tokyo_mirage

東京在住・在勤、40代、男。
孤独に慣れ、馴れ、熟れながらも、まあまあ人生を楽しむの記。

素敵な女性が読んでいた本

2017-06-14 23:00:00 | 今日の出来事
移動の東横線。

ドア際に立っていたが、同じドアの反対側に立つ女性が、とても綺麗だった。
目を奪われた。年齢は僕と同じか少し若いくらい。

多分、「美人」というのは正当な評価ではない。
人によっては「とりたてて目に留まらない」と言いそうだし、
「美人」という言葉では、顔の「つくり」しか表現できていなかったり、
加齢とともに崩壊してしまうような表層的な質感しか表現できていない気がするからだ。

その人の佇まいの全体に気品を感じた。
「着こなし」といった外面の取り繕いの話でも、「オーラ」といった雑駁な空気の話でもなく、
もっと内側からじんわり滲み出てくるような「気品」。
めったにある感触ではなく、本当に一目惚れしそうだった。

その人は本を読んでいた。
本にはカバーがかかっていなかった。どんな本を読んでいるのか、タイトルを見たいと思った。
表紙は濃いピンク色で、タイトルは長いのか、たくさんの文字が書かれている。

「水晶」という文字がまず見えた。その後「水晶化する地球人」という文字が見えた。

…むむむ、なんだか怪しい気配になってきた。

その場でスマホで書名を検索してみた。この本だった。
『高次元シリウスが伝えたい 水晶(珪素)化する地球人の秘密』
アマゾンのサイトで内容紹介文に目を通すが、一文たりとも言葉が理解できない。
(そして無論、興味も湧かない)。

この女性に何が起きているのか?…そんな詮索など実に余計なお世話だが、がっかりしてしまった。

混雑が解消される先ほどまで、彼女は僕の後ろにいて、
僕は彼女の読むこの本で、背中を柔らかく小突かれていた。
駅で乗客が入れ替わって体勢が変わり、彼女は僕の正面に来た。彼女は綺麗だった。
読む本のタイトルが見えた。表紙がむき出しになっていたから。
…これもすべて、何かの“神秘”の流れなのだろうか?

しかし、彼女は次の駅であっけなく降りていった。間違いは起きないのだった。