圭が、云う。
「君は、死のうとしてるの?」
杏子は、立ち止まる。
圭が、続ける。
「君が云う・・・光、が、死んでしまったから?」
杏子は答えない。
「なぜ・・・」
そう、圭は問うけれど
なぜ、かは、圭にもわかっていた。
杏子は、たぶん
光のことを・・・
風が吹き、圭の乗る舟が、揺れる。
あたりは静かで、ほかの西一族は、誰も現れない。
「そう」
杏子は振り返らず、云う。
「光に、会いたいから」
死んでしまった光に、会いたいから。
死に場所を探して・・・
「光は、なぜ、死んでしまったの?」
どうすればいいだろう、と
圭の口から出た言葉が、それだった。
杏子は、振り返る。
圭を見る。
東一族特有の、黒い、瞳。
が
圭を見つめる。
圭は、はっ とする。
「・・・ごめん。云いたくなければ、」
「殺されたの」
杏子が答える。
「光は、殺されたの」
ふと、圭は、自分が西一族であることを思い出す。
「西・・・一族に?」
「いいえ」
杏子が云う。
「村の人に」
杏子は、目を伏せる。
「病気だったの」
治らない病。
人から人へと、広がる、病。
圭は、杏子を見る。
あたりが、薄暗くなっている。
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