リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

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TPPをめぐる自民党内の動き

2013年02月28日 | Weblog
安倍首相はどうしてもTPP交渉に参加したいようです。

地元からTPP反対を主張して当選した自民党の務台俊介衆議院議員に、党内の雰囲気はどうなのか、反対派としてどのような動きをするのか、市民にできる事はないかをメールで尋ねたところ、さっそく丁寧な御返事をいただきました。

「自民党の中の雰囲気は、反対派もまだまだ多いです。
しかし、安倍総理がオバマと直接会ってあのような共同声明を発出した以上、交渉に入らないという選択肢はあり得ないという認識も広がっています
例外ない関税撤廃を前提としないという選挙公約がクリアーされ、選挙公約に反しないという認識なのだと思われます。
「危機管理」の観点からは、起きた事態に対応できるよう、中身の議論をしっかりと党でチェクしていくということが現実的なのかもしれません。
私はあくまでも反対していきますが、交渉の中身についても重大な関心をもって議論に参加する覚悟もあります。
なお、世論が交渉参加を支持しているというのも総理が前向きになっている理由の一つだと思います。」


あれれ?という感じです。



世論はTPP参加を本当に支持しているのでしょうか?
あのような茶番劇で国民をだましたつもりなのでしょうか?
しかし大手マスメディアが異常なほど同じ論調でTPP交渉参加推進のムードをつくり交渉参加を既成事実化しています。

きっとこれからはマスコミもTPPに関しては黙り込み交渉は目の届かないところで秘密裏にすすむのでしょう。
なし崩し的に民主主義の根幹の破壊へと突き進んでいくことに空恐ろしさを感じます。



国会議員には中央できちんと動いて声をあげてくれることを期待したいのですが・・。
市民は政治が機能するように議員を応援(監視)しましょう。


発達障害者へ支援に関して

2013年02月25日 | Weblog
いわゆる発達障害(発達のかたより、それからなる障害状態)には自閉症スペクトラム、注意欠陥多動性障害、知的障害、学習障害、発達性協調運動障害などさまざまな障害が含まれます。
これらの発達特性は平均的な人からそのような特性を強くもち社会生活にさまざまな支障のでる障害といえる状態の人までの連続体(スペクトラム)を形成しています。
ちなみにここで障害というのは「(特別な)支援が必要な状態」というくらいの意味合いです。
学校教育の場でこれらのスペシャルなニーズをもつ子どもは全体の1割程度であると考えられています。

なぜ、このような障害ができるのかというと子どもごとに感受性(敏感なところと鈍感なところ)や産まれ持っての特性が違うからです。このため同じ経験をしても発達しやすいところと発達しにくいところができてしまいます。
発達しやすいところは才能とよばれ、発達しにくいところは障害とよばれます。
発達がかたよっていても障害状態を呈さなければ単に発達特性に基づく発達凸凹(でこぼこ)です。

自閉症特性が強い人は過敏と過鈍が混在し、対人関係においても暗黙のルールをうまく捉えて一般化して理解することに困難があります。非常に繊細な感覚や感性をもつ一方で、世界は状況の理解しにくい混乱の多いものでパニックを起こしやすいです。その結果、世界の捉え方が独特になったり想像力に困難をかかえたりこだわりにつながったりします。
ストレスがかかり余裕がなくなると昔の辛い体験を何度も思い出すフラッシュバックをおこします。
また敏感さ故に疲れやすいのですが、疲れたことに気付けないなど身体感覚を捉えるのも困難であったりします。
周囲は特に丁寧な関わりをして理解しやすいように環境を構造化し、適切にフィードバックを返してあげないと、本人のスキルはいつまでたっても伸びずパニックを繰り返し、社会の中でうまく振る舞うことができなかったりします。
マイペースで慣れることにも忘れるのも苦手ですが、はまりこむと特定の分野には深く習熟します。支援者にめぐまれ特性にあった職人的な仕事がはまると社会の中で居場所をみつけられます。

またADHD特性の子は、不注意や多動性、衝動性があり、学童期には授業時間に座っていられない、宿題を提出できない、片付けられないなどの習慣が身につかないことが主症状となります。
発達特性に加えて家庭環境などの要因も大きいです。
不幸なことに抑えこむタイプの教育者にあたると失敗を叱られてばかりでスキルも伸びず自尊心も育ちません。
彼らには適切な支援がないと思春期~成人にかけて、挫折を繰り返し「どうせ、おれなんか。」と反抗性挑戦性障害から行為障害(いわゆる非行)、反社会性パーソナリティ障害、依存症などに発展する危険性があります。(いわゆるDBDマーチと呼ばれている現象です。)
本来的に時間の感覚やお金の感覚がリアルにとらえられず、注意の切り替えが困難で、はまりこむと抜けられず、衝動的でスリルを求めるという特性からメインストリームの学校生活などで自尊心を満たされない状態が続くと、非行グループから反社会的組織(マフィア、ヤクザ)に進んだり、覚せい剤やアルコール、ギャンブルなどに依存することになったりしがちです。
ハンター的な特性、行動力や実行力、アイディアなどが活かした仕事につきパートナーにめぐまれれば社会的に大成功する可能性はあるのですが・・。

これらの発達障害をかかえる子は思春期に入り中学くらいになると、周囲から浮き上がり、いじめの対象となりやすく不登校になったりして、さらに学力や、経験、社会性を養う機会を奪われてしまいます。
人間関係で傷つき、失敗を繰り返し、社会に適応できないことに悩み、適応障害をきたし抑うつ状態となったり、ストレスをかかえやすく統合失調症を発症したりしやすかったりします。

しかし適切な環境とフィードバックのもとでは発達障害をもつ人も発達し続けます。
基本的な戦略としては、最低限のスキルを丁寧な関わりで身につけられるように支援することです。高校や大学などでも様々な発達特性に配慮した支援をおこなう学校が増えてきているのは喜ばしいことです。
障害と才能は裏表ともいえます。
職業選択などでは得意なところを活かして、不得意なことは得意な人がカバーし、どこかで何かを生きていけるように道筋をつけてあげることでしょう。
そのためには支援者はいい通訳やガイドになり当事者に寄り添って支え続けることが必要でしょう。

TPP、メディア報道を裏読みせよ!(●`ε´●)

2013年02月25日 | Weblog
TPP問題に関してはマスコミに流されてあきらめてしまってはいけない。

根は深いのだ。
TPP交渉は民主主義的な選挙で問うたり議会で丁寧な議論することもなく企業の論理で秘密裏にすすめられる。
そのルールは貿易、医療や農業、司法、著作権など国民生活全般に多大な影響をあたえる。
こんなルールを丸呑みさせられるTPPの正体を隠したまま「グローバルスタンダード」「バスに乗り遅れるな」「平成の開国」などの掛け声の下、参加が当然というムードをマスコミは演出した。
交渉への参加表明は東日本大震災で延期されたが、その本質が徐々に国民の知るところになった。

そして先の選挙で野田総理は「TPP参加」の立場から選挙戦を戦おうとした。
しかしTPPの本質が日本国民に知れることを恐れた米側は非公式ながら外交ルートを通じ、TPP問題を争点化しないよう日本側に伝えてきたという。

米政権が「TPP争点化」に「NO」!! 首相の衆院選戦略狂う(産経ニュース 2012.11.25)



結局マスコミはそれに従い、一部の者の狙いどおりTPPの焦点はぼやけたまま選挙に突入した。
国民はTPP参加に関する意思表明をどのようにすればよいか戸惑った。
「TPP参加に反対」で当選した自民党議員も多いが、その自民党の安倍総理はTPP参加を推進している。

「ウソつかない、TPP断固反対、自民党」???山形2区自民すずきのりかず氏、TPP絶対反対を訴えて当選!安倍氏も応援に駆けつける。

そして今回の日米首脳会談でも安倍総理は、「交渉に参加するかどうかを判断する」と言っているにすぎないにも関わらず全ての大手紙が「参加表明」という言葉を見出しに掲げて交渉参加決定が規定事実のようなムードをつくるという茶番。
そしてメディアはTPP参加に反対する勢力の中でも農業団体だけをことさら取り上げ「JA全中、参院選へ圧力、首相に反TPP陳情」と強調。
TPPは関税の問題、農業と製造業の対立、「どうせ既得権益だろう」という印象を与えようとしているように見える。
国民の生活全般に関わる21もの分野のルールに関わることなのに。

グローバル資本家にすっかり支配されているこの国のマスコミには呆れる。
これは民主主義の危機である。
国民も、ここまで馬鹿にされてもっと危機感をもたなくては取り返しのつかないことになる。

いまからできる事をしなければならない。
TPPの本質について学び、政治家に応援あるいはプレッシャーのメッセージをおくろう。

木曽まで出張

2013年02月19日 | Weblog
先日、木曽まで出張してきました。
明科駅から電車にのり、松本で乗り換え「特急しなの」に乗りました。
木曽路を走る中央西線は揺れて酔いますが、木曽福島駅は特急が全て停まっていいですね・・。
思ったより早くつきました。
出張に行っている佐久より全然近いですね。

車だと伊那まで高速でいきそこから権兵衛トンネルで木曽へ抜けられるようになりました。
その日は雪のために高速道路は一時閉鎖されていたみたいで電車で行ってよかったですが・・。



一つ目の仕事は自閉症+強迫、パニックと退行あり特定のスタッフを質問攻めにして離さないケースの相談です。
県立木曽病院でパートで外来をやっている先生からの紹介です。

長年一人で木曽の精神医療を支えてこられた金松先生が引退されて常勤医が不在になりました。
木曽の支援者からすると常勤がいないとなかなかできる事も限られているということが悩みのようでした。
県立木曽病院の精神科の外来はトンネルができて、同じく県立病院でもある「こころの医療センター駒ヶ根」からの方が近いようにも思いますが大学病院や村井病院からパートで交代で来ているようです。

訪ねてみると、その施設はわりと騒がしかったり、環境や関わり方の構造化が不十分でありご本人にとってストレスが多くかつて出来ていたこともできなくなってきているようでした。
薬物療法とともに構造化の方法とフィードバックのかけ方など行動療法的な関わり方をスタッフと検討しました。

その後、二つ目の仕事として木曽町役場で行政職員対象にメンタルヘルスの講演会をおこないました。

スライドはこちら

木曽町は木曽福島町、日義村、開田村、三岳村が合併した長野県で一番面積が大きい町だそうです。
合併後の庁舎は工場の居抜き物件でシンプルな建物でした。



質問も多く出て、部下やメンタルの問題で休職した同僚への対応などとっても温かいものを感じました。
一般論として役場の庁舎の豪華さと行政の内容は逆相関することを考えるとよい行政組織なのではないかと思いました。


認知症治療に精神科医は関わるべきではない?

2013年02月09日 | Weblog
高齢者医療に熱心に取り組まれている老健の医師の書いたブログがありました。
EBMを日本に広めたことで名高い名郷直樹先生が最近書かれた認知症治療薬の効果に疑問を呈した総説にたいする意見のようです。

寮隆吉のBLOG よき高齢者医療のために 補遺 認知症治療薬の効果―名郷直樹先生の総説論文

曰く、
『「認知症診断にも、認知症介護にもほとんど関わらない精神科医が、認知症をみると、向精神薬ばかりを投与して、時に廃人のような人間を作り出す。認知症治療に精神科医は関わるべきではない。』
とのご意見のようです。

こういう意見は多いです。
いつの時代も精神医療は悪者です。
たしかにそういう精神科医もいるでしょうがこれまた過度の一般化ですね。

うちの近くの特養化した老健では医療費が包括払いのためもあるのでしょうが、高価な認知症治療薬は収益が下がると嫌われておりバッサリ来られてしまいます。薬も多すぎる、高すぎる、意味がわからないと文句を言われたりします。
もちろん、おちついているのなら、薬を減らしていくのはいいと思いますが、うつの方に出していた抗うつ薬もバサバサ、切られてうつ転して戻ってきたりします。
そして、もとの性格から対応が難しかったりして集団生活に少し適応できない方がいるとなると精神科に丸投げしてきたりするのでなんだかなぁと感じてしまうわけです。

結局、科にかかわらず目の前の人にどこまで覚悟をもって丁寧に関わり続けられるかという事だと思います。

認知症はいろいろなことが出来なくなっていく老化に加えて、アンバランスな解体(老化)が苦しいわけです。
そしてその苦しさを表現する方法をBPSD以外に持っていません。
そのバランスをとるために賦活系の薬も鎮静系の薬お薬も使い、タイミングよく必要な支援をめいいっぱいするわけです。杖や補聴器、老眼鏡と同じ。症状に寄り添う形でいろいろ調整すること自体が治療的です。
緩和ケアのようなイメージ、またBPSDと薬を言葉に会話しているようなイメージもありますね。

さまざまな薬剤や社会資源を活用しながら、付き合いつづけていくことは知的発達障害や、統合失調症や、躁うつ病などの精神病、依存症、パーソナリティ障害の方に鍛えられた精神科は得意だと思います。

認知症が進行すると時間の感覚や昼夜のリズムも失われてきますからディなどの日中の活動の場とともに夜に寄せる形て鎮静がかかる薬も併用してリズムをつけます。

最近の認知症治療薬には自然経過を多少就職するだけの明確な手応えはあります。
認知症治療薬の治験も安曇総合病院でもいくつもやって来ましたが、治験への参加へ基準や結果の判定、交絡因子の除外があまりに大雑把で(診断でくくる限り、このような形しかないのでしょうが)、数百というエントリー数で優位な結果は難しそうに思えます。
降圧薬で血圧を下げたらどうなるか、臓器障害がどうなるかなどのアウトカムとことなり効果はすぐに目に見えますが、精神に対する薬の効果というのは長いスパンでQOLがどうであったかとうことですから一言で語るのは難しい。
複雑系に対する介入で個別性が非常に強く、効きそうな人にだしたら効いたという、漢方薬に近いですね。治験のやり方も工夫の余地たりと思います。
そして最適な量は人によります。量を間違えば逆効果になります。あわないメガネを掛けるようなものですから・・。

だからアリセプトもメマリーも用量用法に適宜増減の言葉が欲しくさじ加減を堂々と許してほしい。
アリセプトも5mgつかうとパーキンソン症状がでて身体が傾いたり(レビー小体型認知症でした。)、メマリーも添付文書の通り5mgずつ1週間毎に20mgまで増やしていくと、10mgを超えたあたりでめまいやフラつき、鎮静がでることをしばしば経験します。
人によって体格も腎機能も、肝機能も、代謝も脳の過敏性もことなるのに診断名だけで用量がひとつに決まるわけがありません。
安くて効果のある抑肝散にも使いやすい錠剤や液剤の剤型が欲しい。多額のコストがかかる治験をやり直さなくても効果の明らかな抑肝散に使いやすい剤型がでればどれだけの人が助かることか・・。
抗精神病薬も生命予後のリスクは下げるという危険性はありますが、で緊急避難として堂々と使えるようにしてほしい。
ある程度進行し混乱期に入った認知症の方に投与していた中核症状の進行を遅らせる薬を中止しても避難しないような雰囲気になってほしい。
医師の勤めは生命予後とQOLの積分値の最大化であり、どんな薬もリスクはあって悩みながら使っているのですから。

もっとも当事者や介護者を一人にせず一緒に悩み考えてくれている人、特に専門職がいるということが一番大切です。
介護者が心穏やかに過ごせると、本人も穏やかに過ごせるようになります。

ただ今使える認知症治療薬を1日最大量使うとアリセプト10mg(636円)、メマリー20mg(427円)、合わせて1000円超えますから、不十分な効果を考えるとこれはちょっと高すぎると思います。QALYや介護負担を計算した研究もあるようではありますが・・。
お互いに穏やかに暮らせるのなら月に約3万円を介護者や介護職が自由に使えるというオプションもあってもいいと思う。(難しそうですが)

認知症に関わること全てに関してどこにお金と時間を使うかというバランスが課題です。
商業化、産業化された医療産業に対し、製薬会社の言いなりにならず、有限な医療福祉資源をトリアージすべき医師が目の前の当事者や介護者の幸福を最大化すべく、どう対峙すべきかとうことが問われているのだとおもいます。