技術構造分析講座ブログ

東工大の科学史・技術史・科学技術社会論・科学方法論研究室のブログです。公式情報、研究の詳細はホームページをご参照下さい。

今話題のポロニウム (くりはら)

2006-12-13 21:51:51 | Weblog
最近,ロシアの元FSB幹部がポロニウムで殺害されたらしいというニュースがありますが,ポロニウムを兵器として使用するための研究は,第二次世界大戦が終結した直後からありました.

1947年に米国で作成された「放射線兵器の可能性の評価」という報告書に,次のような内容の記述がありました.

「ポロニウムが放射線兵器として実現可能のように見える.検出が困難で,潜行性の汚染で,実際的な汚染除去や防御が不可能で,原子炉内で大量に製造できる.おそらく人口集中地域に対する戦略的攻撃にふさわしい」

ようするに,ポロニウムが放射線兵器にもっともふさわしいということだそうです.この報告書では,最近のニュースのような要人暗殺ではなく,人口集中地域を攻撃するための兵器とされていますが,ポロニウムを兵器として使用する可能性は,60年前から研究されていたようです.

なお,この報告書は,1947年10月14日に米国原子力委員会のリリエンソール委員長から,軍事連絡委員会のブリリートン委員長宛の手紙に添付されたものです.その手紙によると,この報告書は,1947年初頭にオークリッジで行われた研究に基づいているそうです.オークリッジとは,世界最初の原爆を開発したマンハッタン計画の主要な研究所のひとつです.

この文書はインターネット上で読めます.興味のある方は私まで連絡してください.(一緒に調査しませんか? 文書の量が多いので...とても一人ではやりきれません)