現役だ。<90点>

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輝ける青春

2006年03月28日 23時00分00秒 | か 行 (2006.2007)

Kagayakeluseisyun_1 <第七藝術劇場>

どの記事にも書いてあるが6時間6分の超長い映画。岩波ホールの上映から遅れに遅れ、アンコール上映で観ることができた。最後の最期の上映なのか、前売券は2000円だった。

こういう途中休憩のある映画は、前半は長いにもかかわらず序盤で、後半に驚きがたくさん隠されている。後半を観させる為に、前半を丁寧に穏やかに描く。すべてとは言わない。長い映画に秀作、名作は多い。「旅芸人の記録」「アレキサンダー大王」「木靴の樹」「アラビアのロレンス」「ベン・ハー」「七人の侍」・・・どれも心に残る作品ばかりだ。 本作は、中でも、普通の構成、ストーリーであり、穏やかに平凡な手法で制作されている。が、目をはずせない。多くはない役の一人一人を実に丁寧に描いている。こういう気持ちを映し出す映画は、絶対にテレビでは伝わらない。テレビであれば、途中で辟易してしまうだろう。だが、映画館では瞬きもしたくない。映画とテレビの違いをはっきり伝える秀作だった。<75点>

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サウンド・オブ・サンダー

2006年03月26日 22時11分00秒 | さ 行 (2006.2007)

Soundofsander_1 <布施ラインシネマ10>

思いつきそうで、やっぱり思いつきそうで、結局思いつきそうな発想のSFだ。がしかし、よくできている。タイムスリップは、これまでとんでもない数が映画化されてきた。 本作はB級ものの上といえる。大きな話なのに、小さな空間の出来事のようだ。世界中、地球そのものが異変を起こしているのに、場所はその場から動かない。夜の街を走っても誰もいない。さらに、予算の関係もあるのかもしれないが、街の全景はミニチュア丸出しだし、街を歩くシーンのCGは昔の映画の合成で、不自然極まりない。ところが、問題が発生してからの虫の大群、進化した植物、動物たちは、驚くべきCGであった。オープニングとのギャップが大きい。大資金で作るべき大作だが、予算がないのがよくわかる。原作は知らないが、脚本も悩んだことだろう。 電車、車やバイクは様変わりしているが、ラスト近くに地下鉄にもぐりこむシーンでは、地下鉄車両は現代のままだ。なぜなのだろう。 ラストは、途中から読めてしまうが、単に楽しめる娯楽作品だった。単に楽しめる・・・これも映画に必要なことだ。しかめっ面で考えながら観る映画ばかりではいけない。やはり、娯楽に徹して、ほっとさせてくれるミーハー映画も多く必要なのだ。<65点>

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田中徳三“雷様”ナイト

2006年03月25日 23時30分00秒 | さ 行 (2006.2007)

Tanakatokuzo120_4 <九条シネ・ヌーヴォ>

Nuregami_sandogasa_1 濡れ髪三度笠 <45点>

Shinobinomono_1 忍びの者 霧隠才蔵        <70点>

Nemuri_sappou_2眠狂四郎殺法帖<50点>

Nemuri_onnna_1

眠狂四郎女地獄<75点>

田中徳三監督特集がはじまった。市川雷蔵は、私が小学生の頃、37歳という若さで亡くなっている。しかし、小学生の私の中でも市川雷蔵は「スタア」だった。小学生のこと、市川雷蔵の映画は一本も観ていない。はじめて観たのは大学の頃で、シリーズ化された「眠狂四郎」のどれかだった。魅力を感じなかったので、その後、特集もやっていたが、足を運ぶことはなかった。今回観たのは、私が43才となり、独身で不健康な生活なので、これを逃したらもう観る機会は二度とないと思ったからだ。こういう勘は、私はよくあてる。

当時、2本立、3本立。しかし、こうやって夜中から朝にかけて4本連続で観ると、頭が混乱してくる。内容が似ていることもある。田中徳三といえば「悪名」「座頭市」シリーズで、こちらの方が私は好きだ。監督生活の最後はテレビの「必殺」シリーズを監督していた。「必殺」は、映画監督陣が制作する贅沢なテレビシリーズだった。光と影を徹底してこだわっていた。映画の全盛期、斜陽を走り抜けた映画監督である。 田中徳三監督特集は、まだまだやっている。もう少し、観に行こうと思っている。


マザー・テレサ

2006年03月25日 22時00分00秒 | ま 行 (2006.2007)

Motherteresa_1 <アポロホール>

とても激しく、とても勇壮で、とても果敢で、とても優しく、とても穏やかな時間を過ごした。そして、久しぶりに魅せてくれたオリビア・ハッセーの役への挑み方に圧倒された。彼女は20年以上、マザー・テレサを演じるのが夢だったという。 映画は、まだ、修道院にいたころのマザー・テレサからはじまり、カルカッタのスラム街に出て、さらに世界をまわり、そして晩年までを描く。マザー・テレサの生涯と、彼女に共感して働くまわりの人物の物語を、よく2時間にまとめたものだと思う。あまりにとんとん拍子に進むが、これは、マザー・テレサという純朴で汚れのない心が、運命を決めてくれるのだろうか。神が手助けしてくれているとしか思えない。マザー・テレサだけではなく、そのまわりの人物も丁寧に映像化されているのが嬉しい。主役はマザー・テレサであったが、そのまわりの人物たちも一生をかけ、命をかけ、または祖国を捨てて運命を共にしている。彼ら、彼女らの助けもあって、マザー・テレサは世に名を残したのだ。細かな脚本と演出が光る。 苦しくても苦しみに思わず、貧しきものの為に動くマザー・テレサを演じるオリビア・ハッセーは、女優として、いい歳のとりかたをしている。悲しみの顔の中に、優しさ、温かさを見事に表現している。貧しきものにも愛を与え、それは無償であることをなんとも表現しがたい笑顔で見せる顔なのだ。観客は、温かい空気に包まれる。まさに大作であり、秀作だ。老いていくのは仕方ないが、これからの女優、貫禄をもったオリビア・ハッセーに期待は膨らむ。<80点>

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子ぎつねヘレン

2006年03月21日 23時23分20秒 | か 行 (2006.2007)

Kogitsuneheren_1 <アポロシネマ8>

映画の評価は、その人が観る精神、状況によって変わる。朝、気分よく起きることができたか、腹具合はよいか、嫌な一日ではなかったか、好きな女性と楽しい話をしたか、疲れているか、財布に十分なお金が入っているか、座席は居心地いいか・・・そうまでも言わなくとも、腹が減ってたり、喉が渇いていたり、前の座席に人がいるかいないか、楽しみにしているか・・・そんな細かな精神と肉体、観る人の環境が、作品の評価を左右させる。それほど人間とはいい加減で確たるものではない。そこに点数を付けて評価しようというのだから、何をかいわんやである。もっと言えば、愚の骨頂の如きマネゴトである。その愚の骨頂をわかっていてやっている私は何者なのだろう。言い方や表現は変わるが、そう思う事が度々ある。しかし、書きたい。

そう思う事が度々あれど、本作は愚作の何ものでもない。よくぞここまでの駄作を世にばら撒いたと嘆きたくなるほどであった。久しぶりにひどい映画を観た。 人物の背景、描写も描ききれてないし、心理も曖昧で、台詞も撮影も野暮ったい。だから、誰にも感情移入できないようになっている。松雪泰子にいたっては、前フリの自己中心が後半に転換されるところすら描いてない。カメラの後ろででもやっていたのだろうか。 観るべきはきつねであり、ちょい役の藤村俊二以外、俳優には何の魅力もなかった。子役にもなかった。泣かせようとしても、泣けない。泣かせるのは簡単な作業なのに泣けない。 美しい音楽のみ耳に残った。映画を観に行ったというより、映画全体に流れる音楽を聞きに行っただけであった。<25点>

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ブロークバック・マウンテン

2006年03月18日 22時32分02秒 | は 行 (2006.2007)

Brokebackmountain_1 <シネ・リーブル梅田>

「グリーン・ディスティニー」「ハルク」のアン・リー。アカデミー監督賞、脚色賞を獲得し、原作はピューリッツァ賞であり、話題になっていた一作だ。大阪では初日なので、かなりの混みようであった。単館は、一人でやってくるファンが多い。

女性に性欲を感じ、ゲイの意識のない男同士が、どの瞬間からそうなるのか。そうならないまでも、意識するのか・・・私には経験もなく、そのように感じたことのない凡人だ。男の友情が愛情になることはわかる。それが肉体的欲望までに膨らむまでの経緯が摩訶不思議だ。だからからか、観入ってしまった。 単純で変化のないシナリオであるのに、2時間20分が短かった。わかるか?意味を理解できるか?上映時間のすべて、探っていたのかもしれない。結局、私には理解できなかったが、静かな画面の中で自分自身の欲望を考え、葛藤と戦い、夢を語る二人の姿は見ごたえある。お勧めするほどの作品ではないが、実に丁寧に、地道に制作された映画だと思った。<75点>

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転がれ!たま子

2006年03月18日 22時30分10秒 | か 行 (2006.2007)

Korogaretamako_1 <第七藝術劇場>

少ない台詞、多くの表情を要求されていながら、主演の山田麻衣子はなかなか上手い。それにしても、日本は、モデル出身の女優が何と多いことか。 彼女のまわりの人物も端的によく描かれているし、それら人物の運命、生き方、エピソードも面白い。ひねりあげている。 また、彼女の心を具現する為に、穴を用意したり、鉄塔を用意したり、少年を配したり、賑やかである。のんびりした映画のようにみえ、一般的な2時間の映画なのに、実に盛りだくさんで、個性派の出演者も多く、スピーディだ。小さなエピソードは、膨らませていけば、堂々とした一本の映画になりそうだ。 彼女のとりまき、岸本加代子、広田レオナ、ミッキー・カーチスが特にいい。こういうキャスティングは、俳優に頼ろうとするところが大きいのだが、脚本がしっかりしている上にこのキャストなので、いい作品がもっとよくなっているのだろう。単館で短期間ではもったいないが、良質の作品は、常にこういう運命にある。ひと時も目のはなせない秀作に出合った。物語や台詞は地味であるが、様々、多くをひとつにまとめ上げて派手になった珍しい映画である。<85点>

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ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!

2006年03月18日 22時28分07秒 | あ 行 (2006)

Warestoguru_1 <梅田ブルク7>

これもアカデミー賞をとっている。だから観に来たというわけではない。普通より200円高い前売りも買ってあったし、観たかった。主に粘土細工で制作された根気のいる映画。なるほど・・・「ハウルの動く城」が勝てるはずがない。小さな世界の中で、とてもたくさんの出来事が起こり、それらがみんなキマル。アメリカと日本の笑い文化の違いにがっくりくることが多いが、日本人にもよくわかる笑いもふんだんにある。世界中にも通じる笑いなのだろう。特筆すべきは味方の犬と敵側の犬との遊具にコインを入れるシーンだ。あの笑いは子供の為ではなく、大人の観客を狙ったものだ。 はじめは「大変な作業をしているなあ」と思って粘土の動きを見ていたが、10分経ったあたりから、粘土も何も忘れて見入ってしまった。粘土だ、犬が運転するはずはないといったツッコミ、屁理屈を言わせる事さえ忘れさせてしまうのだ。次々と巻き起こる難問に「どうなるのか!」と子供のような気分で楽しめ、あっという間に終わった。小さな子供に観せるのはもったいない。これは、大人を喜ばせるための映画だ。<80点>

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日常

2006年03月16日 23時50分00秒 | な 行 (2006.2007)

Nichijyou_1 <動物園前シネフェスタ>

わずか一週間のレイトショーのみの単館である。また、DVである。そして、何が問題なのか、なかなか上映にこぎつけなかったという。 吉本芸人の若手が、大阪のなんでもない日常を演じている。演じているのは間違いないが、ドキュメントのような面白い試みであった。この小さな空間にそよぐ風は、お笑いの映画でなくとも微笑んでしまう居心地のよさだ。いろいろなショートエピソードを同じ風にするには、どのような演出であったろう。前後の物語がなく、芝居じみてない芝居をさせるのは難しい。個人個人を理解させなければならない。脚本は4人がかりだったようだが、長い脚本を書いたのではないかと思う。ラッシュは膨大で、オフラインも長かったのではないか。それを観やすい80分にさせて、飽きのこない作品へと確立させている。吉本の若手芸人に一人一人、いい味を植えているのは、芸人そのものの個性もあろうが、独創的な監督の手腕、観客の立場を最大限に尊重した編集の力だ。 300人のキャパ、約150人の若い観客が埋めていた。<75点>


イヌゴエ

2006年03月16日 23時30分00秒 | あ 行 (2006)

Inugoe_1 <第七藝術劇場>

大阪ではDVの上映となった。このところDVが多くなってきた。液晶テレビを観ているようで、やや不満はあるが、本作の完成度はかなり高い。期待は薄かったが、単に犬が喋るという単純なものではなかった。犬の台詞を通して、まわりの人間がしっかりと描かれ、かなり早い勢いで物語は進行していく。ゆったりした内容なのにスピーディーなのは、たくさんのエピソードを所狭しと散りばめているからだ。 主人公の設定もいいし、ほのかな恋心もいいし、興味津々の知らぬ世界へと私を導いてくれた。 犬の声は遠藤健一で、私の好きな役者の一人だが、本当の飼い主として最後に出演するのも気が利いている。 が、映画にするほどの内容でもないかもしれない。ビデオでも楽しめそうだ。劇場で鑑賞できなかった映画ファンは、ビデオ化されて観ても遜色はなかろう。「ガラスの使途(つかい)」を観終えて本作を観たが、観客は約40人とふくらんでいた。<70点>

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ガラスの使途(つかい)

2006年03月16日 23時00分00秒 | か 行 (2006.2007)

Garasunoshito_1 <第七藝術劇場>

舞台人でありながら、様々な場面を設定させてくれる脚本は素晴らしいと思う。専門的分野を基礎から学び、それを玄人の位置まで引き上げている。題材は地味であるが、役者がこのような原作、脚本を執筆することに嫉妬する。しかし、よく思うが、映画やテレビの唐十郎は、どうして舞台の上での芝居をそのままもってくるのだろう。力が入り、目いっぱい頑張る。それがわからない。映画を観ているはずなのに、舞台人そのままを見ている気がしてならない。 情熱はあるが落ちぶれた初老の男であれば、最高に映画内の気持ちいい空気を作ったかもしれない。それが、ぎらぎらしている。ぎらぎらしてはいけないのではないか・・・萎んでいく男から最高のレンズを生み出す感じがない。主演は佐藤めぐみの筈だが、唐十郎が圧しかかり、魅力を少なくしている。もったいないと思う。全体を見れば、よくできている。銀幕に釘付けになった人は多いだろう。 観客は私を含め、たった二人であった。<80点>

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ブラックキス

2006年03月14日 23時32分00秒 | は 行 (2006.2007)

Blackkiss_1 <第七藝術劇場>

私は大阪の長居に住んでいる。セレッソ大阪のホームグラウンド<長居競技場>のあるところだ。本作は「動物園前シネフェスタ」で公開していた。とても近い。レイトショーのみの公開で、こちらにがあると間がありすぎる。しかし、こちらが忙しいとはじまっている。そんなこんなで、見逃してしまった。縁が無かったのかと思いつつ、あきらめていた。が、第七藝術劇場で延長公開を知り、仕事をどうにか片付けて駆けつけた。十三は遠い。自宅から1時間以上もかかる。終わって帰る頃には明日になっている。

手塚眞監督の映画は、8ミリで自主制作していた頃の作品から観ている。なにがきっかけで、どういう環境で観たのかは忘れたが、独特の世界をもった人だと思った。天才の父をもつとそれを超えるのは難しいが、監督はそれを無視する如く、自分の道を歩いている。  本作も楽しめた。サイコ・スリラーの名に相応しい猟奇殺人と、次々と深まる謎。超不可思議現象、ブードゥーやゾンビを手がかりにしてしまう若い刑事の熱血漢も、陰湿な作品全体に助けを与えてくれて好印象だ。ところが、謎が解かれていくラスト20分、トーンダウンしていく。それも急速に。あまり台詞を読まずに、アメリカンコミックをぺらぺとめくっているようである。 監督は過程を楽しんでいて、結末はどうでもいいと思っているのかもしれない。私も過程を楽しんだ。しかし、結末に向かっていくしかない映画の中で、それを疎かにしてもいいのか。「疎かなんて!」と叱られるかもしれないが、私は疎かにみえた。謎解きの前に「つづく」なんて出てくれたら、興奮して帰宅したかもしれない。 思ったとおり、帰ったら翌日になっていたが、興奮していない。最後の20分がなければなぁ・・・何度も頭の中でくりかえした。<70点>


ナルニア国物語~第一章~魔女とライオン

2006年03月13日 22時42分14秒 | な 行 (2006.2007)

Narunia1_1 <ナビオTOHOプレックス>

映画館で、何十回、この予告を観たろうか。大宣伝の<第一章>が幕をあけた。過剰な予告は、知らぬうちに期待感をふくらませる。どんな凄い映画を観させてもらえるのだろうかと。 原作は全部で第六章まであるが、第一章からこれではいけない。構成もストーリーも、満足、不満足の無い中途半端な御伽話だ。「ハリー・ポッター」も飽きてきたが、この作品より、ずっと面白い。 この頃のディズニーはネタ切れなのか、こんな作品を世に出してしまった。近日公開のディズニー映画「南極物語」は、邦画を映画として認めてないようで、あんまりだ。 本作は、出演者の予算を削減し、大きなセットとCGにお金をかけている。のはわかる。製作者は、本当に面白がって作ったのだろうか。第二章を公開して、客は集まるのか。おそらくではあるが、第三章あたりで止めてしまいそうな気がする。 子供も満足しない、壮大でこじんまりした煮え切らない作品。宣伝の力で、一年に2本、3本しか観ない客を呼び込み、「やっぱり、映画はつまんないなあ。」と思わせたくない。 日曜のミーハー映画館は、500席の椅子に、50人の客を呼び込んでいた。<45点>

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