活動写真放浪家人生

活動写真を観ながら全国放浪の旅ちう

美しき運命の傷痕

2006年04月30日 21時21分41秒 | あ 行 (2006)

Utsukushikiunmeinokizuato <動物園前シネフェスタ>

スクリーンでエマニュエル・ベアールを久しぶりに見た。もう10年くらい前になるのか、やってくるフランス映画がどれもエマニュアル・ベアール主演だったことがある。フランスで一番の女優だった。その頃、ハリウッドに呼ばれ、「ミッション・インポッシブル」にも出演した。が、彼女は何かのデモで逮捕され、しばらく姿を消した。もう彼女を見ることはないのかと思うほどのお休みだった。フランスでは出ていたのかもしれないが、日本にはやってこなかった。「美しき諍い女」「フランスの女」なんて、頭に焼き付いて離れない。秀作をこえて、名作だと個人的には思っている。

本作は、キャストに驚かされる。お祭りのような俳優たちの主演級の競演だ。それに圧倒され、期待するが、期待ほどではなく、地味なフランスの典型とも言える作品だった。大作をハリウッドに任せてしまったフランスが、内容、質で勝負することを決めたのは、もう50年以上前。だが、シネマ、シナリオなんていうフランス語は日本でも使われる。しかし、質より何より、印象深い作品が最近、少なくはないか。フランス国内では、昔の日本の時代劇が流行っている。

この映画の脚本は緻密であり、クレーンバックの俯瞰を多く出し、丁寧に撮られている。しかし、だからといって新しいものは発見できない。出てくる人がすべて切なく淋しい。こらえ切れない感情を抱えている。あまりにもあまりであんまりだから、観る側の気持ちが落ち込む。私は無理に時間を作って映画を観る野郎なので、疲れていたら、30分で寝たかもしれない。「映画を観る時間がない」なんてウソで、時間は作ればできる。私は徹夜が続いたり、忙しい時ほど映画館で映画を観ている。

ラストはやや衝撃的。これは、映画全体をぶっ壊してしまう力があった。ぶっ壊されて、途中の話が小さな小さなことのように思えるが、それも枝葉の根の部分をラストですぱっと言い切ることにある。このラストシーン、台詞の為に、1時間40分を丁寧に観なければならないのだ。観終えた後、そう思った。 印象的だったのは、エマニュアル・ベアールは、まだまだ美しいということだ。作品に恵まれなくなったが。<60点>

人気ランキング←もし、気に入られたら☆


空中庭園

2006年04月29日 17時17分47秒 | か 行 (2006.2007)

Kuuchuuteien <千里セルシーシアター>

観逃した作品が多い。本作もそうである。なんたらかんたら、たくさんの映画ベスト10に入ってくれたから、再上映で観る機会を得た。

庭園を描く蛍光灯の笠のオープニングカットから、鈴木杏が出て行くまでの約5~7分、クレーンダウンしながらフィックスするまで、いきなりの長回し。この作品はびっくりするほど長回しが多い。 相米慎二のそれとは違う。長回しだが、異様なカメラの動き、ステディカムとクレーンと俳優の動き(交差が多い)によって、それを長回しだと思わせないように工夫している。ある時間(定められた時間)をリアルタイムで撮るということ、すなわち長回しは、観るものを共有させる力をもつ。わかっていて観ていてもそうなる。不思議な撮り方なのだ。緊張するシーンでは観客は緊張し、和やかなシーンでは和やかな気持ちになる。科学的に根拠はあるのかどうかは知らないが、とにかくそういうことになっている。

長回しの有名な監督にブライアン・デ・パルマがいる。この監督の映画のはじめのカットは、まず長回しだと思っていい。注意してみれば、驚くだろう。長いものになると15分もある。カメラが自由自在に動くので気づかぬが、15分後にあらわれる俳優は「レディ・アクション!」から緊張して15分の時間を過ごすだろう。自分でNGを出したら最初からだ。DVDでもいいので「スネーク・アイズ」の1カット目を観ていただきたい。どこで2カット目に入るか・・・OKフィルムなのだが、どこかで間違うのではないかとハラハラする。しかし、多くの人はこれを長回しと思わない。思わないから、監督は観客の心を自由に操ることができる。監督にとってはシメシメなのだ。

ブライアン・デ・パルマまでの長回しにはいかずとも「空中庭園」の長回しも監督のこだわりなのだろう。何回、何十回のリハーサルを経て、OKに至ったかを知りたくなる。俳優もスタッフもいらいらする様子が窺える。ラスト近くのキレるシーンのカットの長回しも大変だったろう。が、その次のカット、ケーキに蝋燭を立ててやってきて、二人の会話と一緒にカメラがまわっていくのも、どれだけ大変なカットか。二人のまわりを4周するが、最後の台詞がきたとき、小泉今日子をバストショットで構図を決めなければならない。計算されたリハーサルが大変だ。 長回しになると「大変だなあ。頑張ってるなあ。」と思いながら観る。そんな観方は最低かもしれないが、スタッフがカメラ後ろに入れないような長回しでは、どうしても気になってしまう。良い題材だし、テンポもいいし、台詞も気が利いているし、構成も面白いし、俳優人も一人一人が印象的だ。中でも台詞が抜群なのだが、それらを書くと全部書かねばならない。他にはない台詞・・・それだけで十分だ。しかしその上に、撮り方が凝られているから、私個人としては、文句のつけようがない秀作と言わざるをえない。

出てくる人物の背景も丁寧に描いていて、いいところを凝縮して搾り出した感がある。もっと深く描けるが、膨らませる必要のない映画の流れにしている。つまり、内容が贅沢だということだ。 この作品では、観覧車が印象的に何度も出てくるが、彼ら彼女らの心象を物語っていて、使い方がうまい。そしてすべてのエピソードは観覧車からはじまっているのも、面白い試みだ。この家族のように、観覧車はゆっくり回る。タイトルの如く。そんな面白い試みなのだが、ちゃんと成功している。こんな撮り方をして、しっかりと描ききった映画は・・・他にないのではないか。観ておくべき、お勧めの日本映画の一本だ。<85点>

人気ランキング←もし、気に入られたら☆


クレールの刺繍

2006年04月29日 17時16分39秒 | か 行 (2006.2007)

Photo_2 <千里セルシーシアター>

フランスの田舎町を舞台に、静かな静かな優しくも切ない愛すべき秀作が誕生した。望まれぬ妊娠なんて、その言葉そのものが嫌いだが、主演の彼女の妊娠に対する恥ずべき姿は全編にわたる。彼女は刺繍で生きていきたいと思っている。交通事故で一人息子を亡くし、絶望の日々を送る刺繍職人のアトリエで、二人は黙々と刺繍制作に励む。お金を稼ぐため、自分の家のキャベツを盗み、売りにでかけながら・・・ストーリーを書くとは私らしくないが、要するになんということもないストーリーなのだ。台詞も少なく、撮り方も凝ってはいない。それなのに観入る。1時間40分、息も立てたくないほどに観入る。たった一度、ラストで彼女は笑顔を見せる。どんよりした曇った空を一瞬で打ち消す力のある自然な笑顔だ。観る側の緊張感はここで解け、思いっきり息を吸う。曇り空が晴れ上がるのは、なんと清々しいことか。暗い切ないつかみ所を失いかける映画だったが、最後の笑顔で観客は救われる。<75点>


柳町光男監督傑作選&オールナイト

2006年04月28日 23時55分00秒 | あ 行 (2006)

Jyukyusaino <第七藝術劇場>

十九歳の地図<80点>

Blackemperor ゴッド・スピード・ユー! ブラック・エンペラー<60点>

Sarabaitoshiki さらば愛しき大地<75点>

Ainitsuite 愛について、東京<80点>

「カミュなんて知らない」公開を記念して、柳町光男監督の過去の映画を特集した。「十九歳の地図」「さらば愛しき大地」「ブラック・エンペラー」は20~25年前に観た作品だ。柳町光男監督の映画は時代の先の先をいっていて、公開時は賛否両論だったように思う。私もどう感想を言っていいかわからなかった。この4作品を観て、2006年、ようやく時代は追いついたと思った。どの映画も、現代日本映画の最先をいっている。

1時間のトークショーを聞き、いよいよオールナイトとなった。私はミーハーではないが、一緒にきたものがミーハーなので、監督がみんなからサインを求められているのを見て、私も「カミュなんて知らない」のチラシを持っていき『お願いします』と頼んだ。柳町監督は私の目を見て「チッ!」と苦笑し、あきれた表情を見せ、しぶしぶ、サインに応えた。『ありがとうございます』と言ったが、サインペンを劇場関係者に返すことに頭がうつっていて、私を無視した。おっさんがサインを頼んだのだから、興味ないだろう。お金にもならない。まあ、そんなことはどうでもいいが、サインをいただいたのだから、感謝せねばならない。同行のミーハーに手渡し、オールナイト鑑賞となる。

続けて観たのでわかったが「さらば愛しき大地」は「十九歳の地図」を土台に制作されたことがわかる。そして「十九歳の地図」は「ブラック・エンペラー」を土台に制作されている。そして処女作「ブラック・エンペラー」がすべての映画の土台になっているように感じた。トークは温和だったが、監督が考えていること、作るものはギラギラと血なまぐさく、狂気に満ちている。痛々しく、火傷した肌を強くもなく弱くもなく触っているような雰囲気に包まれる。 監督のデビューはラッキーなものだったが、その後は恵まれた環境の中にはいなかったように思う。多のを監督作品はない。素材、構成、脚本が激しく時代の先の先をいっていたから、時代が追いつくのを待っておかねばならない。ようやく時代が追いついてくれたが、これらの作品を大々的に公開する劇場はないだろう。

1作品1000万円で制作しようと頑張っていた「ATG」の頃、これらは制作されている。別物だが、ATG作品の風に似ていないこともない。この時代、この手の映画がたくさん作られた。音楽分野で、フォークが流行ったように。お金をかけない質を重視した映画群は、今の日本映画にないバイタリティがある。そして、表現しがたい空気を持ち、観るものに恐ろしいほどの緊張感を与える。どんな映画なのか・・・「魅せる映画」・・・これが監督の作品たちなのだろう。

人気ランキング←もし、気に入られたら☆


ウォーク・ザ・ライン 君につづく道

2006年04月27日 23時30分00秒 | あ 行 (2006)

Photo_10 <ホクテンザ2>

なんだか評判らしかった。観客動員も多いと聞いた。たくさんの劇場でやっていた。賞をたくさん獲った。そういうわけで、ロングランになるだろうと思って・・・行かなかった。いつでも行けると思うといつまでも行かない。いつでも行けると思い続けていたら、終わっていた。番館落ちの劇場で観る機会を得た。私は見逃してもDVDでは観ない偏屈なので、番館落ちしてくれなかったら、一生、観なかったろう。

実話がベースといえども、特別、とりたてて騒ぎ立てるほどの作品ではない。この映画は、構成や脚本の出来より、主演の二人と父親役の三人にかかっていると言える。どうしてもターミネーターを思い出すが、父親役はいい味を出している。そして主役の熱演。しかしここまでで、先の読める内容、人生だった。アメリカ人は、一度晴れ舞台に立ち、落ちぶれ、カムバックした人に拍手をおくる国民だ。ジョン・トラボルタがよい例で、彼は落ちぶれたが、本物の役者を目指し努力し、オーディションを受け、カムバックを果たした。 本作は、アメリカ人が喜ぶテーマの基本だとも言える。先の内容も読めるし、珍しいことをするわけではないので、私としては評論にならない。感想程度のコメントで勘弁していただきたい。<55点>

人気ランキング←もし、気に入られたら☆


小さき勇者たち GAMERA

2006年04月26日 22時45分13秒 | た 行 (2006.2007)

Chiisakiyushatachigamera <試写>

大映のガメラシリーズは倒産によって、7作で幕を閉じた。平成に生まれ変わったガメラは、まったく様子が違っていた。子供が観る怪獣映画から、大人の為の怪獣映画へ。子供が観てもわからないだろうという製作姿勢だ。内容の濃い醍醐味のある映画だった。ゴジラは子供用に、ガメラは大人用に・・・平成の怪獣映画は二分化した。しかし、子供を寄せ付けない怪獣映画は3作で終焉となった。興行的に無理があったのだろう。ガメラ復活で、大映側は「ガメラとゴジラを同じスクリーンで登場させたい」と言ったが、東宝は「まだ早いでしょう」と言っている。社長と社長の対談である。東宝は勘違いをしていると私は思った。作品としての出来は、ガメラが完全に上をいっていたからだ。興行的にゴジラが上だっただけで、コジラはガメラの足元にも及ばない。私は当時、そう思った。

2006年、ガメラは子供も大人も楽しめる映画として生まれかえった。大映は関係ない存在になり、角川映画が製作し、松竹が配給する。大映無視とはちょっと哀しく思う。 「小さき勇者たち」は後半部分で見せてくれるが、このタイトルは悪くない。ガメラを土台(材料)に少年少女の活躍を描く。ガメラと子供たちは、目に見えぬ心の糸で結ばれている。 少年が主役であり、ガメラの心と結び合う形は、昭和のガメラシリーズと同じである。 ストーリーは単純だが、視覚効果もCGもミニチュアもよく作ってある。そこに制作費を投じたのか、ギャラの高い出演者はいない。 私は、卵から産まれたガメラをどのように育てていくのかを楽しみにしていた。だから、前半部分はとても楽しかった。が、遊んでいるだけで飼育をしていない。何を餌にして大きくなっていくのかがわからない。食わせなくてもよかったのか、食わせるシーンは不必要だったのか・・・折角、身近なガメラを描いたのだから、細かく知りたかった。そんな希望はあるが、しかし、これはこれで良作だと思う。儲かったからといって、次回作は作らないでほしい一作だ。<65点>

ランキング←気に入ってくれたらお願いします☆


寝ずの番

2006年04月23日 23時45分00秒 | な 行 (2006.2007)

Nezunoban_1 <動物園前シネフェスタ>

伊丹十三監督は「お葬式」でデビューした。伊丹監督が亡くなるまで、すべての映画に津川雅彦は出演している。そして津川(マキノ)雅彦監督は「寝ずの番」でデビューした。何かの因果か、私は目に見えぬつながりを感ずる。 監督名を聞いたとき、マキノ正博を思い出し、何が何やらわからぬ錯覚をした。マキノ正博監督の映画は、大学を卒業後に観る機会があり、現存する映画のうちから何本か観させてもらった。津川雅彦、長門裕之兄弟の伯父であり、日本独自のトーキー(音声のついた映画)をはじめて世に生み出した。声を最大限に活かす為、侍ミュージカル(サムライオペレッタという分野があった)なるものを制作している。もちろん戦前の話だ。マキノ正博監督は良作には恵まれていないと思うが、抜きにしては日本映画史を語ることができない。そして、マキノ正博の父はマキノ省三監督である。マキノ省三は、日本映画を初めて監督した人だ。変位系三世代で映画監督となった。マキノの名は、無声映画からトーキーへ移行する時代には必ず出てくる。津川雅彦が監督するにあたり、マキノと付けたかった気持ちがよくわかる。 「寝ずの番」は、前評判を呼び、全国で公開されている。好調なデビューだ。

こんな映画はアリなのだろうか。永久にテレビでは放映されないだろう。ここまで淫語をまくしたてる映画を他には知らない。中島らも原作であり、間違いなく松福亭松鶴と門下をヒントに書かれている。この脚本は見事だが、よく、このホンを読んで、みんな、出演交渉に応じたものだと思う。特に中井貴一と木村佳乃の出演承諾を得たのは拍手だ。それもこれも、長い俳優人生と人柄なのだと思う。化けようによったら、この映画は、彼らのイメージを完全に崩すおそれもあるからだ。俳優としては賭けではないか。大袈裟かもしれないが。 とは言うものの、コピーのとおり、本当に「バチがあたるほど面白い」。 師匠が死ぬまで、その通夜と生きていた頃のエピソードが抜群に楽しめる。そして、一番弟子が死に、その通夜と生きていた頃のエピソードも痛快だ。ここまでで1時間20分。観させる、楽しませる、笑わせる。落語「らくだ」のかんかん踊りで師匠が足を動かすカットなんて、天才だと思う。「地獄八景亡者戯」は桂米朝の十八番だ。これを35分でやりとげるエピソードも楽しいし、淡路島での「お茶子」の聞き手側からのエピソードなんて、撮影、編集に手腕がかかる。最後までこの調子でつっぱっていくのかと思っていた。だが、堺正章の登場から、トーンダウンするのだ。堺正章登場だから、もっと面白くなりそうだが、違った。 上手(かみて)よりドリーショットで弟子たちを語らせ、ドリーストップで堺正章の横顔がフレームインする。カメラはフィックスをきめて、堺正章がカメラ前へ出て構図を確立し、エピソードを語る。ここまでやや長め、ワンカットで処理している。こういう撮影は、カメラのドリー速度と俳優の台詞をリンクさせなければならない。さらに、堺正章がカメラ前に移動し、両脇に空間をつくらない構図にもっていくのは難しい。何気なく流れるが、実は大変な撮影なのだ。みんなの呼吸があわなければならない。さらりと、そういう凝った撮り方をしているので、ここから山場か?と思ってしまう。しかし、最後のエピソードは全体の中では冴えないものとなる。これをラストエピソードにもってくるのはどうだろうか・・・。 この映画、カメラは特殊な動きをしないのに、役者が動き、交差し、映像に立体感を与えている。役者自身がカメラの動きの役割をしている。長いカットでも、動きがある。スタッフのアングルや動きに頼らず、役者に担わせた。流石は、長年活躍した俳優の撮った映画である。

ちなみに、ずっと座っているだけの蛭子能収をいらないと言う評を聞くが、確かにいらないのかもしれないが、あの役は原作者の「中島らも」なのである。喋るだけの人物ばかりではなく、聞く人を、俳優ではない蛭子能収としたのだ。俳優ではなく、素人に演じさせた。終始、見続ける、聞き続ける役である。<80点>

人気ランキング←気に入ったら押してネ☆


Vフォー・ヴェンデッタ

2006年04月23日 23時30分00秒 | は 行 (2006.2007)

Vforven_1 <動物園前シネフェスタ>

緻密で丁寧で奇抜で残酷だ。世界中の戦争、内戦の裏側にいつも立っていることを自国が認めた形になっている。本作は、政府や役人から嫌われたことだろう。よく映画化し、そして日本へもやってきてくれた。非現実な世界を描いているが、現実になりうるかもしれないという意識にさせる。こういう風ではなく、別な形として似たような未来がやってくるのではないかと。台詞や舞台は複雑でも、やっていることは単純だ。 これを特別な撮り方ではなく、あえてオーソドックスであるから、なお更、緊張感を高める。脚本の出来がよいので、凝る撮り方の必要がなかったのだろう。説明くささもあるけれど、アクション映画としてのエンターテイメントも併せ持っているので、きつく楽しめた。きつく首を絞められているように楽しめた。SFと分類するにはちょっと違う。危機感ある可能性のあるフィクションだと思った。見終えた後、どういうわけかお腹が暗い気持ちになったので、もう一本、観たくなった。この評論はいつにも増して愚筆だが、というのも、何を書いていいか悩ませる一本である。<65点>

人気ランキングへ←気に入ったらお願いします☆


コルシカン・ファイル

2006年04月22日 23時13分14秒 | か 行 (2006.2007)

Corsicanfile_1 <天六ユウラク座>

前情報も何もなく、とりあえず時間があるし、帰るのは早いし・・・観た。これはもう病気である。映画鑑賞欲求症候群または銀幕前方位置固定症候群または変人と言える。なにはともあれ、病気だ。映画専門医師に相談しなくてはいけない。 フランスの笑いは日本人にはよくわかる。イギリスの笑いもよくわかる。なのに、アメリカの笑いのツボがわからない。「オースティンパワーズ」が全米ロングヒットしているのは、わからない。わかるには、アメリカ人に生まれなければならないような気がする。イギリスは楽しめるのに・・・同じじゃないのか?どうでもいいが・・・。

フランスコメディは平均して楽しい。笑いの基本は緊張の緩和であるから、本作のように、警察、事件という格好の緊張素材を用意してあるので、小さな笑いでも大きくしてくれる。ジャン・レノも映画を楽しんでいるような、いつもとは違った表情で、笑いを熱演してくれる。私としては、気楽にニコニコ笑いながら観る映画が一番好きだ。何も考えなくていいし、嫌なことも忘れる。頭からエンディングまで、安定した緊張感と緩和をくりかえし、今日の日を満足した。日本の配給会社は、気の利いたコメディをあまり輸入しなてのだという。気の利かないアメリカンコメディは輸入するのに。金儲けに走る足を、歩く足に変えたらどうだろう。<50点>

ランキング←気に入ったらお願いします☆


トム・ヤム・クン!

2006年04月22日 23時11分37秒 | た 行 (2006.2007)

Tpmyamkun_1 <ナビオTOHOプレックス>

「マッハ!」も観た。マッハ!とはまったく違う映画だが、「七人のマッハ!!!!!!!」も観た。同じタイで「the EYE」も観ている。どれも楽しめた。本作こそが「マッハ!2」とも言えるべき映画である。日本版タイトルだろうと思っていたが、英語でタイトルがそのまま出た。なんというタイトルだろう。世界市場を狙っているのだろうか。私が学生の頃観ていた低予算のジャキー・チェンの映画群に似ている。ジャッキー・チェンが「酔拳」で日本初公開した後、大ヒットに気をよくしてこれまでの主演映画をやたら輸入した時代があった。二重が一重になっていた。 仏像を取り返せ!の前作より話が凝っている。が、大体、話の内容は同じ。単純で、娯楽に徹している。娯楽アクションも大好きだ。テーマなんてどうでもいい。ストーリーは、アクションを見せたいがために、懸命にこじつけているのだろう。「また仏像が盗まれた!」でもOKだった。とりあえず、盗られたものを取り返す。「像を返せ!」なんて面白いし、動物が出ると情も湧く。像も死んだ芝居をこなす。そして、冗談抜きの本当の殴り合い。アメリカ映画でこういうシーンを観ても思わないが、タイの映画は痛い痛い。ただただ楽しませてくれる。それも、いいおっさんたちが命がけで。だからやっぱり映画が好きだ。<65点>

ランキング←気に入ったらお願い☆


アイス・エイジ2

2006年04月22日 23時09分28秒 | あ 行 (2006)

Iceage2_1 <ナビオTOHOプレックス>

正直、CGアニメは飽きている。はじめに観た「トイ・ストーリー」はCGに圧倒され、びっくり仰天だったが、新しい映像を観たという感動だったのだ。映画としては内容にしても見せ方にしても「トイ・ストーリー2」の方が上回っている。私としてはそう思う。

ディズニーのCGアニメを一蹴する映画が「アイス・エイジ(氷河期)」だ。話の筋も大したことはなく、単純であり、CGだからと目だった事はしない。だから、CGする必要もないが、映画としてよろしい。ひとつひとつの動物に命を吹き込み、個性豊かに描いている。重なるキャラはいない。大きな舞台で、これらひとつひとつに個性を持たせるのは困難だろうが、その困難さを吹き飛ばし、キャラを追いかけるワークに成功している。そして、この作品の他にはない楽しさは「リスと団栗の追いかけっこ」をポイントポイントに、まるでCM、息抜きのように挿入しているところにある。これが利いている。もう誰も知らないだろうが、伝説のギャグ番組「ゲバケバ90分」のハナ肇の役割の如くだ。一人ぼっちで団栗を追いかける短いエピソードが、私たちをほっとさせてくれる。これがなければ、単純すぎて、だらだらした作品になったかもしれない。最後の最後、そのエピソードは出会い、みんなを助けるのは、団栗であり、リスだったというのも可笑しい。CGアニメの中でも上の部類に入る良作だ。<70点>

ランキング←気に入ったらお願いします☆


リバティーン

2006年04月20日 23時30分00秒 | ら 行 (2006.2007)

Ribateen_1 <テアトル梅田>

私はこの時代の欧州を扱った映画が苦手だ。こんな映画にもジョニー・デップは出るのか・・・資料やパンフレットを読めば評論も書けるだろうが、読んでまで書こうとは思わない。だから、とても苦手で感想にもならない。しかしジョニー・デップは役者と呼べる役者で、前半の活き活きした演技と、後半の梅毒を患い死にゆく様の対照的な演技力に確かな俳優だと感ずる。前半も後半も姿かたちは変わるが、カリスマ性だけは失わない。どこまで脚本に書き込まれていたのかはわからないが、その柱、自分の柱を崩すことなく、見事に変化させていることに驚愕した。人気ある映画だと聞いてやってきたが、観客は私を含め9人だった。<45点>

人気ランキング


かもめ食堂

2006年04月20日 23時00分00秒 | 90点以上(2006.2007)

Kamomeshokudoh_1 <梅田ガーデンシネマ>

Kamomeshonicht_1 ←かもめ食堂舞台挨拶初日風景。徹夜組もいたという。(青木美奈子女史提供)

私は監督の前作「バーバー吉野」「恋は五・七・五!」をまったく評価していない。「バーバー吉野」は奇抜なアイデアだが、もたいまさこの存在に助けられただけの凡作だった。楽しみにしていたから尚更、がっくりきた。「恋は五・七・五!」はそれを下回る青春映画だ。評価のしようがない。 だから、本作も観るつもりはなかった。よくまあ、第二回監督作品にありつけたものだと思っていた。初日の舞台挨拶は、朝の8時30分からチケット販売だというのに、行ってみると、観客が映画館をぐるりととりまいていたという。初日の朝10時には夜の回まで売り切れ。単館としては異例だ。「ホテル・ルワンダ」も異常だった。口コミで広がった「ホテル・ルワンダ」だが、本作は、初日なのに満員御礼。私にはわからない。

「バーバー吉野」から荻上直美に何があったのか・・・180度、違った。「かもめ食堂」は、違う監督が撮ったのではないかと思う程の秀作だった。目には見えないが、スクリーンにそよぐ心地良い風を感じる。その風が2時間、そよぎ続けた。まだまだ2時間くらい観たかった。熱っぽく最悪の体調だったが、観ている間、それをも忘れた。小林聡美、片桐はいり、もたいまさこの個性も損なうことなく、いやそれ以上に個性を出し合い、その上、潰しあってない。生きている。優れた女優陣が、もっと優れている。片桐はいりを久しぶりに見て、昔、そういえばインタビュー取材をしたことを思い出した。あれから20年近くになる。まだかけだしの女優だった。一度見たら忘れない顔立ちだ。 脚本も優れていることが観ていて読み取れる。また、台詞も気が利いている。いい会話だ。台詞はいいのに構成がダメ、構成はいいのに台詞がダメという映画はいっぱいある。「かもめ食堂」は、そのどちらもが上手く、巧みだ。 黙ったままで働く姿から会話までの間、タイミングも心地がいい。そして、カメラをフィックスとしたワンカット仕上げも多く出てくるが、シーンによってハンディを使う。時間や心理や状況にあわせてカメラワークを使い分けている。さらに、ラスト近く、1シーンのみ画の色がブルーになる。極端に変わる。知られずにエピソードを語りたいのだろうが、はっきりわかる。これによって、観るものに緊張感を与えているのだ。 しかし、単調な内容なのに、ここまで観るものをひきつける邦画は、最近、見ない。とんでもなく素晴らしい映画だった。「バーバー吉野」は広いロケ地で閉鎖的な作品だったが、「かもめ食堂」は狭い空間で開放的な作品だ。まさに対照的。

しかしもうゴタクは言わない。拍手するのみ。観ないで死ななくてよかった。<90点>

人気ランキング←気に入ったらお願いします☆


シムソンズ

2006年04月18日 23時49分40秒 | さ 行 (2006.2007)

Simsons_1 <九条シネ・ヌーヴォ>

どこかで以前、やっていたのだろうか。これはアンコール上映か。私の知る限り、なにしろ大阪では一館のみで一週間のみの公開。映画館、配給会社はまだしも、製作プロダクションまでお金は行かないだろう。私は18時40分の回を観たが、前の上映が終わっても誰も出てこなかった。無人の客席に向けて上映していたわけだ。私が観た回も10人も居なかった。大阪でこんなことだから、全国ロードはどうするのだろうか。他人事だが、私はひどく気になる。日本映画のこれからがとても気になる。映画ファンの減少とシネコンの乱立もひどく気になる。映画に関しては何もかも気になる。年令のせいか、一度見ただけで覚えていた監督名、俳優名をあまり覚えられなくなってしまった。これも気になる。日本映画は東宝が一人勝ちしているのも気になる。

一般的には、カーリングという地味でルールもわからないスポーツを取り扱ったなんて、それだけで勇気がある。ストーリーや独創性や新たな発見はないが、スポ根ものとして、異質な扱いをされるだろう。主演の加藤ローサが、どういうわけか上手い。彼女は、主役を意識しながら、主役を飛びぬけた存在をスクリーンにあらわす。監督のおかげかもしれないが、彼女の起用に首を傾げてたが、なるほどと思わせた。単調でおきまりの流れであるのに、2時間があっという間に過ぎた。私はスポーツをしない人間だが、こういう映画のジャンルは確立していて、日本人好みなのだろう。根性、努力、頑張る、熱中、友情・・・個人的にはあまり好きな言葉ではないのだが、見るのは好きだ。嫌いだが、自分もやっている。根性や努力や熱意がなければ、私は二十代で、ディレクターの道をあきらめていたろう。<60点>

人気ランキングへ←気に入ったらお願い☆