萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

文学雑談:ある偽善小説

2015-09-19 22:50:00 | 文学閑話散文系
気分転換に雑談します、笑

まとめサイトたまーに見るんですけど、そこから跳んだ記事にあるメールの話がありました。
ソレが何かって言うと、某作家とある男性の往還メールをまとめたサイトのコトでした。

某作家はいわゆるヒロイックファンタジーを書いていた女性、
ある男性はその愛読者だった一人です。

で、その小説が性的虐待の描写が増えてしまい、
ようするに強姦を描いたワケですが、それが男性の同性愛者だった。
ソレも一人なら良いけど複数にわたり描かれて、結果、

同性愛=強姦SM愛好家

という誤解を受けかねない描き方になってしまったわけで、
そのことを問いかけたメールを男性は彼女宛に送りました。

・・・・・

同性愛の男も普通に生きている普通の人間です、それを偏執狂のよう描かれては誤解と偏見をうみかねません。
なにより同性愛の人間が傷つきます、僕自身も同性愛者です、そして普通の人間です。
ずっと愛読していた小説でこのようなことは個人的に裏切られた気持でした。

・・・・・

っていう内容のメールを送ったそうです。

この作家女性、その作品の第1巻でもハンセン病患者について誤解と偏見の描写をした前歴があります。
そのときも抗議の声が上がり書き直したそうです、が、この件については結果スルーでした。
この男性に返した彼女のメールから率直に言って、

正当化×偽善 

と、自分は想ってしまいました、笑

それはメールだけじゃなく、彼女自身についてそう想わざるを得ません。
なぜそう想うかというと、らい病患者と同性愛者への「対応差の理由」です。

なぜ彼女はハンセン病患者の描写は書き直したのか?
なぜ彼女は同性愛=強姦愛好について正当化するのか?

その理由はたぶん、突詰めちゃうと法的問題=世間体かなって思います。

ハンセン病患者は昔、人間の尊厳すべてを否定された歴史があります。
遺伝病だという誤認識からパイプカット=性的不能の処置をされ、また感染経路の誤認から隔離されました。
けれど実際は感染力が非常に低い病気です、ただし適切な処置を行わないと皮膚がただれ外貌が崩れます。
現在は薬剤などの進歩で発症率も低下し罹患しても完治します、ですが昔は苦しみました。
皮膚がくずれて顔面から変形する、そうした症状に差別と偏見が起きたワケです。

そうした差別偏見×誤認識は行政のミスを招きました。
パイプカットや隔離は人間の尊厳を奪う行為でもあります、それを行政から行ってしまった。
こうした歴史から保障制度や擁護団体が現在はあります。

でも同性愛者には行政や法からの保護はありません。
当事者たちで作ったコミュニティはあっても差別から擁護する盾は無いわけです。

法制度、擁護団体。この2つの存在から糾弾されると?

そういうので差がでるのって偽善者にはありがちなことで、
で、そういうのが彼女と出版元の対応差に無関係と言えないだろうと。

・・・・・

私は同性愛者の友達がいる、そのひとたちも私の小説に賛同している。
ディベートなら受けて立とうじゃないか。

・・・・・

というのが彼女のメール態度でした。
で、つい思い出させられるのは「裸の王様」です。

同性愛者はマイノリティ、少数派。

彼女はいわゆる売れっ子作家、発言力がある程度ある立場。

少数派の人間が売れっ子作家に「あんたの作品は差別だサイテー」と真っ向から言えるのか?

っていう感情方程式も解けないのは、浅慮×傲慢の証拠だなあと思います。

小説、漫画、ドラマ、

いわゆる人間模様を描くツールは影響力があります。
感情、倫理観、歴史観、主観から客観へ育つ種を植えつけてしまう。
だから描く対象をきちんと調べて「現実」リアルに添って描くことは、偏見を生まない最大の防御です。

だから「取材」という言葉もある、描く素材を取り集めて生みだすものだから。
そして、コレを怠ってしまうと結果として偏見が生まれます。

ずっと不思議だったんですよね、

「なんでいわゆるBL本は性的虐待×強姦シーンが多いんだろう?」

ここで小説を描きはじめるときWebでBLを読んでみました。
雑談寓話に書いてるけど友達にバイセクシャルの男がいます、そいつの言葉の現実を知りたくて読みました。

「BLとかって大嫌いだ、勝手な妄想で俺たちを変態犯罪者にしやがって、」

そう泣いて怒った彼は、ごくフツーの社会人です。

きちんとスーツ着て通勤して、
デスクについて膨大な資料を読み、書き、会議して、折衝もする。
仕事終わりには同僚と呑みにいって笑って、グチって、時に泣いて怒って。
そして帰宅すれば仕事に必要な勉強したり、パソコン開いたりテレビ観たり、本読んだり。

両親がいて、きょうだいもいて、
家族に贈物することもある、休日は家族で食事することもある。
友達もいてメールしたり電話したり、好きなライブではじける夜もある。

ごく普通の生活、ただ恋する相手が同性の時もある。

その恋愛感情は同性と異性では差があるそうです、でも「好き」であることは変わらない。
そしてセックスも遣り方がちょっと違うだけで「大切に触れ合いたい」気持ちは同じです。
ごく普通に社会人で男で人間、それだけです。

ま、ちょっとワガママで拗ねっぽいとこはあるヤツだけど、笑
でも自分としては嫌いになる理由そんなにありません、一緒に飲んで楽しいヤツです。
それは異性愛でフツーに結婚してる友達と変わらない、強姦色情狂とは遠いフツーの男でしかありません。
ごく普通の人間、だけど恋愛対象が同性であることが「少数派」マイノリティにしているわけです。

で、問題なのは「少数派」だからこそ偏見が生まれやすいってことです。

少数派=サンプルが少ない。

サンプルが少ない=1個の情報の影響が大きくなる。

それを例えると:日本人の中に白人系の人が3人いて2人が金髪碧眼+1人が茶髪黒瞳
で生まれる通説:白人は金髪碧眼が多い、茶髪黒瞳は少ない

こんなふうに「少数」であることは短絡的結論を生みやすくて、それが偏見になることも珍しくありません。

男女の恋愛×SMを描いた小説があっても男と女の恋愛=SMにはなりません、
それは「男女の恋愛」が身近に多くあふれている=サンプルが多いから極論に惑わされない、ってワケです。

だから「同性の恋愛」も身近に多くあふれている状況なら、妄想変態小説に惑わされる可能性は低くなります。

でも現実には少数派のマイノリティ、
本人たちも差別偏見はうれしくないから隠していることが多いです、
少数かつ隠していれば「身近な存在」にはなり得ません、そのため偏見を描かれるとそれが通説となりがちです。

こういう現実を彼女は聴かなかったのだろうなって思います、
それだけ彼女は同性愛者の友達から信用されていない、っていうか友達と想われていないんだろうなあと。

・・・・・

私がヤオイを描くのは同性愛者の偏見をなくすためです。

・・・・・

ヤオイ=BLにあたる当時の言葉だそうですが、
こんなふうに言ってしまうアタリ彼女の傲慢、上から目線の偽善が痛々しいなあと、笑
作家な自分は理解者だよ描いてやってるんだ感謝しろ的なことをメール男性も返信されたそうです。

自分も友達のことがあったから同性愛も描いてみたりしていますけど、
しょーじきなとこ「理解者です」とか「賛同します」みたいなコトは想いません、
だってソレえらそーすぎるじゃん、笑

ただソイツはソイツなだけ、そういうソイツと友達でいる、それだけです。

同性愛者だから友達になったわけじゃない、
ソイツっていう人間が面白いから一緒に飲んで、会話して、それが楽しいだけ。
確かにソイツの思考と観点は同性愛であることの影響もあるだろう、でもソレって恋愛経験値なだけだ。

っていう考えな自分としては、描くならマジメに調べて書けよ出来ないなら書くなバーカと思います、笑

ちゃんと調べて書く努力をしない、
そーゆーヤツは大抵ドッカの小説やマンガをテキトーに読んでソレを事実だと信じてる、
でもそれは孫引きってヤツで、孫引きとか絶対やるなよ原典&現場きっちり読めよ行けよというのが常識です。
よーするに「信憑性の確認を自分自身でやってないモンを出すな」ってことです。

だって嘘吐きはドロボウの始まりって言うじゃないですか?笑

孫引き、剽窃、盗作、このへんの事件が最近多いですけど、
Web小説ブログでも同じ傾向がありますが、あたりまえだけど犯罪意識あるのかな?と疑問です。
そーゆーの安易にやっちゃうヤツラは頭がユルイんだろうけど、そいつらと上述の作家サンはある意味で同類だなあと。

現実を認識して分析する、そこから創作物は生まれます。
なぜなら自分たちは現実に生きる住人で、現実に生きる感情だから。

現実リアルにある存在はリアルな言葉で心が動きます、だから「リアリティが感動を生む」なんて常套句もある。
それを忘れて妄想カッテに書き散らすとき、生まれるのは偏見とその被害者たちの傷です。
その傷は現実リアルの痛みです。

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