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精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

ふしぎ先生 診療所で森づくり 北相木村-りんねの森だより

2009年12月27日 | Weblog
長野朝日放送から放映された「ふしぎ先生 診療所で森づくり 北相木村-りんねの森だより」をみた。

北相木村診療所の松橋先生は佐久総合病院の研修医のときに診療所医療の研修のあとも、何かと気にかけてくださりお世話になった先生だ。いろんな機会に森や地域医療、地域づくりにかける思いを語ってくださった。
リハビリテーション科で余裕のなくなって死にかけていたとき「患者さんの欝がうつって自分も欝になるんです。」と相談したら、「それならカウンセリングを勉強したらいいよ。」とのアドバイスをいただいた。
そのことが今、私が精神科にいるきっかけの一つになっている。
東洋医学へ関心が向いたのも先生の漢方の勉強会がきっかけだし、NPOなどの活動などに自然に参加するようになったのも先生の影響もあるだろう。



そんな松橋先生がいるのは南佐久郡北相木村。
人口が850人、国道も鉄道も無く、リゾート地もない山村。
人口は減り、高齢化率は41.3%で限界集落になっているところもあるという。

そんな山村にふるさとをつくりたいと思ってやってきたふしぎ先生。
診療所に赴任してからは訪問診療だけではなく、全戸の保健訪問もおこない潜在的な病気を掘り起していった。
診療所は年間のべ約6000人の人が訪れる村の中で一番人の集まる場所。
そして地域のニーズが見える場所。
その場所を医療や保健だけに使っているのはもったいない。
地域医療をやるといっても、地域がないと、そもそも地域医療が成り立たない。
そう考えて5年前に「NPO北相木りんねの森」を立ち上げ、診療の他に地域づくりなどの社会活動も行ってきた。

「まさに医療とはメディア(媒介)である」を体現している。

「NPO法人北相木りんねの森」では託林を事業として行っている。
託林とは「心に残したい願いや思いを植林し木に託す」という松橋先生のつくった言葉だそうだ。
一本の木に思いを託し、荒れた森をもとあった森に近づける形で復活させる。

そんな森の中で昔のことを思い出して語ってもらう「森林回想法」も行っている。
これらはみな森林療法の治療薬。

また森で炭焼きをおこなったり、放置されていた棚田を再生し稲を育てる。
こうした活動を通じて「昔」と「今」をつなぐ。
人々があつまる場をつくる。
これは、まさに湯浅誠らのいう意味での「活動」だろう。

松橋先生は学生時代から自然から力をもらう医学に関心をもち卒後中国に留学して学んだ漢方医でもある。
漢方医学は検査所見に寄り添うのではなく患者さんの自覚症状、患者さん自身に寄り添う医学だ。(これは精神医療もそうだ。)
ナラティブアプローチの重要性が理解されてきたこともあるのだろう。
漢方医学が患者さんに寄り添える医学であることが注目され、主催する漢方勉強会などでもその関心が高まっているのを感じるそうだ。
森林療法にしろ漢方にしろ、患者さん自体が「効いたよ楽になったよ」と直に感じられるものを大事にする点で根源的な医療であり共通するものがあるという。

森を巡る活動に理想はたくさんあるが、現実はそれで食べていけるか?理想をどう現実に結びつけるか?というのが課題であり、なんとかそれで食べていける事業にしていきたいと語っていた。

これらの活動であるが、村の外で何かを勝手に学んできて、それを村の中で実践しているのではなく、村の伝統を受け継いで活動をし、村の中で人と自然が共生することが大事だと強調していた。

「ぼくはたまたま医者だっただけ、ここの住人でこの村が好きだから、未来に向けた何かをしていきたい。」
「森を育てること、森から地域を育てること、森から健康な心身をそだてること。」

こういったことを自然体でつづけられているのがすごいと思った。


参考リンク
 北相木りんねの森

 色平哲郎ー信州の農村医療の現場から

参考エントリー
 ほたか・野の花NPO法人に

 漢方薬、保険はずしのピンチをチャンスに

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