tokyo_mirage

東京在住・在勤、40代、男。
孤独に慣れ、馴れ、熟れながらも、まあまあ人生を楽しむの記。

採用面接官をして思うこと

2013-04-25 18:51:56 | 雑感
うちの会社は、一定職位以上(おおむね30代以上)の社員は、
すべからく採用一次面接の面接官をすることになっている。

何年か前に初めて面接官を経験した時は、2時間の割り当てを終えると、
その後は本来の仕事が手につかなくなるくらい疲労困憊し、また同時に、
学生たちの「熱さ」と「青臭さ」にいい意味で「当てられた」ものだが、
経験を重ねるにつれ、淡々と臨み、こなせるようになった。良くも悪くも「後を引く」こともなくなった。
それでも、自分の勤める会社に憧れの気持ちを持ってくれる学生がいること、
将来の様々な可能性に溢れた学生たちと接することは、
(こんな言い方をすると、さぞ自分自身の将来の可能性については悲観的であるみたいだが)
いつになってもとてもいい経験になる。
そういう意味で、「全員に面接官をやらせる」、これはなかなか悪くない計らいだ。

今朝の朝日新聞の朝刊で、「シューカツ なんだかおかしいですよね」と題して、
高橋源一郎が朝井リョウの直木賞受賞作を要約してこう書いている。

「シューカツ」の中で、彼らは「仮面」をかぶることを強制される。
会社(社会)にとって有益な何かをできる、積極的にしようとしている「何者」か、という仮面だ。


…まあ、センチメンタルな勘違いだよな、と思う。
「会社員の人生経験を舐めるな」と力むまでもなく、
10分程度の面接でも、「素顔」と「仮面」の区別などすぐについてしまうわけで、
「仮面」で就職活動を乗り切ろうと思っているのは、ずいぶん甘い了見としか言いようがない。
だいたい、人と人とのコミュニケーションに「仮面」など介在せずに済めば、それに越したことはない。
その方がハッピーに決まっている。
そして、会社で仕事をすることも、採用面接も、「コミュニケーション」にほかならないわけで、
「仮面」をかぶった相手を好き好んで選ぶはずがないのだ。
(あるいはまったく逆説的に、こうとも言えるかも知れない。ややこしくなるから深追いはしないけど。
「そもそも何らかの仮面をかぶらない人間関係ってありえるの?」)

僕が面接の中で一番多く発した質問は、「それは具体的に言うとどういうことですか?」だったように思う。

抽象的なフレーズで自己紹介をされても、また、自身の体験を語られても、さっぱり伝わらない。
そんな取り繕った「仮面」じゃ駄目なんだ。
「具体的に話す」ということは、そういう退屈な「仮面」を取っ払い、素顔を晒していくことだ。
その人の素顔が垣間見えるような「具体的な」考え方やエピソードだけに、僕の心は動かされたように思う。

採用面接を乗り切る「テクニック」があるのだとすれば、少なくとも新卒採用に限って言えば、
実は簡単なことで、「具体的に喋ること」に尽きるのではないか。

合格の判断を下す基準って、「この人には興味をおぼえるな…」ってことであって、
それは、人と人とのコミュニケーションであれば、友人関係であっても恋愛関係であっても共通するような、
とてもベーシックなことだと思う(あんまりそこを断じ過ぎると大いに墓穴を掘るが)。
そして、宗教やスピリチュアルだけでつながる人間関係ならばいざ知らず、
人と人との通常のコミュニケーションが、「抽象的な言葉」だけで埋まることなどありえないわけだから。

ともかく、学生には、「就職活動に臨むにあたっては何か特殊な『仮面』が必要だ」、
という間違った気負いには駆られないで欲しいと思う。

ブログランキング・にほんブログ村へ にほんブログ村 ライフスタイルブログへ にほんブログ村 ライフスタイルブログ 一人暮らしへ にほんブログ村 ライフスタイルブログ 30代の生き方へ にほんブログ村 ライフスタイルブログ おひとりさまへ