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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「夢幻章伝」28

2015年04月14日 | 物語「夢幻章伝」

案件;マツバは飛び出されていない。

「あぁ、んん~」
「ええっと」

へび呼ロイドとアマキは戸惑いのアイコンタクトをとる。

『へびさん、ほら、なにか言わないと』
『いや、あまちゃん、ここは頼むよ
 ほらデザートあげるから』
『えぇええ、俺?』

との、心の会話が交わされた後。

「でも姉さん、銭湯で一度」
思い切ってアマキがコメントするが、
「あんなのカウントしないわ!!」

ばっさり。

「もうっ、マツバわがまま言わないの、
 あれで我慢しーなーさーい!!」
へび呼ロイドがお母さんの様に言う。
「いやよ!!」

「私は自分がこれだと思う
 幸せの飛び出せ小僧にぶつかったその時しか
 動かないと決めたの!!」

「くっ、マツバ、それなんていう永住宣言!!?」
「うーん、
 俺たち的には移住者歓迎だけど」

やべぇ、これは
たっちゃんにでも小僧のふりをしてもらうしか、
へび呼ロイドが試行錯誤を繰り返しているその時。

「姉さん申し訳ない(本日2回目)」

アマキが突然頭を下げる。

「実は……。
 実は飛び出せ小僧なんて居ないんだ!!」
「なんですって!!」

チィッとマツバが盛大な舌打ちをする。

「え、それじゃあ、
 アヅチがぶつかったという小僧は一体」
「……あいつはただの東一族だよ」
「でも、白髪だったんだよね?」

へび呼ロイドは
飛び出せ小僧に遭遇していない。

「まれにだけど
 そういう風に生まれてくる東一族がいるんだ」


「ブェッックシュゥウウ!!!」
その頃、砂漠では東一族のリクがくしゃみをする。
「うわ、リク様、汚っ」
「うーん、なんだろう、風邪かな?」
ははーん、とヘビのマサキコが言う。
「もしやリク様、噂されているのかもですよ♪」
リクは頭をかいてみせる。その髪は白い。
「えぇえ、ちょっと照れるなぁ」


「白髪の東一族ねぇ」

ふぅん、とマツバはデザートを食べながら相打ちをうつ。
マツバが認める認めないは置いといて、
飛び出せが居ないと分かり完全にやる気無しモードだ。

「まぁ、滅多にいないけど、そういう特例って事」
「逆に白髪の西一族で黒髪が産まれたりってのも
 あるらしいよね」
アマキとへび呼ロイドが雑談を繰り広げるが
マツバはどーんとそれを遮る。
「西一族だの東一族だの
 そんなこたぁどうでもいいわ」

「こっちは、しあわせを求めていたのに、
 どうしてくれんのよ」
マツバイライラ。
「そうだよ、あまちゃん。
 なんで、飛び出せなんて嘘を」
「おおかた髪色の違うやつを隠すためでしょ」

そんな哀しき、東一族であるがゆえの裏事情が。

「いや、あいつは宗主(村長的ポジション)の公認だから、
 決してそんなことはなくて」

ないない、とアマキが言う。

「逆に、公認でのびのびと育てられたせいか、
 少しわがままな所があって」

ちょっと調子に乗りやすく、
人から取り上げた物で水切り。
嫌いな食べ物(ピーマン)は平気で残し、
宿題もやってこない。
お前の物は俺の物。

「それは、うん」
「えぇ」

へび呼ロイドとマツバは顔を見合わせる。

「私も、ピーマンは嫌いよ!!」
「マツバ、ちょっと静かに聞こうか」

マツバは妙な共感を覚えた。

「一族の中でならともかく
 他一族の観光客だろうがお構いなしなんだ」

くっ、とアマキは膝をつく。

「このままじゃ、
 観光客にもマイナスイメージを植え付けてしまう。
 俺は観光客担当として、それが許せなかったっ」

「二時間ドラマの犯人の様に
 尋ねてない所まで、ずいぶん色々と白状するのね」
「マツバ、ちょっと、しっ!!しーっ!!」

マツバは容赦ない。

「なにかいい印象を与えるには、と考えた結果」

アマキの言葉にへび呼ロイドが続く。

「それが、幸せの飛び出せ小僧」

例え、いちゃもんを付けてこようが
それが珍しい幸福な事だとすれば。

「すまない姉さん、ずっと言い出せなくって。
 俺っ、―――!!」
「姉さん!!!」

いつからスタンバっていたのか
番台のタツキも飛び出す。

「この件はこいつだけのせいじゃない。
 むしろ俺も一緒になって考えたことだ!!」

そして、タツキはすっとなにかを差し出す。

「これ、お詫びにもならないけど
 受け取って欲しい」
「タツキ、それは」
「いいって、アマキ、気にするな」

それは、東一族公衆浴場の
年間無料チケット。

「……」

マツバ沈黙。

「分かっていたわ」

きりっとマツバが2人の肩に手を置く。

「しあわせは自分でつかみ取るものだって!!」
「「姉さん!!!」」


なんだこれ。



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