『ワルチング・マチルダ』考

 

　一昨日、九州の森本くんにロッド・スチュワートが歌うTom Tranbert's blues について尋ねられた。オリジナルは、トム・ウエッツの1976年の曲だが、この曲の大きな要素は、サビにつかわれる曲『ワルチング・マチルダ』の力だろうな。

　『ワルチング・マチルダ』は、百年以上まえにつくられた、古いオーストラリアのヒット曲だ。いまも、オーストラリアではさまざまなイベントで歌われる。元歌のメロディーは、スコットランド民謡のようだ。

 

  オーストラリア人が、第二の国歌というほど愛している曲『ワルチング・マチルダ』、この歌詞の内容がよくわかるアニメーションがある。

　　アニメ　『ワルチング・マチルダ』http://www.youtube.com/watch?v=SANzC9-a5yo

　マチルダは、女性の名前だが、この曲で歌われる物語の場合、毛布（寝袋）につけられた名前なのだ。放浪する男（swagman）が、毛布にマチルダという女性の名をつけて、その毛布にくるまって荒野の夜を過ごす。

 

 

　沼の畔で野宿をしているとき、羊が現れる。ありがたい、神の恵みだ、と、その羊を殺して食べ、残りの肉をバッグに詰める。そこに３人の警官が登場して、羊泥棒め、バッグをみせろ、となる。だが、男はおとなしく警官の命令に従う人間じゃない。「てめいらまぬけな官憲に、やすやすと捕まる俺じゃねえ」と、マチルダ（毛布）を抱いて、沼に飛びこみ自殺する。「俺とマチルダは、永遠にいっしょだ！！」と。

 

 

　だいたい粗々に要約すると、こんな歌なのだ。この権威にたてつく無法者の、反骨のココロ、自由に生きる放浪者の心意気が、なぜかオーストラリア人の共感を呼ぶのだろうな。流刑地だったという歴史、今も世界中から移民が移り住むという国。国民みんな、旅人だったという土地。

　そして、やはりイギリスの外地なのだ。スコットランドからの移民が多い。スコットランド民謡のメロディーに対する郷愁に、心が震えるのだろうか。ロッド・スチュワートは、スコットランドの人だ。

 

 

　オーストラリア人は、妻も恋人もなく、毛布（寝袋）をマチルダと名づけて旅をする、この孤独な男に同情し、強いシンパシーを感じるのだろうか。30年以上一人暮らしをつづけて、放浪してきたわたしも、この曲が愛唱されるわけが何となくわかるような気がする。

 

　女子サッカー日本代表は、『なでしこジャパン』だが、オーストラリアの女子サッカー代表は、『マチルダズ』というのだ。

      アンドレ・リュウ　Waltzing Matilda http://www.youtube.com/watch?v=CXasKlTsjf8

 

　わたしはずっと、曲の内容も気にせず、『ワルチング・マチルダ』を聴いていた。今回九州の森本くんの、Tom Tranbert's blues についての質問で、調べてみて、長い年月愛される曲の背景は、奥深いな、とあらためて思った。

　　シーカーズ　Waltzing Matilda http://www.youtube.com/watch?v=ESebV4H5JuM

　老いた swagman。彼も、最愛のマチルダ（毛布）を背負って、荒野を流離うわけだよ。

 

　老いて、北国・故郷にもどって、90歳の父親の介護に時をつかう。（なんてことだろかいな）、こんな後ろ向きのことじゃなく、わが人生の残りの時間、貧しくても、自由に荒野をさすらいたいものだ、が‥‥‥‥‥‥‥この老 swagman のように。

 

　男、悩んだら、やはり、山に行け、だろ。

 

　　バチュラー・ガール　Waltzing Matilda http://www.youtube.com/watch?v=KH-WzBX_5OI

　　オリビア・ニュートンジョン　Waltzing Matilda http://www.youtube.com/watch?v=PjXiKS4My6A